院長インタビュー

信頼と人間性の豊かな医療を提供する浦添総合病院

信頼と人間性の豊かな医療を提供する浦添総合病院
福本 泰三 先生

社会医療法人仁愛会浦添総合病院 病院長

福本 泰三 先生

この記事の最終更新は2017年10月20日です。

社会医療法人 仁愛会 浦添総合病院は、沖縄県南部・浦添市に立地する総合病院です。2001年(平成13年)に沖縄県より地域医療支援病院の承認を受け、地域との連携を密に図りながら、沖縄県の高度急性期医療の中枢を担っています。2022年(平成34年)には新病院に移転予定であり、さらなる飛躍が期待される、同院の取り組みと今後の展望について病院長の福本泰三先生にお話を伺いしました。

外観

当院は大きく分けて、救命救急センター、地域医療支援病院、地域災害拠点病院、基幹型臨床研修病院の4つの病院機能を担っています。特に地域医療支援病院については、2001年(平成13年)に民間病院では日本で2番目に承認を受けました。認定当時の外来患者数は1日に1,300~1,400名以上を診察していましたが、地域のクリニックに逆紹介をする形で外来診療を大きく切り離す改革を行いました。その際に、地域と連携を強化するという理事長の信念から、当院の関連外来診療施設を新設するのではなく、地域のそれぞれの開業医の先生方に慢性期・維持期の診療をお任せするという形をとりました。現在は、一日平均350名ほどの外来患者数となっています。

沖縄県は大学医局からの派遣医師は決して多くありません。さらに、約50年前からハワイ大学と提携して医師臨床研修を行うなど、アメリカ式の医師の育成を行ってきたという歴史があります。医局に頼らず医師を育成するという気風は現在も根付いており、当病院には、沖縄県立中部病院で教育を受けた医師が多く働いています。一方で、琉球大学の医局とも積極的に交流しながら連携し、医師の育成や診療のサポートを受けています。

教育回診

また、当院は沖縄県では数少ない集中治療専門医の医育機関に認定されているなど、高度な救急医療の専門性を磨いています。そういったスペシャリストの育成はもちろん力を入れています。しかし同時に、ジェネラルマインドをしっかり持った医師が育ち、活躍してほしいと願っています。私自身、約9年間当院で臨床研修プログラム責任者として、医師の育成に携わってきました。現在も、「群星沖縄プロジェクト」という、医師育成プロジェクトの研修委員長会議議長を務めさせていただいています。沖縄県で長らく続いてきたジェネラルマインドの強い医師育成に共感した医師が少しずつ当院にも集まってきてくれています。

医師の配置については、地域のニーズに柔軟に対応しています。たとえば沖縄県には、沖縄県立中部病院、南部医療センター・こども医療センター、そして当院の3つの救命救急センターがあります。沖縄県立中部病院と南部医療センター・こども医療センターの2つの病院は、周産期母子医療センターとして承認を受けています。このような状況のなかでは、当院がさらに同じ周産期や小児救急の機能を持つ必要はないと考えています。少ない人材をバラバラに配置するよりも、一か所に集まってきちんと役割を果たすことがより重要であると思うためです。そこで当院は産婦人科領域を除く成人の救命救急のほうに力を入れたいと考えているため、そこに集中的に人材を配置し、ニーズに答えていきたいと思っています。

これまでの急性期病院は、急性期のケアのことだけを考えるという面が強かったように思います。しかし、2038年(平成50年)ころには、沖縄県の65歳以上の人口は41万人程度になると推定されています。それにともない、医療や介護を必要とする方も増加することが予想されます。このような社会情勢を踏まえて、今後は当院のような急性期病院も、治療が終わった後、それぞれの患者さんの日常生活や療養生活、社会復帰のところまでを含めたサポートができる存在になっていく必要があると考えています。たとえば、救命救急センターのなかに、在宅医療に携わっている医師を配置したり、介護サービス受給者の急性増悪の病状について24時間相談できる窓口をつくったりといった取り組みができればと思っています。

ドクターカー&ヘリ

救命率の向上及び後遺症の軽減を図るために、2005年(平成17年)に「U-PITS(ユーピッツ/Urasoe-Patient Immediate Transport System)」という当院独自の救急ヘリ搬送システムを創設しました。2008年(平成20年)からは沖縄県のドクターヘリ事業として、運航を開始しています。また、ドクターカーも2012年(平成24年)より導入しています。

当院の2016年(平成28年)の救急搬送件数は5,026件であり、そのうち入院患者数は2,096名、救急車搬送入院率は約40%でした。さらに、その内訳をみてみると、脳卒中による入院患者さんは429名でした。脳卒中は、発症後早期の治療開始が重要であり、救急搬送体制の充実が必要な疾患です。当院では、「タスカル(Task Calc. Stroke)」という脳梗塞急性期治療支援システムを駆使し、病院前治療において発症から「t-PA(血栓溶解薬)」の投薬までの時間をいかに短縮して血管内治療につなげるか、という取り組みをしており、近年学会発表も行っています。

救急搬送されて入院される患者さんのなかで、循環器疾患ではACS(急性冠症候群)の患者さんが多く占めています。循環器系の血管内治療でも超急性期の部分には特に力を入れており、今後も地域のみなさまのために救命率を上げていきたいと考えています。

相談支援 かけはし

当院は、肝臓・すい臓がんの高難易度手術の指定施設となっています。当病院の外科領域のチームワークは非常によく、得意としている分野です。また、乳がんについては地域の開業医の先生方と連携し、オープン型の病床(通院から入院、退院までの一貫した診療を行い、継続的に高度の医療、検査、手術などを受けていただくための専用の病床)を有しています。退院後は引き続きかかりつけ医の先生が患者さんの病状をみることで、安心して最善の治療を受けられます。肺がんに関しても、徐々に手術件数が増えているところです。

新病院では、救急搬送医療圏は約40万人弱が対象になる想定しています。がん患者さんに関しては、もっと医療圏は拡大すると考えており、今後さらに地域の方が安心できるがん診療の体制を確立していきたいと思っています。

日常生活のなかで急に心肺停止状態になった方に対して、「誰しもが正しくAEDを使用できる」、「胸骨圧迫(心臓マッサージ)ができる」といった社会をつくりたい、という目的で発足したプッシュプロジェクトというものがあります。当病院には、そのプッシュプロジェクトの沖縄県の代表者がおり、県内の小学校や中学校などで、生徒や教職員に対して正しいAEDの使い方や、心臓マッサージの方法などを指導する活動をしています。今後、さらに教育の現場とタイアップして取り組めればと考え、教育委員会などにも働きかけていきたいと思っているところです。

医師の働き方改革に関しては、迅速に取り組むべき課題だと思っています。まずは、医師がすべき仕事とそうでない仕事をもっと明確に分け、同時に他職種で医師をサポートできるものとそうでないものとを区別する必要があります。医師だけでは診療は動きませんが、やはり医師はリーダー的役割であり他職種に影響を与えやすく、医師によってチームの流れが変わることがあります。私は、このような状況を変えていきたいと考えています。大切なのは患者さんの流れに合わせることであり、患者さんにとって、もっともよい診療ができているかを常に考える必要があると思います。そういったニーズと上手にマッチさせながら、可能な限り効率化を図っていきたいと考えています。

在院日数についてみると、DPC期間IIを超え入院診療を受ける方が30%弱存在します。その中には重症度が高く当院でケアする必要がある方も相当数いますが、ほかの病院で入院診療が可能な方も多いのが現状です。今後も地域の医療・介護サービス提供施設とうまく連携し、役割分担をしながら患者さんにとってよい流れをつくっていくことで在院日数を短縮できると思います。そうなれば当院は、本来の急性期の仕事に一層、力を入れられます。このように地域病院との役割を明確に分けていくことが、今後はより重要になると考えます。

福本泰三先生

沖縄県において「成人の急性期疾患といえば浦添総合病院」、というように安心して任せていただける病院でありたいと考えています。地域のみなさまのニーズに合った医療のなかで、常に最先端をめざし、さらに、急性期だけにとどまらず、慢性期や維持期といった、患者さんの連続した時間を視野に入れ、できる限りサポートする病院として取り組んでいきたいと考えております。

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  • 社会医療法人仁愛会浦添総合病院 病院長

    福本 泰三 先生

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