乳房が痛い:医師が考える原因と対処法|症状辞典

乳房が痛い

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 発熱がある

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 乳房にしこりがある
  • 赤く腫れる、熱を持っているなどの症状がある

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 生理前に起こり、生理が始まるとよくなっていく
  • 短時間でよくなり、その後繰り返さない

メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】

乳房は乳汁を分泌する乳腺や脂肪組織によって膨らみを形成します。乳腺は女性ホルモンの作用によって発達するため、女性ホルモンの分泌量が増える生理前や授乳期などには乳房の張りや痛みが生じることがあります。

乳房の張りや痛みはこのような生理的現象のこともありますが、何らかの病気が原因となっていることもあります。

  • 生理前など、定期的に乳房が痛くなる
  • 乳房の痛み以外に、しこりや乳頭からの血性分泌液がある
  • 体を動かすと乳房に痛みが生じる

このような症状がみられた場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。乳房の痛みを引き起こす病気や病院受診の目安、日常生活の注意点を詳しく解説します。

乳房の痛みは、乳房自体に原因がある場合と、肋骨・肺・心臓など乳房の近くにある器官に原因がある場合があります。

それぞれの原因となる病気には、以下のようなものが挙げられます。

乳房には乳汁を分泌する乳腺という組織が多く含まれています。乳腺は、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が増えることで発達します。乳腺は授乳のためになくてはならない組織ですが、乳がんをはじめ、さまざまな病気を引き起こす可能性があります。

痛みを生じる乳房の病気には以下のようなものがあります。

乳腺炎

乳腺に炎症が生じる病気です。授乳期に乳汁が乳腺内にうっ滞(血流の流れが悪くなり、とどこおってしまうこと)することが原因で発症することが多く、乳房の痛みや腫れ、発赤などを生じます。

また、乳頭から細菌が侵入して乳腺内に感染すると、悪化して高熱や悪寒、倦怠感などの全身症状を伴うことがあります。

乳腺炎
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乳腺症

エストロゲンの過剰分泌によって、乳腺組織が増殖したり萎縮したりする病気です。30歳代から閉経前の女性に多くみられ、両側の乳房にしこりやのう胞を形成します。しこりやのう胞は痛みを伴い、乳房の張りや乳汁様の異常分泌物がみられることもあります。痛みは乳腺が発達しやすい生理前に強くなり、生理後は軽快するのが特徴です。

乳腺症
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乳がん

乳がんの多くは乳腺内に発生します。主な症状は乳房のしこりで、進行すると腋窩(えきか)リンパ節に転移して脇のしこりを触れたり、乳頭から血性の分泌物が見られるようになります。一般的に、乳がんで痛みを伴うことはまれですが、がんが進行して真皮や皮膚に浸潤すると皮膚に炎症が生じて痛みを伴うことがあります。

乳がん
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女性化乳房

女性ホルモンの分泌量が増えることで、男性の乳房が発達する病気です。原因はさまざまで、女性ホルモンをつくる精巣腫瘍脳腫瘍、肝障害による女性ホルモンの代謝異常、薬の副作用などが挙げられます。

女性化乳房では、乳腺の発達や、それに伴って皮膚が引き伸ばされることで痛みを生じることがあります。

精巣腫瘍
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脳腫瘍
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乳房の近くには肋骨(ろっこつ)や肺、心臓など多くの器官が存在しますが、これらの器官の病気による痛みが乳房の痛みとして感じられることもあります。

乳房の痛みを引き起こす病気には以下のようなものがあります。

肋骨や肋軟骨の損傷

肋骨骨折肋軟骨炎(ろくなんこつえん)など、肋骨や肋軟骨の損傷による痛みが乳房に放散し、乳房の痛みとして自覚されることがあります。これらの損傷による痛みは体を動かすと強くなり、痛みが限られているのが特徴です。

心筋梗塞、狭心症

冠動脈の一部が閉塞・狭窄することによって生じる心筋梗塞狭心症は、前胸部に強い痛みを引き起こします。痛みは前胸部だけでなく、肩は顎、腹部にまで放散することが多く、乳房の痛みと感じられることもあります。

突然痛みが生じ、ほかの部位の痛みや呼吸困難、冷や汗などを伴う場合は、これらの心疾患の可能性もあるため注意が必要なことがあります。

心筋梗塞
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狭心症
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気管支炎、肺炎

気管支炎肺炎は悪化すると痛みを生じることがあり、その痛みが乳房の痛みとして自覚されることがあります。気管支や肺炎の痛みは、空気を吸い込むことで強まるのが特徴で、一般的には咳や(たん)、発熱などの症状がみられます。

気管支炎
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肺炎
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乳房の痛みは、生理前や授乳期には健康な人でも生じるものです。

乳房の痛みが長く続く場合、痛み以外にもしこりや血性分泌物などの症状がある場合、発熱や呼吸症状などがある場合、転倒などによって痛みが生じた場合には、それぞれに適した診療科を受診しましょう。

乳房に痛み以外の症状がある場合は乳腺外科、外傷によるものは整形外科、呼吸器症状や発熱などがある場合は内科を受診するとよいでしょう。また、授乳中の場合は産婦人科で治療を受けることもよいでしょう。

受診の際は、痛みが生じた時期やきっかけ、痛み以外の症状などについて明確に医師に伝えるようにしましょう。

乳房の痛みは、日常生活上の誤った習慣によって引き起こされていることがあります。主な原因と対処法は以下の通りです。

小さなサイズの下着を身に着けていると、乳房が圧迫されて痛みを生じることがあります。また、サイズの合った下着を身に着けないことで乳房が垂れ下がり、皮膚や乳腺が引きつって痛みを生じることもあります。

適したサイズの下着を身に着けましょう

乳房のサイズはエストロゲンの分泌量によって変化します。一般的には、生理前は乳腺が発達するため、乳房のサイズも大きくなります。普段からサイズが合った下着を身に着けるのはもちろんのこと、生理前に乳房が大きくなりやすい人は、そのときに合った下着を身に着けるようにしましょう。

乳房のサイズはエストロゲンの分泌によって変化しやすいため、皮膚が乾燥した状態なると、乳腺が発達して皮膚が引き伸ばされたときにヒリヒリとした痛みを生じることがあります。

乳房が乾燥しているときは

入浴後などは皮膚が乾燥しやすいため、保湿効果のあるクリームやオイルを使用してこまめにケアするようにしましょう。

日常生活上の習慣をあらためても乳房の痛みが改善しない場合は、何らかの病気が潜んでいることがあります。早めに症状に適した診療科を受診するようにしましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。