院長インタビュー

尾三地域の医療を守りたい―強い責任感で地域医療に臨むJA尾道総合病院

尾三地域の医療を守りたい―強い責任感で地域医療に臨むJA尾道総合病院
杉田 孝 先生

一ノ瀬病院 副院長、尾道総合病院 元病院長

杉田 孝 先生

この記事の最終更新は2017年09月14日です。

広島県厚生農業協同組合連合会(JA)尾道総合病院は1957年(昭和32年)に広島県尾道市で全国一の設備と機器を誇る医療機関として開設しました。2011年(平成23年)には新病院へ移転し、393床の病床数と29科の診療科で、地域の医療を支えています。

人口減少が続く尾三地域において、同院が担っている役割や、現在の取り組みと今後の課題について、院長である杉田 孝先生にお話を伺いました。

 

 

当院は、広島県厚生農業協同組合連合会が県内で4番目に開設した農協病院です。開院当時から最新設備を備えており、広島県尾三地域二次医療圏(尾道市・三原市・世羅町)の中核病院として医療を提供してきました。

この地域は、年々人口が減少してきており、医師の数も不足傾向にあります。そのなかで地域の医療を守るべく、日々努力を続けています。

 

当院では、2015年(平成27)年に地域救命救急センターを開設しました。これまで、広島市と福山市のあいだに三次救急に対応できる医療機関がなかったため、現在は当院がその役割を担っています。

尾道市内の病院では、医師不足などから夜間救急を一部取りやめる病院もあり、救急車の搬送数は増えてきています。重症な患者さんの受け入れも増えており、当院が地域での救急医療において最後の砦となっています。

 

当院は、広島県内で3か所しかない小児救急医療拠点病院に指定されています。尾道地区では、唯一時間外診療を行っている病院です。

また、広島県地域周産期母子医療センターにも指定されており、母子医療センターでは6床のNICUと10床の新生児回復室を備え、尾三地域を中心とした周産期医療を支えています。

1年間の新生児入院数は、300名以上であり、そのうち、出生体重が1500g未満となる極低出生体重児は12名、人工呼吸管理を行った人数は30名です。8名の小児科医と、新生児集中ケア認定看護師1名を含む28名看護師の体制で、地域の小児医療と周産期医療を守っています。

 

当院は、地域がん診療連携拠点病院に指定された病院です。消化器がん肺がんなど全体的に治療成績はよく、全国的に見てもレベルの高い治療を行っています。

 

消化器内科で行っている膵・胆道領域の治療に関しては、かなり質の高い診療を行っています。

内視鏡センター・IBDセンターを中心に早期診断・早期治療を心がけており、年間の検査数は内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)関連が約650件、超音波内視鏡検査(EUS)関連が約750件です。緊急処置も24時間体制で対応しており、年間約350件を受け入れています。

膵・胆道領域で特徴的なのは、2007年(平成19年)から尾道市医師会と協働で「膵癌早期診断プロジェクト」を展開していることです。このプロジェクトによって、2014年(平成26年)6月までに399名の患者さんの膵がんを確定診断しました。さらにそのなかで、超早期発見となるStage0の患者さんが16名おり、5年生存率の大幅な改善につなげました。

 

当院では、がん患者さんの化学療法・放射線治療も力を入れて行っています。

専門外来のひとつである放射線科では、専門医による放射線治療装置(リニアック)を用いた放射線治療を行っています。腫瘍を縮小させるための治療と、症状を軽減・消失させるための治療です。

化学療法は、通院治療ができる化学療法センターを設けて実施しています。初回の治療は入院いただいて行いますが、副作用などが対処可能であれば、患者さんの希望に合わせて外来治療を行うことが可能です。

化学療法センターのベッドは17床あり、室内はできるだけ患者さんがリラックスできるよう配慮しています。副作用を知るための副作用チェックシートや、患者さんの気持ちを知るためのヘルスダイアリーファイルを導入し、患者さんに寄り添った看護を行っています。そのほかにがん相談室やがん診療支援チームによるサポートも頻繁に行なっています。

 

 

当院には、医師や看護師、薬剤師、栄養士、医療ソーシャルワーカーなど他職種からなる緩和ケアチームがあります。緩和ケアの専門病棟はありませんが、各病室を訪問したり、がん診療支援外来(緩和ケア内科)という専門外来での診療をしたりすることで、患者さんをサポートしています。

 

JA尾道総合病院は、全国に先駆け、尾道市医師会と共同で「尾道方式」による地域包括ケアシステムを実施しています。地域の医療機関や、看護・介護分野と連携を行うため、退院時のカンファレンスにも参加するようにしています。

こういった取り組みもあり、当院の紹介率は75〜80%ほど、逆紹介率は107〜120%ほどとかなり高い数字となっています。今後は、人口減少や高齢化の進行に備え、地域連携をより強化しなければならないと考えています。

 

尾三地域では、年々医師不足が深刻化しています。当院にも精神科の常勤医がおらず、他院からの診療援助をしてもらっています。今後は、大学からの派遣を受けるだけでなく、当院の自助努力で医師を育てることが大きな課題です。

 

当院のミッションは尾三地域の医療を守ること、地域医療を崩壊させないことだと考えています。そのためにも、当院だけでなく、地域の医療機関全体で機能分化を強化することが重要です。

たとえば、自力で受診できるような患者さんは他院での診療をお勧めし、緊急性のある患者さんは率先して当院で受け入れるなど、それぞれの医療機能に合わせた診療を行うことが必要だと考えています。この地域は回復期の患者さんを受け入れる病院も少ない状況です。そういった点も含め、医療機関ごとに機能分化を行い、地域全体で連携して医療を進めていくことが今後は必要であると思います。

 

杉田 孝先生

当院は、393床という規模や尾道の土地柄もあり、診療科の垣根を越えて医師たちの仲がよいのが特徴です。また、当院は医師の教育に力を入れており、地域の医学部や看護学校からも多くの学生が実習に来ます。三次救急を行っていますから、救急医療における教育体制もしっかり整っています。ぜひ、若い先生方に来ていただきたいと思っています。

当院は、尾三地域で中核を担う病院です。その責任を持って、地域のみなさんに安心安全な医療を提供していきます。

スタッフ一同、優しく笑顔で患者さんに接することを心がけています。この病院にお越しいただいたみなさまに、落ち着いて過ごしてもらえる環境づくりに日々努力してまいります。

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  • 一ノ瀬病院 副院長、尾道総合病院 元病院長

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