市立横手病院は、秋田県横手市における急性期医療を担う病院です。職員が連携して手厚い医療の提供に努めており、横手市のみならず周辺地域からも患者さんが訪れます。また、地域の方々に向けて「出前健康講座」を開催するなど、地域の健康を守るための取り組みも行っています。同院の医療と取り組みについて、院長の丹羽誠先生にお話を伺いました。
当院は1889年に開院し、2019年現在に至るまで、横手市における地域医療に貢献し続けています。130年にわたり、横手市で医療を提供し続けてこられたのは、地域の皆さんに必要とされてきた証だと考えています。また、そのために努力を重ねてきた先輩方が作り上げた歴史なのだと思います。
当院のスタッフは、不安を抱えるひとりの患者さんを診療しているという意識を常に持ち、日々の診療にあたっています。そして、診療科同士の垣根を低くし、医師だけでなく看護師や薬剤師などのスタッフとも活発なコミュニケーションを取ることで、チーム医療を実践しています。
また、定期的にカンファレンスを行い、スタッフ同士が顔を合わせることで、全員が同じ目標に向けて行動していけるよう、協力し合う姿勢を持つことができると実感しています。
当院は2007年に電子カルテを導入しました。紙カルテを電子化し保存・管理するだけでなく、チーム医療を実践していくうえでのコミュニケーションをより円滑にすることにつながりました。看護師・薬剤師・リハビリスタッフ記録のほか、緩和ケア・栄養サポート・褥瘡管理・認知症ケア等各チーム記録の医療情報を集約することで、患者さんの状態や診療の状況を全スタッフが把握することができるようになりました。
各診療科に経験豊かなスタッフがおりますが、当院の特徴は消化器部門が特に充実していることです(常勤消化器内科7名外科4名、日本消化器内視鏡学会指導施設・日本消化器病学会専門医制度認定施設 2019年5月現在)。2010年には消化器センターを開設してさらに施設面での充実を図りました。消化管・肝胆膵疾患の多くの症例について毎週、消化器内科・外科・放射線科合同カンファランスを開催し、さらに患者さんのご希望や状態に合わせて治療を選択できるようにしています。
また、当科では、周辺地域の医療機関と連携しながら診療を行っています。横手市以外の地域からも患者さんをご紹介いただき、県南の消化器疾患の診療に貢献しています。若手医師の育成にも力を入れて取り組み、今後の地域医療の一端を担える人材の輩出に努めています。
当院では、がん診療における緩和ケアの提供に力を入れています。緩和ケアは、患者さんががんと診断されたときから、治癒を目標としているときからも開始するものです。痛みなどの苦痛を取り除くことは言うまでもありませんが、患者さんやご家族の不安を取り除くことも緩和ケアでは大切です。医療の基本とも言えますが、現在はがんに限らず慢性閉塞性肺疾患、心不全など対象を広げています。
緩和ケアはチームで行うもので、多職種で構成される緩和ケアチーム活動を当院では1996年から行ってきました。当初はボランティア活動でしたが、2002年病院組織図に緩和ケアチームを載せました。病院組織の責任を明らかにするためです。2007年がん対策基本法が施行され、がん診療拠点病院で緩和ケアチーム設置が条件とされるかなり以前のことでした。当院には、専従の緩和ケア認定看護師(注)が在籍しており、患者さんやご家族へのケア提供の中心となって活動しています。
注…公益社団法人日本看護協会が認定
当院では、横手市内の各公民館や横手市社会福祉協議会とタイアップし、出前健康講座を開催しています。講演会はさまざまな会場で行っており、健康や病気の治療、予防に関する内容をお話ししています。医師や看護師だけでなく、薬剤師や管理栄養士、リハビリスタッフなど、多くの医療従事者が積極的に講師を務めています。診療の限られた時間では話しきれないことも多いため、当講座は、地域の皆さんに伝えたい病気の治療や予防をお伝えする機会にもなっています。
当院のスタッフは、患者さんのお話にしっかりと耳を傾け、病気や治療方法について詳しく説明することを心がけています。
私が市立横手病院に赴任して間もない頃、とても遠方から来られたある患者さんご家族に「なぜこの病院で治療を受けようと思ったのですか」と尋ねたことがあります。「病気のことをしっかり説明してくれて、安心できるから」とのお答えでした。病気や治療方法について、納得できるまで充分に説明することは、患者さんの不安を取り除くことにつながると実感しています。
医療者は、医療の知識と技術を常に磨き続けなくてはなりません。多くの患者さんを診療し、その患者さんから学び続けてください。患者さんと真摯に向き合い、患者さんの気持ちに寄り添った対応ができる医師を目指してください。決して嘘をつかずに説明責任を果たせるように、同時に『正しい説明という暴力』にならないように、考え続けてください。
また、自分を導いてくれる指導者と出会う努力をしてほしいと思います。どのような医師になるのか、キャリアアップはどのように積んでいくのか、自分ひとりでイメージし決断するのは簡単でないのです。よい指導者と出会い、チャンスをもらうことや、道を示してもらうことは、今後の人生においてとても大事なことだと思います。
苦しい症状があるときは、我慢せず病院にかかり、その症状をお伝えください。医師は患者さんのお話を聞くことから始めます。しかし、限られた診療時間ではそれが十分にできないこともありますし、患者さんもご自身の症状を正確に医師に伝えようとするのは勇気のいることだと思います。
どんな症状があるのか、いつから症状が出ているのかなど、医師に話すことが難しいと思ったら、受診する前にメモなどにまとめてみてください。メモを受付に渡していただければ、医師が事前に内容を確認できるため、スムーズに診療を進めることができます。
私たちは、地域の皆さんの健康を維持し、大切な日常を守っていきたいと考えています。病気を治療し日常に戻れるように支援します。気になる症状があれば、我慢せずに、遠慮なくご相談ください。
市立横手病院 院長、横手市病院事業 管理者 、秋田大学 医学部臨床教授、秋田大学 大学院医学研究科非常勤講師
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。