院長インタビュー

地域住民の健康維持と回復をサポートする湘南東部総合病院

地域住民の健康維持と回復をサポートする湘南東部総合病院
大川 伸一 先生

湘南東部総合病院 病院長

大川 伸一 先生

目次
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茅ヶ崎市北部に位置する湘南東部総合病院は2000年4月の開設以来、地域の中核的な病院として包括的な医療を提供してきました。“断らない救急”を掲げて24時間365日脳卒中患者に対応し、治療後のリハビリテーションにも力を入れる同院の役割や今後について、病院長である大川 伸一(おおかわ しんいち)先生に伺いました。

先方提供
湘南東部総合病院外観(提供:湘南東部総合病院)

当院は2000年4月に病床数237床の総合病院として誕生し、今日まで20年以上にわたってこの地域の医療に携わってまいりました。この間には新たな診療科が開設され、新たな医療機器が導入されるなど、診療体制の整備・充実が図られてきました。二次救急医療機関として地域の皆さまの命を守ることはもちろん、一次脳卒中センターコア施設として24時間365日、脳血管内治療を行える体制が整っていることも特徴です。

当院は茅ヶ崎市北部にあり、来院患者さんは茅ヶ崎市にお住まいの方のほか、お隣の寒川町から足を運んでくださる方も少なくありません。病院周辺には田んぼや畑などのどかな風景が広がる一方、寒川町のほうは工場などが多いエリアになりますが、どちらも着実に高齢化が進んでいます。当院の患者さんもご高齢の方が中心ですが、この地域で生まれ育った患者さんが住み慣れた場所で長く暮らして行かれるように、健康維持・増進に加え、病気やけがからの回復をしっかりとサポートしていきたいと考えています。

当院では救急医療に力を入れ、月間300件を目標に救急車の受け入れを行っています。地域の特性上、救急患者さんもご高齢の方が多いため、意識障害がみられる場合はまず脳のMRI検査を実施し、異常が認められない場合は内科で対応するなどの対応を取っています。内科、外科、産婦人科、脳神経外科を柱に、たとえ夜間であっても適切な救急対応を行える点が強みです。

また当院は、茅ヶ崎・藤沢・平塚地区における唯一の一次脳卒中センターコア施設(PSCコア)でもあります。PSCコアとは文字どおり、地域における脳卒中医療のコア(核)となる医療機関を指し、当院においても他の医療機関で対応が難しい脳卒中患者さんを積極的に受け入れています。この地域における“急性期脳卒中医療の最後の砦”としての役割を果たすべく、脳卒中に対する血管内治療を24時間365日行うのはもちろんのこと、医療や介護のご相談に対応する“脳卒中相談窓口”を設置するなど包括的な脳卒中医療をご提供しています。

救急医療と並ぶもう1つの特徴が、各分野の専門職が連携して行うリハビリテーションです。日本リハビリテーション医学会認定専門医の医師を筆頭に、立つ・歩くなどの基本的動作能力の回復をサポートする理学療法士、一人ひとりの患者さんがその方らしい生活を送れるよう支援する作業療法士、言葉(言語)に障害のある患者さんのコミュニケーション能力やものを飲み込む力(嚥下(えんげ))の機能回復を担う言語聴覚士などが100人以上在籍し、さまざまな種類のリハビリを実施しています。

高齢患者さんは筋肉が落ちやすいため、入院中からリハビリメニューを取り入れて早期回復を目指しており、病気やけがの治療によって低下した機能の回復をサポートする“回復期リハビリテーション病棟”を備えていることも特徴です。もちろん外来でのリハビリにも対応しており、患者さんには本館1階にある開放的な訓練室でリハビリに取り組んでいただけるほか、通院が難しい場合は訪問リハビリにて対応することも可能です。また2016年には関東地区で初めてNASVA委託病床を開設し、自動車事故における脳損傷により重度後遺障害を負った患者さんのサポートも行っています。

当院では2018年に手術支援ロボット・da Vinci(ダ・ヴィンチ)を導入し、体への負担が少ない低侵襲手術(ていしんしゅうしゅじゅつ)を行っています。ダ・ヴィンチを用いた手術は、これまでのようにお腹を大きく切開する必要がなく術後の回復が早いことが特徴です。前立腺がん手術については、日本泌尿器科学会指導医・専門医であり、ロボット手術認定医*腹腔鏡技能認定(ふくくうきょうぎのうにんてい)**の資格を持つ医師が担当し、大腸がん手術は日本消化器外科学会認定の消化器外科専門医であり内視鏡外科学会 技術認定者が担当します。

日本人の高齢化に伴い、前立腺がんや大腸がんの患者さんは今後も増加していくことが予想されます。私は当院に着任する前、旭区の神奈川県立がんセンターで仕事をしていましたが、このエリアにお住まいの高齢患者さんががんセンターを受診するのはご負担の大きいことでしょう。私たちのような地域の病院で治療を完結できれば、地域の皆さまの安心につながると思いますので、さらに医療提供体制を充実させ、さまざまな選択肢をご提案できるようにしたいと思っています。

*ロボット手術認定医……日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会認定の泌尿器ロボット支援手術プロクター認定取得者を指す。

**腹腔鏡技能認定……日本泌尿器内視鏡学会 腹腔鏡技術認定医および日本内視鏡外科学会技術認定医(泌尿器腹腔鏡)を指す。

当院の母体である“ふれあいグループ”は、神奈川県、静岡県、東京都に合計17の医療機関を展開しており、この中で当院は急性期医療を担っています。グループ内では年に一度、医療教育研究会を実施しており、医師や看護師といった職種ごとに集まって情報交換や事例発表などを行っています。

たとえば医師の集まりでは最先端の医療に関する発表があったり、チーム医療の取り組みとしてどんなことを行ったかを共有したりといった感じです。同じグループとはいえ、普段はほかの病院のスタッフとほとんど交流する機会がないため、新しいアイデアをもらったり、どんなふうに業務をしているのかを理解できたりする貴重な時間になっています。こうした場で得られた新たな気付きを病院運営にも反映し、今後の医療サービス向上に役立てたいと考えています。

私はコロナ禍の2020年に院長に就任しましたが、実際に地域医療に携わるようになって初めて、日本が直面する高齢化をリアルに感じるようになりました。以前は“がん患者さんはがんセンターが担当するもの”と思っていましたが、高齢患者さんのことを思えば、地域の中の身近な場所で幅広く・質の高い医療を受けられることが一番だと考えるようになりました。また地域にお住まいの方が病気になったり、けがをしたりしないように、健康維持・増進をサポートすることも私たちの大事な役割の1つです。敷地内の西館にはプールやフィットネスジムを備えておりますので、ぜひ自分に合った運動習慣を身につけ、筋力維持に努めていただきたいと思います。

私はこれまで長くがん診療に携わってまいりましたので、今後はがん検診の普及にもいっそう力を入れたいと考えています。どんながんも、早期に見つかって適切な治療を行うことができれば良好な経過をたどり、身体的・金銭的な負担も軽減されることが少なくありません。ぜひ定期的ながん検診を心がけ、亡くなる直前まで国民のために働いた“徳川家康”の生き方をお手本にして健康長寿を全うしていただきたいと思います。心と体が元気なうちから、ご自分がどのような形で最期を迎えたいかを考えておき、一日一日を大切にお過ごしいただければと思います。

病床数、専門医の在籍状況、診療内容等についての情報は全て2024年2月時点のものです。

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