尿意切迫感:医師が考える原因と対処法|症状辞典

尿意切迫感

K-クリニック 院長

河上 哲 先生【監修】

突然強い尿意をもよおす“尿意切迫感”は精神的な緊張感が高まったときなど、日常生活の中でもしばしば見られる症状です。

しかし、トイレのことが気になるあまり、外出ができなくなってしまうなど日常生活に大きな支障をきたすケースも少なくありません。なかには思いもよらない原因が潜んでいることもあります。

  • 突然強い尿意を感じることが多く、トイレに間に合わないこともある
  • 日ごろから尿が出切らない感覚があったが、突然の尿意も生じるようになった
  • ストレスを感じると突然尿意が生じることがある

これらの症状が見られた場合、原因としてどのようなものが考えられるのでしょうか。

尿意切迫感は病気が原因で引き起こされるケースが多いですが、以下のような日常生活上の好ましくない習慣が原因となって引き起こされることもあります。

精神的な不調は、膀胱の収縮や弛緩(しかん)をつかさどる自律神経のはたらきを乱し、尿意切迫感や頻尿などの症状を引き起こすことがあります。

ストレスなどをためないようにするには

自分なりのストレス解消方法などを身につけ、できるだけストレスや疲れなど精神的な不調の原因をためないようにすることが大切です。また、十分な睡眠や休息を取るようにしましょう。

日常生活上の習慣を改善しても、尿意切迫感が生じる場合は上で述べたような病気が背景にある可能性が考えられます。軽く考えず、できるだけ早めに病院を受診するようにしましょう。

尿意切迫感は病気によって引き起こされることがあります。具体的には次のような病気が挙げられます。

尿意切迫感は、次のような膀胱や前立腺など泌尿器科系の病気によって引き起こされることがあります。

過活動膀胱

過活動膀胱とは、膀胱の機能に異常が生じることにより、膀胱の筋肉が過剰に収縮することで突然の尿意が生じる病気のことです。

尿は腎臓で生成され、膀胱に蓄えられます。膀胱は筋肉で形成されているため伸縮性が高く、多くの尿をためることができるようになっています。そして膀胱内に一定以上の尿がたまると神経が感知して、その情報が脊髄を通って脳に伝わり尿意が引き起こされるのです。

過活動膀胱の原因は、加齢による膀胱機能の低下などが挙げられますがはっきりとした原因が分からないケースも少なくありません。しかし、半数は尿失禁を伴うとされており、日常生活に深刻な支障をきたす場合もあります。

過活動膀胱
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前立腺肥大症

加齢などが原因となって前立腺が大きくなる病気です。前立腺は、膀胱の真下に位置し、尿道を取り囲むように存在しています。そのため、病気が進行すると尿道や膀胱が圧迫され、排尿後も尿が残ったように感じる“残尿感”や少量の尿が膀胱内にたまっただけで尿意切迫感が生じることがあります。

間質性膀胱炎

明確な発症メカニズムは解明されていませんが、膀胱の粘膜に異常が生じて炎症が生じる病気です。

頻尿や尿意切迫感とともに下腹部痛を伴い、排尿すると下腹部痛が改善することが特徴です。進行すると膀胱の組織が萎縮してさらに症状が悪化していきますが、根本的な治療は確立されていないのが現状です。

間質性膀胱炎
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尿意切迫感は、膀胱の機能をつかさどる神経の病気によって引き起こされることがあります。具体的には次のような病気が挙げられます。

脳梗塞・脳出血など

脳の機能の低下を引き起こす脳梗塞(のうこうそく)脳出血などにより、尿意を我慢するなどの排尿行動をつかさどる部位に異常が生じると、膀胱の機能に異常が生じることがあります。その結果、膀胱が過剰に収縮し尿意切迫感を引き起こすケースもあります。

脳梗塞
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脳出血
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椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症など

尿意や排尿行動をつかさどるのは脳ですが、その情報を脳や膀胱に伝えるのは脊髄です。そのため、椎間板ヘルニア脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)など脊髄の機能が低下する病気を発症すると膀胱の機能に異常をきたし、尿意切迫感が引き起こされることがあります。

椎間板ヘルニア
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脊柱管狭窄症
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尿意切迫感は次のような精神的な病気によって引き起こされることもあります。

心因性頻尿・尿意切迫症候群

精神的なストレスや不安感が原因となり、頻尿や尿意切迫感が生じる病気のことです。そのほかにも気分の落ち込みや不眠、食欲低下などの症状を伴います。

また、睡眠中などストレスや不安感などがない状況になると症状がなくなることが特徴です。

尿意切迫感は、緊張感が高まったときなど日常的にもしばしば見られる症状です。しかし、上で述べたような病気が原因になることも多く、日常生活に支障をきたすようなケースもあります。

特に、尿失禁を伴う場合や、下腹部痛や残尿感などの症状も伴う場合、トイレのことが気になって生活に影響が出ている場合などはできるだけ早く病院を受診して適切な検査・治療を受けるようにしましょう。

初診に適した診療科は泌尿器科ですが、受診に抵抗がある女性などはかかりつけの内科などで相談するのも1つの方法です。病院を受診した際には、いつから尿意切迫感が生じたのか、どのような状況で起こりやすいのか、随伴する症状の有無などについて詳しく医師に伝えるようにしましょう。

また、尿意切迫感が生じた時間、排尿した時間などを記録した“排尿手帳”を持参すると診療がスムーズに進むことがあります。

受診の目安

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 排尿の回数が多く、日常生活に支障をきたしている
  • 尿意のために外出や予定などを控えることがある
  • 突然尿意を感じ、我慢できない
  • トイレに間に合わず漏れてしまうことがしばしばある

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 一時的なもので、その後繰り返さない
原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。