乳首の黒ずみ:医師が考える原因と対処法|症状辞典

乳首の黒ずみ

メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】

乳首は乳房の中心部に位置する突起であり、女性では乳汁の分泌口となる非常に重要な器官です。乳首の形や大きさ、色調には個人差があり、特に「乳首の黒ずみ」は男女問わず大きな悩みの種となる皮膚トラブルのひとつです。

  • 下着の摩擦や刺激などによって乳首が炎症を起こしやすく、徐々に黒くなってきた
  • 妊娠を機に乳首や乳輪が黒くなった
  • 乳首にほくろのようなものができて、大きくなっている

これらの症状が見られた場合、原因としてどのようなものが考えられるでしょうか。

乳首の黒ずみは以下のような日常生活上の好ましくない習慣が原因になっていることがあります。原因となる主な習慣とそれぞれの対処法は以下の通りです。

乳首は下着や衣類などが密着しやすい部位であるため摩擦が生じやすく、慢性的な刺激によって色素沈着を引き起こすことがあります。

乳首に刺激を与えないためには

綿やシルクなど軟らかく肌になじみやすい下着や衣類を着用することが大切です。また、固い繊維の衣類を着る際には、シャツを着用すると乳首への刺激を最小限に抑えることが可能です。女性の場合はサイズの合ったブラジャーを着用するようにしましょう。

乳首の黒ずみが気になるあまり、過剰な洗浄を続けることでメラノサイトが刺激され、さらに色素沈着が進行することがあります。

乳首を洗うときには

乳首は、よく泡立てたボディーソープなどを手に取って優しく撫でるように洗いましょう。色素沈着を防ぐには、なるべく刺激を加えないことが大切です。ナイロン製のタオルなどで強く擦るのは逆効果ですので控えましょう。

洗濯用洗剤やボディーソープなどにはさまざまな成分が含まれており、人によってはかぶれを引き起こすものもあります。肌質に合わないものを長く使用すると色素沈着の原因となることがあります。

肌質に合った洗剤を使用するには

新しい洗剤などを使用した際には、肌のかゆみや発赤などが生じないことを確認し、刺激を感じるような場合には使用を中止しましょう。

日常生活上の対処法を講じても乳首の黒ずみがよくならない場合は、思わぬ病気が原因のことがあります。それぞれの症状に合わせた診療科を早めに受診するようにしましょう。

乳首の色には個人差があり、一般的な色調よりも黒いことに悩んでいる人は多いでしょう。しかし、乳首の黒ずみは単なる個人差ではなく、以下のような病気が原因で引き起こされていることもあるので注意が必要です。

乳首の黒ずみは、以下のような乳首に生じる病気によって引き起こされることがあります。

接触性皮膚炎

特定の物質に触れることで皮膚に炎症が引き起こされる病気で、一般的には「かぶれ」と呼ばれるものです。乳首には下着や衣類が密着しやすいため、化学繊維や洗濯に使用した洗剤などの成分によって乳首に炎症が生じ、発赤やかゆみ、ただれなどの症状を引き起こすことがあります。このような症状を繰り返すことで、乳首のメラノサイトが活性化され、メラニンの産生量が増えることで黒ずみにつながることがあります。

アトピー性皮膚炎

慢性的に皮膚に炎症が生じる病気で、アレルギー体質の人や皮膚のバリア機能が低下している人に多く発症します。小児期に発症することが多く、成長と共に自然とよくなることがほとんどですが、成人になっても症状が続くこともあります。乳首にも慢性的な炎症が生じることで、徐々に皮膚が厚く硬くなり、黒ずみの原因となることがあります。

アトピー性皮膚炎
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皮膚がん

皮膚に発生するがんの総称ですが、乳首に悪性黒色腫や有棘細胞癌などの皮膚がんを発症すると黒ずみの原因となることがあります。特に、悪性黒色腫では、ほくろのような黒いシミが形成され、徐々に広がっていき、潰瘍やびらん、出血などを伴うようになるのが特徴です。

皮膚がん
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乳首の黒ずみは、乳首の病気だけでなく、以下のような乳首以外の部位に生じる病気が原因のこともあります。

乳がん

乳がんの中には、初期には乳首や乳輪部に湿疹やただれにみえる紅斑、表層が角質化して剥がれ落ちるような発疹の症状を示す乳房パジェット病があります。この乳がんでは、乳首の皮膚病変を繰り返すことで、色素沈着して黒ずみを生じることがあります。乳がんの1~3%とまれではありますが、発見が遅れることがしばしばあり注意が必要です。このほかにも、乳房のしこりや発赤、痛み、変形などを伴うのが特徴で、脇のリンパ節転移を生じてしこりが触れることもあります。

乳がん
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女性化乳房

男性の乳腺組織が肥大して女性のような乳房の膨らみを形成する病気です。男性ホルモンであるアンドロゲンの低下や女性ホルモンのエストロゲンの上昇によって引き起こされますが、主な原因は腎不全や肝機能障害、甲状腺機能亢進症下垂体腺腫などが挙げられます。乳房の肥大と共に痛みを伴うことが多く、乳首の黒ずみを引き起こすことも少なくありません。

乳首の黒ずみは性的な悩みのひとつであるため、特に目立った随伴症状がない場合は病院を訪れる人は少ないでしょう。しかし、中には非常に重篤な病気が潜んでいる可能性もあります。

特に、乳首にただれや湿疹などの病変を生じやすい場合、乳首から血性の分泌液が漏出する場合、乳房にしこりなどの病変がある場合、男性で乳房が肥大化した場合などはなるべく早めに病院を受診しましょう。

受診に適した診療科は皮膚科ですが、近年では乳首の黒ずみを治療するための美容外科を受診する人も多くいます。また、乳首の黒ずみ以外に随伴症状がある場合は、乳腺外科や内科などそれぞれの症状に適した診療科を受診しましょう。

受診の際には、いつから乳首の黒ずみが目立ってきたのか、随伴症状、現在罹患している病気や服用中の薬などについて詳しく医師に説明するようにしましょう。

受診の目安

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • かゆみや出血がある
  • 黒ずみが徐々に濃くなってきている

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 色合いに特別変化がなく、その他の症状もない
原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。