蒲郡市民病院は愛知県東三河南部に位置し、地域における中核病院として急性期医療を担っています。
同院は、地域の方が住み慣れた地域でどのようなときも過ごすことができる医療の実現を目指しています。2018年4月には、名古屋市立大学病院と連携を結び、医療機関としての機能の充実・強化に取り組んでいます。
連携体制の確立により地域医療の拡充を進める取り組みについて、同院の最高経営責任者である城卓志先生にお話を伺いました。
当院は、蒲郡市および周辺地域を合わせた東三河南部を医療圏とし、地域の中核病院として主に急性期医療を担っています。日本の多くの中核病院が抱える、医師不足や地域医療連携の構築という課題を、当院も抱えていました。
その課題を解決するため、2018年4月に名古屋市立大学医学部に寄附講座(地域医療連携推進学)を開設するとともに、「地域医療教育研究センター」を名古屋市立大学病院内に設置しました。地域医療教育研究センターに所属する職員は当院で勤務し、診療や地域の医療課題の研究や、学生・若手医師に対する教育を積極的に行います。この連携によって、当院に医師が増え、医療機能の充実・強化が可能になりました。
これからも名古屋市立大学病院との連携を活かして、地域の医療課題の解決に力を注いでいきます。
当院は、名古屋市立大学医学部に寄附講座を設置したことを記念して、地域医療について地域の皆さんに広く知っていただく機会を設けるべく、2018年12月にシンポジウムを開催しました。このシンポジウムでは、「超高齢化社会に向けて蒲郡市が取り組めること」について、パネルディスカッションを実施しました。名古屋市立大学病院の教授を中心に、当院に勤務する医師や蒲郡市の地域医療をリードする方々に参加いただきました。
当院は、超高齢化社会に向けて、当院をはじめとする医療機関や介護施設、そして地域の皆さんとともに、課題解決に臨みたいと考えています。
当院は、東三河南部医療圏の医療の中核を担う病院です。そのため、地域の医療機関の医師の皆さんとしっかり連携し、救急医療はもちろん、多岐にわたる診療科をそろえて、地域の皆さんが求める医療を提供する責務があります。
次の項目では、当院がこれからよりいっそう力を入れていく診療科についてお話しします。
出産前後は、妊婦さんの体と心に大きな負担がかかります。当院では、妊婦さんの負担を軽減するため、生まれ育った地域でご家族の協力のもと出産を迎えられるよう、里帰り出産を積極的に受け入れています。また、合併症をお持ちの妊婦さんや緊急手術を要する妊婦さんにも対応しています。
若い世代の方々が安心してこの地域に住むことができるよう、努力を積み重ねてまいります。
当院の外科では、消化器・呼吸器・肛門の3領域を主に取り扱っています。外科的手術をはじめ、早期の消化器がんや自然気胸などに対しては腹腔鏡を用いた患者さんの体への負担が少ない手術にも、積極的に取り組んでいます。
今後は、手術支援ロボットであるダヴィンチの導入を検討しています。ダヴィンチ手術では、3D画像による鮮明な術野の確保と、ロボットアームによる繊細な手技を可能にします。これにより、小さな傷口で精密な手術が可能になり、出血量も少ないため、患者さんの体への負担も少なくなります。
外科では、地域の皆さんが手術後できる限り早期に復帰できるよう技術を磨いてまいります。
2019年1月に、地域の皆さんの健康な目を守るため、アイセンターを開設しました。アイセンターでは、医療機器および人員の拡充をし、当院で可能な眼科治療をさらに充実いたしました。アイセンターでは、網膜剥離や糖尿病性網膜症に対する硝子体手術に注力しています。
網膜剥離は、加齢や衝撃などによって網膜が剥がれてしまう病気です。糖尿病性網膜症は、糖尿病によって網膜の血管が傷み、出血や増殖膜が張る病気です。網膜はものを写す部分であるため、網膜を傷めてしまうことは、視力を失うことにつながります。
アイセンターでは、硝子体手術の提供によって、地域の皆さんが年齢を重ねても、視力を維持するためのサポートをしたいと考えています。
従来の医学部での教育では、知識を備えていることが重視されていたように思います。しかし、医療現場では、知識だけでなく、実践で活かすことができる技術力が求められています。そのため、当院では医学部生および研修医への実践的な教育の充実に力を入れています。
名古屋市立大学医学部の学生に対し、Beyond the Resident Project(以降、BRJ)という活動を実践する場として、当院で当直実習の機会を提供しています。このプロジェクトは、医師として必要な基本的な臨床スキルを学生のうちに身につけ、4年生で研修医レベルにまで達することを目標とした活動です。具体的な内容としては、心電図や胸部X線写真の読影、腹部超音波検査(腹部エコー)、心臓超音波検査(心エコー)、救急医療スキル、および一般診察スキルの6つです。これら6つについて、大学で学んだ知識を実際の現場で活かす経験をすることは、研修医になってから大いに役立つと考えています。
そして、研修医に対する教育の特徴としては、医師としての手技を実践する機会の多さ、中規模病院ならではの指導医との距離の近さ、そして診療科を超えた横断的な研修を実施し、医師としての総合力を高めることを重視している点が挙げられます。
当院では、教育こそが医療のレベルアップになると考えています。実践的な教育をさらに充実させ、医療現場で活躍できる医師を育ててまいります。
当院は、地域の中核病院として、地域の皆さんが住み慣れた地域で医療を受け続けられる医療体制の確立を目指します。そのために、名古屋市立大学病院との連携をさらに強化し、診療科の拡充や医師の教育などさまざまな側面から医療の充実を図ります。
これからも、地域の皆さんから安心感を持っていただける病院であるよう、さらなる努力を積み重ねて地域医療を拡充していきます。