連載院長に聞く 病院の「今」

診断がつかない胸の痛み、実は隠れ狭心症 “INOCA”かもしれない

公開日

2024年05月16日

更新日

2024年05月16日

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2024年05月16日

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運動した後や就寝時の朝方に、突然胸に痛みを感じたり締めつけられるような圧迫感を覚える病気、狭心症。心臓に血液を送る血管である冠動脈が狭くなり、血流が少なくなることで発症します。

しかし近年、狭心症の症状があるものの狭心症という診断がつかない、という方が多くいることが分かってきました。この「隠れ狭心症」の危険性や見分け方、治療法について、隠れ狭心症專門の外来を開設し多くの患者の診察に携わっている小山豊先生(東京蒲田病院 院長)に聞きました。

小山豊院長
小山豊院長

原因と危険性

当院には週に数人のペースで「胸の痛みがあるが、ほかの病院で診断がつかなかった」という方がいらっしゃいます。診させていただくと典型的な狭心症の症状を訴えるのですが、冠動脈に狭窄がないため狭心症という診断がつかず、具体的な治療を行っていないという方が大半です。しかしこれらの方は、実際には狭心症の一種である「INOCA」であることが多く、薬による治療が可能です。

実は、狭心症の中には目で診てわかるような冠動脈の狭窄がないもの、実際には狭心症である「INOCA」(冠動脈の狭窄を伴わない心筋虚血)の患者さんが多いことが分かってきました。実際、日本循環器学会の推計によれば、潜在的なINOCAの患者さんは年間15万人いるとされています。

しかし、INOCAは2023年に出たガイドラインで診断と治療の方法が示されているものの、新しい疾患概念であるため診断が難しい面があり、診察時に見過ごされることがあります。その場合は有効な治療が行われないため、患者さんは胸の痛みを我慢し続けるばかりか、心筋梗塞などのより重大な病気に発展してしまう場合もあるなど予後もやや悪くなってしまいます。

実際の検査、診断の流れ

INOCAの診断は、さまざまな検査を通じて肺がんや縦隔腫瘍といった胸部の病気の可能性を排除し、冠動脈のカテーテル検査を経たのち最終的には冠動脈血管の血流に障害が起きているかを特別な機器で測定することで確定します。当院では来院されたその日に血液検査等を行い、後日1泊2日のカテーテル検査入院でより詳細な精査を行っています。カテーテル検査は低侵襲(体への負担が少ない)なものになっており、体に大きな傷をつけるようなことはありません。

INOCAの治療では薬物治療が中心となります。そもそもINOCAの原因である冠攣縮(冠動脈が痙攣を起こし狭くなること)や末梢血管の障害には、動脈硬化を招くような生活習慣、女性では閉経、ほかに家族歴などが関係しています。このうちの動脈硬化は薬で進行を抑えることが可能であり、患者さん一人ひとりに合わせて血管拡張薬や医療用EPA製剤、漢方薬を処方します。

なお、これらの検査、治療は健康保険の範囲内で受けることができます。

胸の痛みを我慢している方へ

INOCAは理解している医師が診れば見逃すことなく診断でき、治療の道筋も明確です。しかし、INOCAを有しているのに自覚できておらず、胸の痛みを放置されている方が多いのではないかと思っています。

実際、当院のINOCA外来に胸の痛みを訴えていらっしゃる患者さんのほとんどは、冠動脈が見た目には良好な状態にある方です。ですが、詳しく検査を行うとINOCAだという方は8割以上に上ります。

性別や年齢に関係なく、普段から胸の痛みに悩んでおり、診察を受けても診断がつかなかったり神経症のお薬を処方されている方は、ぜひもう一度かかりつけ医に相談してみてください。それでも不安のある方は、INOCAに詳しい病院を受診してもいいでしょう。

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

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