排尿障害:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典
メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
日常生活の中で、排尿に異常を感じて心配になった経験があるという方も多いでしょう。
このような症状があるとき、考えられる原因にはどのようなことがあるでしょうか。
排尿がうまくいかない理由は尿が貯められないか、尿が出にくいかの二つにわけられます。
過活動膀胱は、膀胱が過敏になり、自分の意に反して膀胱が収縮してしまう病気です。
過活動膀胱の主な症状としては、日中・夜間問わずの頻尿、尿意切迫感(急に尿意を覚えて我慢できない状態になる)、尿失禁(急な尿意を我慢できず漏らしてしまう)が挙げられます。
膀胱炎にかかると、頻尿、尿意切迫、排尿時に沁みるような痛みがある、残尿感がありトイレに行きたい感じが続くなどの症状が現れます。
腎盂腎炎を合併すると発熱や腰痛、血尿などを伴うこともあります。
膀胱がんの初期ではあまり症状がないことも多いといわれていますが、血尿や排尿時の痛み、頻尿、尿意切迫感など、膀胱炎のような症状をきたすこともあります。
排尿障害のうち、尿が出にくい場合に考えられる病気には以下のようなものがあります。
前立腺は男性にのみある臓器で、尿道の周りを取り囲んでいます。この前立腺が何らかの原因で肥大することで、尿の通り道を狭めてしまうことがあります。
症状として、尿が途切れる、尿の勢いが弱い、1回の尿量が少なくその分しょっちゅうトイレに行く、突然尿意を感じて我慢できない、排尿後も尿が残っている感じがする(残尿感)などの症状が現れます。
前立腺肥大症の頻度は年齢とともに高くなり、55歳以上の男性の5人に1人が前立腺肥大の症状があると言われています。日常生活に支障をきたしているような場合には、泌尿器科で受診しましょう。
前立腺がんは、前立腺肥大症とともに、特に中高生の男性において注意が必要な前立腺の病気です。前立腺がんは他の臓器のがんとは異なり、ゆっくりと進行します。そのため、早期発見できれば治る可能性が非常に高いがんです。しかし初期には自覚症状がほとんどないため、実際は早期に発見することが難しく、症状が現れる頃には他の臓器に転移してしまっているケースも少なくはありません。
前立腺がんは進行すると、尿が出にくい、排尿時の痛み、血尿や腰痛などが現れることがあります。
糖尿病により高血糖状態が長く続くことによって末梢神経の機能が障害を受けることがあります。その影響によって尿が出にくく排尿に時間がかかる、手足が痺れたり感覚が鈍くなる、立ちくらみ、感覚が麻痺するなどの症状が現れることがあるといわれています。
糖尿病の人でこのような症状がある場合は、主治医に相談してみましょう。
結石はごく小さなものでは無症状なこともありますが、尿の通り道がふさがれたり、結石が尿に流されて移動したりすると非常に激しい痛みが生じます。
腫瘍も尿の流れを遮断することがあるため排尿障害を起こすことがあります。
抗うつ薬、抗不整脈薬などの副作用として、尿を出したいのに出せないという副作用が起こることがあります。また、抗コリン薬と呼ばれる種類の薬でも同様の副作用が起こることがあります。
もし新しく薬を飲み始めてこのような症状があれば、処方された病院へ相談するようにしましょう。
尿の出にくさや頻尿が続く、発熱や血尿など別の症状もあるような場合には一度受診しましょう。また、尿を出したいのに全く出せない、お腹が痛いような場合には、すぐの受診が必要なこともあります。
受診の際には、日中の尿の回数、排尿時の違和感の有無や排尿に関すること以外で気になっている症状などを伝えるようにしましょう。
また、尿に関する症状が長く続いており、他の症状もないような場合には一度きちんと尿の回数や一回の量を数えてみるのもよいでしょう。