乳房のしこり:医師が考える原因と対処法|症状辞典

乳房のしこり

メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】

乳房には、乳汁を生成する乳腺や脂肪組織が多く含まれています。乳房は授乳のために必要な器官ですが、乳がんなど乳房に発生する特有の病気もあります。

  • 入浴時や着替え時に乳房を触ったら、しこりが触れた
  • 痛みを伴うしこりがある
  • 乳房以外にも脇などにしこりがある

このような症状の原因には、どのようなものがあるのでしょうか。乳房にしこりを形成する病気や病院受診の目安、日常生活の注意点を詳しく解説します。

乳房のしこりを形成する病気の中で、乳腺炎は日常生活上の習慣や授乳のトラブルが関与していることがあります。乳腺炎を引き起こしやすい日常生活上の原因と対処法は、以下の通りです。

授乳期には乳腺で多くの乳汁がつくられています。乳汁は、赤ちゃんに吸啜(きゅうてつ)(赤ちゃんが母乳を吸うこと)されることによって乳頭から放出されます。赤ちゃんの飲む量よりも乳汁がつくられるほうが多い場合は、乳腺内に乳汁が溜まった状態となり、乳腺炎の原因になることがあります。

乳汁が過剰に分泌するときには

乳汁が赤ちゃんの飲む量より多く分泌され、授乳後も乳房の張りやしこりがある場合は、乳房マッサージを行って乳汁の排出を促すようにしましょう。

また、授乳間隔は短めにし、より多くの乳汁を吸啜してもらうのもよいでしょう。

乳頭部は、乳腺からつながっている乳管が開口しています。乳頭部は下着や衣類などで蒸れやすく皮脂の分泌も多いため、細菌が繁殖しやすい部位です。

これらの細菌が乳管を通して乳房内に感染すると、化乳腺炎を発症するきっかけになります。

乳頭の汚れが気になるときには

乳頭部は清潔に保つよう心がけましょう。授乳中は特に、乳汁の残りかすが残ったままの状態だと細菌増殖を引き起こすことがあるため、授乳したあとは、しっかりと()き取ることが大切です。

日常生活の習慣を改善してもしこりがなくならない場合は、予期せぬ病気が隠れている可能性もあります。見過ごさずに、早めに病院を受診するようにしましょう。

乳房の病気はしこりを形成するものが多いですが、炎症による病気と腫瘍性の病気があります。それぞれの主な病気には以下のようなものが挙げられます。

乳房内の乳腺が炎症を起こす病気には以下のものがあります。

乳腺炎

乳腺に炎症が生じる病気です。多くは、授乳期に乳汁が乳腺内にうっ滞(血流の流れが悪くなり、とどこおってしまうこと)することが原因で発症します。乳頭から細菌が侵入して乳腺に感染し、化乳腺炎に進行することもあります。

乳腺炎では、うっ滞した乳汁が硬いしこりとして触れることがあり、乳房の痛みや腫れ、発赤、発熱などの症状を伴います。また、乳房の炎症が慢性化すると乳房内や乳輪下に瘍を形成することがあります。

乳腺炎
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乳房は腫瘍性の病気が発生することがある部位です。これらの病気は悪性・良性があり、それぞれの症状や予後(今後の病気の見通し)は大きく異なります。

乳房にしこりを形成する腫瘍性の病気には、以下のようなものがあります。

乳腺症

良性腫瘍のひとつで、乳房にできる腫瘍性の病気です。乳腺の増殖・萎縮をきたす病気で、エストロゲンの過剰分泌が原因と考えられています。30歳代から閉経前後の女性に多く発症し、両側の乳房に痛みを伴うしこりを生じます。

乳腺症
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乳がん

乳がんは、女性に発症するがんの中でもっとも多いがんです。乳がんでは、凹凸(おうとつ)があるしこりを形成します。しこりは周辺組織に癒着するため可動性がなく、痛みを伴わないのが特徴です。

また、腋窩(えきか)リンパ節に転移し、脇のしこりがみられることがあります。進行すると、がんが皮膚に浸潤して潰瘍を形成したり、乳頭から血性の分泌液が漏れ出したりすることもあります。

乳がん
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線維腺腫

20~30歳代の女性に起きやすい乳房良性腫瘍のひとつです。乳腺が過形成することでしこりを形成します。しこりは痛みを伴うことは少なく、表面が滑らかで可動性があるのが特徴です。

乳房には厚い脂肪組織があるため、しこりが形成されたとしても、ある程度大きくなるまで気づかれないこともあります。また、授乳中や生理前などは乳腺が発達したり、乳汁が溜まったりすることで、病気でなくてもしこりを形成することがあります。このため、乳房のしこりは見過ごされがちな症状ですが、治療が必要な病気が潜んでいることもありえます。

授乳中や生理前ではないときはもちろんのこと、授乳中や生理前であっても、乳房にしこりがある場合は何らかの病気の可能性があるため、病院を受診するとよいでしょう。

受診する診療科は乳腺外科がよいですが、授乳中など乳房トラブルが原因と考えられる場合には、産婦人科や母乳外来のある病院でもよいでしょう。

受診の際には、しこりに気づいた時期、しこりの痛み・発赤などの有無、ほかに気になる症状や生理周期、乳がんの家族歴、授乳の状況などについて医師に明確に伝えるようにしましょう。

受診の目安

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 以前はなかったしこりを発見した
原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。