夜中にトイレ・尿意で起きる:医師が考える原因と対処法|症状辞典

夜中にトイレ・尿意で起きる

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 息苦しくて、横になれない
  • 尿を出したくても出なく、下腹部がパンパンに張っている

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 排尿の回数が多く、日常生活に支障をきたしている
  • トイレに間に合わず漏れてしまうことがしばしばある
  • 以前と比べ喉が渇き、大量に水分をとってしまう

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 一時的なもので、その後繰り返さない

K-クリニック 院長

河上 哲 先生【監修】

1日の平均した排尿回数は4~6回とされています。夜間は尿の生成を抑える“抗利尿ホルモン”が分泌されるため通常は何度も尿意を感じて起きることはなく、尿意は日中に生じることがほとんどです。

しかし夜間に尿意で起きるという経験は誰にでもあり、頻度が低ければ特に問題になることはありません。一方で、夜間に頻回に尿意が生じる場合は思いもよらない原因がある場合もあります。

  • 就寝中に突然我慢できないほど強い尿意を感じて目を覚ますことがある
  • 日ごろから排尿しても尿が出切らない感じがあり、夜間の頻尿も目立つようになった
  • ストレスで熟睡できず、尿意で目が覚めることが増えた

これらの症状がある場合、原因としてはどのようなものが考えられるのでしょうか。

夜間の頻尿は、以下のような病気によって引き起こされることがあります。

夜間の頻尿は、尿量自体が多くなる病気が原因となることがあります。具体的には次のような病気が挙げられます。

夜間多尿

夜間多尿とは夜の間も腎臓でたくさんの尿が作られることにより、尿量が増えることをいいます。起床時の尿量を含めた夜間の尿量が、1日の排尿量の3分の1以上に増えてしまうと夜間多尿と診断されます。主に水分・塩分の取りすぎや運動不足、高血圧などが関与していることが考えられます。

また、夜間に下垂体から分泌される抗利尿ホルモン(尿量を調節しているホルモン)の分泌が加齢に伴って低下することも夜間に尿量が増加する原因として知られています。

夜間多尿
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尿崩症

尿の産生を抑える“抗利尿ホルモン”の分泌量が低下することで尿量が増加する病気です。抗利尿ホルモンは脳の下垂体と呼ばれる部位で分泌されるため、脳腫瘍(のうしゅよう)や脳の外傷・炎症などが原因で発症することが知られています。

夜間の頻尿のほか、強い喉の渇きが生じ、多量の水分が尿として失われることで脱水状態に陥るケースも少なくありません。

尿崩症
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うっ血性心不全

心臓の機能が低下する病気です。

加齢、心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓弁膜症などの心疾患など原因は多岐にわたりますが、発症すると体内に水分がたまりやすくなります。しかし、横になった状態になると体にたまった水分が尿として排出されやすくなるため、相対的に夜間の尿量が増える傾向にあります。

そのほか、夜間の息切れや咳、呼吸困難、むくみなどの症状も現れます。

うっ血性心不全
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糖尿病

血糖値が高くなる病気ですが、ブドウ糖で濃くなった血液を薄めるため血管内に水分が多く入るようになります。そのため、尿量が増えて夜間頻尿を引き起こすことがあります。

また、喉が渇きやすく多量の水分を飲むようになって尿量も増えるという悪循環に陥るケースも少なくありません。

糖尿病
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本来、膀胱は非常に伸縮性の高い筋肉で構成されており、腎臓で生成された尿を蓄えるはたらきがあります。しかし、膀胱の容積が少なくなる次のような病気によって夜間頻尿を引き起こすこともあります。

過活動膀胱

加齢や脳梗塞パーキンソン病などの神経疾患などにより、膀胱の収縮をつかさどる神経の機能に異常が生じることで膀胱が過剰に収縮し、頻尿を引き起こす病気です。

はっきりした原因が分からないケースもありますが、日本では40歳以上の男女の約14%が過活動膀胱であるとされています。また頻尿だけでなく、突然の強い尿意が生じるため尿失禁を伴うケースも少なくありません。

過活動膀胱
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前立腺肥大

加齢などにより、前立腺が大きくなる病気のことです。前立腺は膀胱の真下に位置し、尿道を取り囲むように存在しています。そのため、発症すると膀胱を圧迫して膀胱の容積が小さくなり、頻尿が見られるようになります。

また、尿道が狭くなるため十分に排尿することができずに残尿感を伴うケースもあり、それが膀胱を刺激して過活動膀胱を誘発することがあります。

夜間の頻尿は、良質な睡眠がとれなくなる以下のような病気によって引き起こされることがあります。眠りが浅く、頻回に目が覚めるため尿意を感じる回数も増えるのです。

睡眠時無呼吸症候群

肥満などが原因となって空気の通り道が狭くなり、睡眠中に無呼吸状態に陥るのを繰り返す病気です。大きないびきが出ることも特徴であり、眠りが浅くなることで慢性的な睡眠不足に陥るとされています。

睡眠時無呼吸症候群
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うつ病など

うつ病をはじめとした精神疾患の多くは睡眠障害を伴うことが知られています。眠りが浅く、目が覚めやすくなることが特徴です。

また、夜間の尿意が過剰に気になることが睡眠障害を助長する原因になるケースも少なくありません。

うつ病
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夜間頻尿は、水分を取りすぎたときや寝つきが悪いときによく起こりうる症状です。しかし、なかには上で述べたような思わぬ病気が原因のこともあり、命に関わる病気が隠れている場合もあります。

特に、夜間の頻尿に伴って息苦しさやむくみなどの症状を伴う場合、水分摂取量は変わっていないのに尿量が異常に増えた場合、強い喉の渇きがある場合、頻尿のため十分な睡眠が取れずに体調に異常をきたしている場合などはできるだけ早めに病院を受診するようにしましょう。

初診に適した診療科は泌尿器科ですが、かかりつけの内科などがある人はそちらで相談することも1つの方法です。また、病院を受診した場合は、いつから夜間頻尿に悩まされているのか、具体的な排尿回数、尿量の程度、随伴する症状などについて詳しく医師に伝えるようにしましょう。

夜間頻尿は病気が原因となるだけでなく、次のような好ましくない生活習慣によって引き起こされることもあります。

夜間は抗利尿ホルモンの影響で尿量は少なくなりますが、就寝前に多量の水分を摂取すると夜間頻尿の原因になります。特にアルコール類は脱水作用があり、尿量が増える性質を持つため夜間頻尿を引き起こしやすくなります。

適度な水分摂取を心がけるには

必要な水分量は体格や運動量などによって異なりますが、就寝30分~1時間ほど前からは過度な水分摂取を控えるようにしましょう。また、夕食時なども過度な飲酒は控え、節酒を心がけることが大切です。

精神的なストレスや過度な疲れは交感神経を過剰に刺激し、睡眠障害を引き起こすことがあります。夜間頻尿の原因にもなり、夜間の尿意が気になること自体がさらなるストレスや疲れにつながるケースもあるため注意が必要です。

ストレスや疲れをためないためには

日頃から十分な休息や睡眠を取るよう心がけ、ストレスと疲れをためない生活を送るようにしましょう。また、没頭できる趣味を持つ、体を動かすなどストレスを発散できるような習慣を身につけることも大切です。

日常生活上の好ましくない生活習慣を改善しても夜間頻尿がよくならない場合は、上で紹介したような病気が背景にある可能性も考えられます。軽く考えず、できるだけ早めに病院を受診するようにしましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。