津島市民病院は、愛知県の西部に位置する海部医療圏で唯一の二次救急病院です。急性期医療を担う病院として、高度な治療や専門的な医療を行うことはもちろん、地域包括ケア病棟や緩和ケア病棟も有しており、地域に求められる医療を適切に提供できるよう努めています。また、愛知県災害拠点指定病院として、災害時にも地域を守るという大切な役割も担っています。同院の特徴やこれからの展望について名誉院長の神谷 里明先生に伺いました。
当院は、1943年に“津島町立病院”として創立しました。その後、市制施行に伴い1947年に現在の名称である“津島市民病院”へ改称しました。以前は結核病棟を有していましたが1985年に廃止され、現在は急性期病棟286床、地域包括ケア病棟48床、緩和ケア病棟18床で運営しています。
当院の位置する海部地区は人口約32万人を擁していますが、三次救急医療、二次救急医療を担う病院は、現在それぞれ1つずつしかありません(2024年2月時点)。そのため、二次救急医療を担う当院の役割は大きいと考えています。
少子高齢化に伴いご高齢の患者さんが増えている今、病院へ通うのも一苦労ということは少なくありません。そのため、この地域で完結できるものはこの地域で完結させることができるよう、ほかの病院とも連携を取りながら地域に必要とされる医療を提供できるよう努めています。
当院は、急性期病院として一般的な病気にきちんと対応できるよう各診療科が努めています。
当院の内科は、消化器、循環器、呼吸器、脳神経、内分泌、腎臓など細分化されており、それぞれ専門の医師がそろっています。
消化器内科では、内視鏡をはじめ各種検査を行える体制を整えており、病気の早期発見に努めています。また、内分泌内科では糖尿病の教育入院や糖尿病教室も実施しており、フットケア外来も行っています。
外科・消化器外科では、低侵襲(体への負担が少ない)な治療を積極的に行っています。特に、大腸がんでは腹腔鏡下手術に力を入れており、乳がんにおいては乳房温存療法も多く行っています。患者さん一人ひとりが納得して治療に臨めるよう、クリニカルパス(治療や検査などの計画表)を導入しており、一緒に治療法を選択していけるよう努めています。将来的には手術支援ロボットの導入も検討しており、より患者さんの体への負担を軽減しながら治療を行えるようになることが期待されます。
当院は診療科間の垣根が低く、顔を見ればどの診療科の先生か分かるような関係を築けています。それは、診療を行ううえでも大きな強みであると考えます。たとえば、複数の病気を抱えた患者さんに診療を行う際も、それぞれの診療科間で相談がしやすい環境であるため、スムーズな診療につながります。
前述のとおり、当院には緩和ケア病棟があります。一般病棟でも緩和ケアを行うことはできますが、やはり環境というのは重要なものだと考え、この緩和ケア病棟が作られました。がんの治療では、体のつらさだけでなく心のつらさなど、さまざまなつらさを伴うことがあります。そうしたつらさに寄り添い、患者さんが自分らしく生きられるよう、医師や看護師をはじめ、さまざまなケアスタッフがチーム体制でサポートしています。
2020年に全ての小学校、2021年には全ての中学校でがん教育が始まりましたが、津島市ではそれに先駆け、2018年より試験的に一部の小・中学校でがん教育を開始しました。当院の医師も講師として参加しており、実際に医師が話をすることで子どもたちは興味を持って聞いてくれているようです。
こうした取り組みにも積極的に参加し、地域の子どもたちやその親御さんたちががんに対する正しい知識を身につけるとともに、命について考えるきっかけにもなればと考えています。
当院は“地域とつながり安心・信頼の医療を提供します”という基本理念を掲げています。以前この理念を見直そうと職員にアンケートを取ったことがありましたが、この理念を大切にしたいと考える職員が多く、継続して掲げています。この理念を1つの方向性として職員一同が同じ方向を向いて進めていけたらと思います。
病院が何のためにあるかというと、やはり患者さんがいるからであり、これからも“地域に必要とされ、なくてはならない病院”であり続けられるよう努めてまいります。
また、近年ACP(Advance Care Planning 人生会議)を広める活動も行っており、地域に住む方々にもぜひ“最後まで自分らしく”生きるために、死に向かうことを含め自分のこれからの生き方について考えてみてほしいと思っています。
津島市民病院 名誉院長
神谷 里明 先生の所属医療機関
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