尿漏れ:医師が考える原因と対処法|症状辞典
メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
尿漏れとは、自分の意思に反して尿が漏れてしまう症状を指します。高齢者特有の症状だと思われがちですが、性別・年齢を問わず誰にでも起こりえるものです。
このような症状がみられる場合、何が原因になっているのでしょうか。
病気以外に、日常生活上の原因で尿漏れが起こることも多くあります。考えられる原因とその対処には、以下のようなものがあります。
骨盤底筋は、骨盤内の臓器を支えたり排泄をコントロールしたりする役割を持つ筋肉です。加齢や出産などによって骨盤底筋の衰えや緩みが生じることがあり、お腹に力が加わったときに尿道が閉まらず、尿漏れが生じるようになります。
また、骨盤内の臓器を支えられなくなることで、膀胱瘤や子宮脱の原因になりえます。
骨盤底筋は、肛門を締めるなどの動作である程度鍛えることができます。ただし、間違った方法で行うと逆効果になる場合もあるため、取り組む際には医師や看護師の指導を受けるようにしましょう。
肥満も骨盤底筋の機能低下の原因になりえます。骨盤底筋の力が弱まることによって尿道の締まりも悪くなるため、尿漏れが起こりやすくなります。
肥満が原因となっている場合、減量によって尿漏れが改善される場合があります。肥満の解消には食事量を減らす、規則正しい食生活を送る、定期的に運動をするなど、日常生活上の取り組みが大切です。できることから始めてみましょう。自分で取り組むことが難しい場合には、肥満外来などを受診するのもよいでしょう。
日常生活上の取り組みを行っても尿漏れが続く場合、病気が原因になっているかもしれません。原因を特定するためにも、病院を受診し、検査を受けるようにしましょう。
病気が原因で尿漏れが起こることもあります。尿漏れを引き起こす原因は、泌尿器の病気と泌尿器以外の病気に大別されます。
尿漏れの原因となる泌尿器の病気としては、主に以下のようなものがあります。
前立腺は男性だけにある臓器で、膀胱の下に位置しています。この前立腺が大きくなる病気を前立腺肥大症といい、肥大化に伴って尿道が細くなることで、排尿困難や頻尿、残尿感、尿意切迫感(突然現れる強い尿意)、尿漏れなど、排尿に関わるさまざまな症状が現れるようになります。
膀胱炎とは、膀胱内の細菌感染などによって炎症が起こる病気です。現れる症状としては排尿痛、頻尿、残尿感が多く、尿漏れや血尿などが起こることもあります。
通常は発熱を伴いませんが、細菌が膀胱から尿管を通って腎臓にまで達し腎盂腎炎を発症すると、ほとんどのケースで発熱が生じます。
過活動膀胱とは、尿が少し溜まっただけで膀胱が過剰に反応する病気です。
日本では約800万人以上が過活動膀胱に当てはまるといわれています。尿意切迫感を主症状とし、通常は頻尿が伴います。ときに尿漏れが起こることもあります。
膀胱には尿を溜めたり、適切なタイミングで排尿させたりするはたらきがあります。これらのはたらきは大脳や脊髄などの神経によって調節されていますが、何らかの原因によって神経に異常をきたすと膀胱が正常に機能しなくなります。
これを神経因性膀胱といい、膀胱が正常に機能しなくなり、過剰な量の尿が膀胱に溜まるために頻尿や尿漏れなどの症状が現れます。
膀胱瘤(膀胱脱)は女性にみられるもので、膀胱が腟から出てくる状態を指します。膀胱が脱出することで、腟の入口にピンポン大の塊(膀胱)を触れます。また、一般的に軽度であれば咳などでお腹に力が入ったときに尿漏れが生じ、中等度から重度では排尿障害や頻尿、残尿感などの症状が現れます。
尿漏れの原因となる泌尿器以外の主な病気には、以下のようなものが挙げられます。
子宮脱は、子宮が腟から出てくる状態を指します。膀胱瘤と同様、女性にみられる病気です。腟の入口にピンポン大の塊(子宮)を自覚し、腟にものが挟まったような違和感が生じる場合があります。進行すると常に子宮が脱出した状態になることで、子宮が下着などで擦れると出血やおりものの増加などの症状が現れることもあります。
通常は子宮と共に膀胱も下がってくることから、尿漏れや排尿障害といった排尿に関わる症状が伴う場合も多くあります。
体内の余分な水分を排出させる利尿薬、抗コリン剤や抗ヒスタミン剤などの薬剤の副作用による排尿筋の収縮力低下が原因で尿漏れが起こることもあります。利尿剤においては、体内の水分量の減少によって脱水症状になる場合もあります。
認知症とは、脳の機能が低下して記憶や思考などに影響が起こる病気です。物忘れや記憶力・判断力の低下などが主な症状ですが、幻覚や妄想、尿漏れ・便の漏れ、不安、抑うつといった行動・心理症状が現れることも少なくありません。
尿漏れの原因の中には早期治療が望ましい病気もあります。また、尿漏れによってQOL(生活の質)が大きく損なわれます。
頻尿や排尿障害などの排尿に関わる症状、出血やおりものの増加など、何かしらの症状が伴う場合には早めに受診するのがよいでしょう。症状が尿漏れだけであっても、外出に不安を感じるなど日常生活に支障をきたしていれば受診を検討しましょう。
尿漏れにはさまざまな原因が考えられますが、受診先としてはまず内科または泌尿器科がよいでしょう。薬を服用してから尿漏れが起きた場合には、処方された病院を受診しましょう。
受診時には、どのような症状があるか、どのようなときに尿漏れが起こるか、尿漏れの頻度や程度などを詳しく伝えると医師の診断に役立ちます。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。