残尿感:医師が考える原因と対処法|症状辞典
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メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
残尿感とは、「排尿後に尿が残っている感じがする」、「尿が出きらずスッキリしない」という状態を指します。実際に尿が残っている場合もありますが、尿が残っていないのに残尿感を感じる場合もあります。
こういった場合に考えられる原因には、どのようなものがあるのでしょうか。
病気が原因で残尿感が起こる場合もあります。その原因は、膀胱の病気と膀胱以外の病気に大別されます。
残尿感が現れる膀胱の病気としては、主に以下のようなものがあります。
膀胱炎とは、膀胱内に細菌が侵入することで炎症が起きる病気です。特に女性に多いといわれています。
膀胱炎を発症すると、残尿感のほかに排尿痛や頻尿、尿が濁る、尿が臭くなる、血尿などの症状が現れる場合があります。通常は発熱を伴いませんが、膀胱に入った細菌が腎臓まで達すると腎盂腎炎を発症し、発熱が生じるようになります。
腎臓から尿道までの尿路に石ができることを尿路結石といい、尿路のうち膀胱に石ができる病気を膀胱結石と呼びます。
膀胱結石を発症すると、主に排尿痛や残尿感、頻尿の症状が現れるようになります。また、尿管結石でも結石が膀胱のすぐ手前まで落下してきたときには残尿感をきたす場合があります。その場合、痛みと「トイレに行っても尿が出ない」という症状を訴える患者さんもいらっしゃいます。
膀胱炎は主に細菌感染によって起こりますが、明らかな原因がなく炎症を起こす場合もあります。これを間質性膀胱炎といい、発症者は高齢の女性に多いとされています。
代表的な症状は残尿感や頻尿、尿意切迫感(突然現れる強い尿意)、膀胱の不快感・痛みなどです。膀胱の不快感・痛みは膀胱に尿が溜まったときに強くなる傾向があります。
膀胱がんは、膀胱に発生した悪性腫瘍のことを指します。腫瘍の種類には良性と悪性がありますが、膀胱に生じる腫瘍のほとんどが悪性とされています。
膀胱がんでは初発症状として血尿がみられることが多く、肉眼ではっきり分かるほど尿が赤くなる場合もあります。また、進行すると排尿痛や残尿感、頻尿などが現れることもあります。
膀胱以外の病気として考えられるものには、以下が挙げられます。
前立腺とは、男性の膀胱のすぐ下に位置する臓器で、ここが腫れて大きくなる病気を前立腺肥大症といいます。
前立腺が肥大化し尿道の一部が細くなることで、残尿感や頻尿、尿意切迫感、排尿困難など、尿に関する症状が現れるようになります。
慢性前立腺炎とは、前立腺の炎症が慢性的に続く病気です。ゆっくりと発症し再発を繰り返すのが特徴です。発症すると陰茎や陰嚢、鼠径部、下腹部などに不快感・鈍痛が現れたり、残尿感や頻尿、排尿時痛が生じたりすることがあります。
神経因性膀胱とは、脊髄や脳などの神経の異常が原因となって排尿障害をきたす病気です。膀胱や尿道のはたらきが障害されることで、頻尿や尿意切迫感、膀胱に過剰な量の尿が溜まるなどの症状が現れるようになります。
また、膀胱に尿が溜まる状態が続くと膀胱炎などの尿路の感染症が起こることもあり、この場合には排尿痛や発熱などの症状を自覚することもあります。
過活動膀胱は、脳や脊髄の病気、加齢などによって膀胱が敏感になり、意に反して膀胱が収縮してしまう病気です。40歳以上の8人に1人が過活動膀胱であるといわれています。主な症状には尿意切迫感や頻尿、尿失禁が挙げられ、残尿感が伴う場合もあります。
残尿感はさまざまな原因によって起こります。残尿感のほかに尿に関する症状が伴う場合、痛みや発熱などの症状が伴う場合には、一度病院を受診することがすすめられます。
受診先は内科もしくは泌尿器科がよいでしょう。受診時には、いつから症状が出始めたのか、どのような症状があるかを具体的に伝えるようにしましょう。
加齢や産後など病気以外の原因によって、残尿感が起こることも多くあります。
骨盤の底の部分にある筋肉を骨盤底筋といい、骨盤内の臓器を支えたり排泄をコントロールしたりする機能がありますが、加齢と共に骨盤底筋は衰えてきます。また、女性では出産によって骨盤底筋が緩むことがあります。
骨盤底筋に衰えや緩みが起こると、腹圧のコントロール不良や排せつ機能の低下が起こり、頻尿や、尿失禁などの尿に関する症状が現れるようになります。
骨盤底筋は、肛門を引き締めるようなトレーニングである程度鍛えることができます。しかし、正しいやり方でなければ逆効果になる可能性もあるので、医師や看護師の指導を受けて取り組むようにしましょう。
骨盤底筋のトレーニングを行っても残尿感がなくならない場合には、何かしらの病気が原因になっている可能性も考えられます。いつまでもよくならない場合には、病院を受診して医師の診察を受けるのがよいでしょう。