福岡輝栄会病院は人口が増え続け、福岡市東区に位置する地域の中核病院です。前の年の国民所得倍増計画により、国内の経済成長が一気に加速した時期と同じくして香椎の地で小児科医院としてスタートし、現在は地域の二次救急病院として脳卒中センターや内視鏡手術センターなどを中心とした医療を提供しています。理事長である中村 吉孝 先生に、同院の特色や大切にされていることについてお話を伺いました。
福岡輝栄会病院の所在地、福岡市東区は今でも人口が増え続けている数少ない都市のひとつであり、特に当院が位置する千早はその中でもさらに人口が増加している地域です。この地域では老人人口の増加もありますが、若年人口の増加が著しく、高品質の医療を求められています。
当院は昭和36年(1961年)に中村小児科医院という町のクリニックからスタートし、増棟増床をしながら療養病棟と一般病棟を持ついわゆるケアミックス病院としての体制を経て、地元の九州大学や福岡大学などの大学病院から医師の派遣など協力を仰ぎながら、現在のような一般的な疾患に対応する二次救急病院となりました。平成9年(1997年)には脳卒中センターを開設し、現在は20の診療科と259床を有しています。
また、大きな病院が多い地域である中で、当院は二次救急病院として年間約2,400台の救急車を受け入れ、地域に貢献しています。救急の患者さんの中には疾患の悪化や急な発作が起きやすいご高齢の方も多く、そのような患者さんに対しても迅速かつ適切な医療を提供できる体制を整えています。
急性期の診療が中心である中、生活習慣病への取り組みが必要と考え、2023年に久留米大学医療センターの教授であった田尻祐司先生を糖尿病センター長として迎え、糖尿病センターを立ち上げました。
このセンターでは、糖尿病合併症の重症化予防を目的とし、医師に限らずコメディカルを含めたチーム一同で食事や運動などの療養指導や合併症の評価、治療方針の確立など、一人ひとりの状態に応じたきめ細かい高度な医療を提供しています。また、重症化予防のためには地域のかかりつけ医と当センターを結ぶ循環型糖尿病地域医療連携も必要であり、その仕組みの構築も行っています。
脳卒中は、時間との闘いが求められる緊急性の高い疾患です。当院の脳卒中センターは、日本脳卒中学会認定の一次脳卒中センターとして認定されており、一般的な64列マルチスライスCTから血管造影撮影装置や3T-MRIなど、高精度の検査機器を用いて幅広い疾患に対応し、24時間365日の救急体制でrt-PA静注療法を含む迅速な診療が可能です。さらに、2023年には脳卒中ケアユニット(SCU)も開設し、専門家による高度な集中治療に取り組める体制を整えました。
当院の泌尿器科は常勤の専門医2名による丁寧な診療で多くの患者さんが訪れる人気の診療科です。形成外科においても高い信頼をいただいており、地域の皮膚科や形成外科の先生方からも入院が必要な患者さんをご紹介いただいています。
「せぼね外来」には、久留米大学等で実績を積んだ密川守脊椎外科部長がおり、患者様の体への負担を考慮した低侵襲性の手術法である経皮的バルーン椎体形成術(BKP手術)やヘルニコア注入療法で名を馳せています。そのため、他の医療機関からも多くの患者さんをご紹介いただいています。
現在、多くの医療機関で回復期のリハビリテーション病床が提供されていますが、当院は42床を有し、専従のリハビリテーション専門医を配置している数少ない施設の1つです。このため、専門性の高い医療を提供できると自負しています。また、通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションなども行い、患者さんのご自宅でのリハビリをサポートしています。
今後は、より親切な対応やスムーズな診療を提供し、患者さんのサポートやサービス面においてもクオリティの高い医療機関として、更なる努力を重ねていきたいと考えています。
我々は地域の他の医療機関と連携し、この地域の医療の質の向上に当院ならではの役割を果たしています。初診の方のかぜや腹痛から、地域のかかりつけの先生から紹介いただいた患者さんの治療、さらには急ぎの対応が必要な脳卒中などの救急医療まで、幅広い医療を提供しています。同時に、地区医師会の指導のもと、バックアップ病院として後方支援も行っています。
このためには、まず当院が要となり、地域のクリニックとの関係をしっかりと構築する必要があります。その結果、クリニックでは対応が難しい専門性の高い患者さんを紹介いただいたり、逆に症状の安定した患者さんを紹介してより細かいケアを診ていただけるようお願いするなど、日々の連携がスムーズに行えるようになり、結果として地域の皆さんの安心につながると信じています。
当院では、患者さんに医療をより身近に感じていただけるよう、ウェブサイトやSNSを活用して情報発信に力を入れています。ウェブサイトでは、患者さんに分かりやすい情報を提供しています。SNSでは、特にインスタグラムを活用し、看護師や理学療法士などのスタッフによるトークや脳トレ体操などのショート動画を発信しています。また、LINE公式アカウントから外来診療のお知らせも告知しており、LINEをお使いの方に便利に情報を提供しています。
私たちは、身近で開かれた医療機関として、より信頼されるよう、今後も積極的に情報発信を行ってまいります。
当院は「この病院にかかわる全ての人々が健やかで明るい日々でありますように、輝かしく栄えある人生でありますように」という理念を掲げています。
そのためには、当院がどのような医療を提供しているのかを知っていただいたうえで、患者さんや地域の他の医療機関からの問いかけに応えることができる、双方向のコミュニケーションが可能な病院であるべきだと私は考えています。その一歩としてすでに紹介したSNSを始めとした情報発信や、地域のクリニックの先生方を対象に当院の医療機器をご利用いただける取り組みを始めています。
このような取り組みを通してこの地域の医療の質の向上の一助となり、地域の皆さんに信頼される病院であり続けられるよう、今後も努力していきます。