尿がにごる:医師が考える原因と対処法|症状辞典
急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 教授
南学 正臣 先生【監修】
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 後期研修医
山下 純平 先生【監修】
尿のにごりはさまざまな原因によって生じますが、時には注意が必要な場合もあります。
このような場合、原因としてはどのようなものが考えられるでしょうか。
尿道から細菌が侵入し、膀胱、腎臓、前立腺などに炎症を引き起こすことで、尿がにごるなどの症状が現れることがあります。
具体的には以下のような病気が挙げられます。
尿のにごりが現れる原因としては、以下のような泌尿器の病気による可能性が考えられます。
尿は膀胱で作られ、尿道と呼ばれる器官を通って体外に排泄されます。尿道に細菌やウイルスなどが感染し、炎症が生じた状態のことを尿道炎といいます。性感染症で多くみられ、淋菌やクラミジアが代表的ですが、ヘルペスウイルスなどでも発症することがあります。
女性の場合は尿道のみに炎症を起こすことはまれであり、通常は男性の病気となります。尿がにごる、尿の色がおかしいといった症状のほか、排尿痛や頻尿、尿意切迫感などがみられます。
膀胱に細菌が感染し、炎症が生じた状態のことを膀胱炎といいます。
膀胱炎になると、尿がにごる、血尿が出るといった症状のほか、頻尿、排尿痛、残尿感などがみられることがあります。
通常、尿道から侵入した細菌は尿とともに排泄されますが、尿道や膀胱に結石がある場合や、前立腺の炎症などにより尿の流れが妨げられると、膀胱内で細菌が繁殖して膀胱炎が起こるリスクが高まるといわれています。また、尿道が長い男性よりも尿道が短い女性で発症しやすい傾向にあります。
尿道から侵入した細菌が腎臓にまで達し、炎症が生じた状態を腎盂腎炎といいます。
尿がにごるといった症状のほか、発熱や吐き気・嘔吐、背中やわき腹の痛みなどがみられます。頻尿や排尿痛など、膀胱炎と似た症状を伴うこともあります。
男性の場合、膀胱のすぐ下に尿道を取り囲んでいる前立腺という臓器があり、ここに炎症が生じた状態を前立腺炎といいます。
尿がにごるといった症状のほか、排尿痛や頻尿、下腹部や会陰部(肛門から陰嚢の間)の痛み、発熱や倦怠感などがみられます。前立腺が腫れて尿道を圧迫することで尿を排泄できなくなる(尿閉)こともあります。
正常な尿は透明~濃い黄色のため、尿の色がいつもと異なる、尿がにごっているといった症状がある場合には注意が必要です。
特に、これらの症状に加えて発熱や痛みがある場合は早めに泌尿器科やかかりつけ医などを受診するようにしましょう。
受診の際は、いつから症状が出たのか、尿のにごりのほかにどのような症状があるかなどを医師に伝えることが大切です。また、スマートフォンなどで尿の写真を撮っておくと診断の参考になる場合があります。
日常の生活習慣などが原因で尿がにごることもあります。
葉物野菜、タケノコ、バナナ、チョコレートなどの食品、コーヒー、紅茶、抹茶や玉露茶などの飲み物は、シュウ酸と呼ばれる物質を多く含んでいます。これらの取り過ぎが原因で尿がにごったり、結石ができたりすることがあります。
シュウ酸は水溶性のため、上記のような野菜は茹でて食べることでシュウ酸の摂取量を減らすことができます。
また、カルシウムを含む食品と一緒に食べることでカルシウムとシュウ酸が結合し、腸で吸収されずに便として体外へ排泄することができるため、食べ合わせを考えることも重要です。逆に脂肪を多く含む食品は、吸収されずに腸に残存した脂肪酸とカルシウムが結合することで、本来シュウ酸と結合すべきカルシウムが減少し、結果として腸からのシュウ酸吸収量を増やしてしまうため、食べ過ぎには注意しましょう。
偏った食事は尿のにごりやさまざまな病気の原因にもなるため、日頃からバランスの取れた食生活を心がけるようにしましょう。
尿のにごりは水分不足でも生じる場合があります。
1日に必要な水分摂取量の目安は、体重やかいた汗の量などによっても変わりますが、2~2.5Lほどといわれています。水分が足りずに尿が濃縮されると尿中のシュウ酸濃度も上がるため、尿のにごりや結石などの原因となる場合があります。
尿のにごりや結石などを予防するためにも、日常的に水分を取るように心がけましょう。喉が渇いたときなどに一度にたくさん飲むのではなく、1日の中で少しずつこまめに飲むことが大切です。
日常生活でバランスのよい食事や水分摂取を心がけても尿のにごりが改善されないときは、一度病院への受診を検討しましょう。