肛門がかゆい:医師が考える原因と対処法|症状辞典

肛門がかゆい

金沢医科大学病院 女性総合医療センター 特定教授/女性肛門病専門外来担当

草間 香 先生【監修】

肛門(こうもん)かゆみは、排尿や排便などで肛門が不潔になったり、女性の場合はおりものシートや生理用ナプキンで蒸れたりするといった日常生活上の原因で起こることの多い症状ですが、肛門周囲の皮膚の病気などが原因で起こることも考えられます。

  • 肛門のかゆい部分を触るとカサカサしている
  • 急に肛門の周囲がかゆくなって、鏡で見ると皮膚が赤くなっている
  • 肛門だけでなく性器もかゆい

このような場合、どういった原因が考えられるでしょうか。

肛門のかゆみは、日常生活上の原因で起こることもあります。原因やその対処法には以下のようなものがあります。

便や汗などで肛門周囲が不潔な状態が続くと、それらが刺激となってかゆみが起こる場合があります。

清潔に保つには

肛門周囲の清潔を保つために、毎日入浴するようにしましょう。また、排便の後には肛門周囲を優しく押し拭きをして、便が残らないようにすることが大切です。

肛門周辺を清潔に保つことは大切ですが、洗いすぎや拭きすぎには注意が必要です。タオルなどを使ってゴシゴシと強く洗ったり、トイレットペーパーで強く拭き取ったりすると、皮膚に傷がつき炎症が生じ、かゆみの原因になります。

正しく洗うには

入浴時には肛門周囲をお湯で流すように優しく洗うようにするのがよいでしょう。

排便後においても、トイレットペーパーなどで優しく押し拭きをしましょう。
温水洗浄便座を使用する場合には、ぬるま湯で水圧は1番弱くし、5秒程度で終わらせるようにしましょう。洗い過ぎてしまうと皮膚の皮脂が取れ、バリア機能が低下して炎症が生じ、かゆみの原因になります。

下着の素材が原因となったり、おむつ、生理用ナプキン、おりものシートなどを長時間使用しているために不潔になったりすることもあります。また、汗や尿、経血などの接触や蒸れたりすることもかゆみの原因になります。

接触や蒸れなどによるかゆみを防ぐには

柔らかい素材や通気性・吸水性に優れた素材のものを選びましょう。蒸れないようにこまめに替えることも予防になります。

肛門周囲のかゆみは、日常生活上の原因によって起こることも多いですが、上で挙げたような対策をとってもかゆみが引かない場合には、病気が原因になっている可能性も考えられます。いつまでもよくならないときには、一度病院の受診を検討しましょう。

肛門のかゆみを引き起こす病気には、主に以下のようなものがあります。

肛門掻痒症(こうもんそうようしょう)

肛門掻痒症とは、さまざまな原因によって肛門にかゆみが生じる病気の総称です。初期には肛門周囲に違和感や軽いかゆみが生じ、就寝時や入浴時などにかゆみが強くなることが多いといわれています。
また、悪化するとかゆみが強くなり、かきむしることで皮膚がただれて赤くなるほか、慢性化すると皮膚が硬くなり黒ずむようになります。

肛囲溶連菌性皮膚炎

肛囲溶連菌性皮膚炎は、肛門の周囲が溶連菌に感染して炎症を起こす病気です。特に幼小児に発症することが多いとされています。発症すると肛門の周囲が赤くなり、かゆみが現れるようになります。

内痔核(ないじかく)裂肛、粘膜脱や直腸脱痔瘻(じろう)などが原因で、脱出物や分泌物などが肛門周囲の皮膚を刺激して炎症を起こしたり、湿疹ができたりします。

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カンジダ症

カンジダ症とは、カンジダ菌による感染症のことです。カンジダ菌は、皮膚や口の中、消化器などに存在する常在菌で、免疫力が低下したときなどに異常に増殖して発症します。陰部に発症することが多いですが、肛門周囲に症状が現れることもあります。

主な症状は強いかゆみで、炎症によって皮膚が赤くなり湿疹が見られる場合もあります。また、女性で外陰部や腟部に発症すると、多くの場合おりものの増加や白く濁ったおりものが出るようになります。

カンジダ症
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肛門パジェット病

パジェット病は、皮膚にできるがんの一種です。主な発生部位は乳房ですが、外陰部や肛門に生じる場合もあり、肛門に発生したものを肛門パジェット病と言います。

発症すると赤く湿った斑状の病変が生じます。赤い病変のほかにも白色や茶色の病変が混じることもあります。また、自覚症状としてかゆみや痛みを感じる場合もあります。

毛じらみ症・蟯虫

肛門のかゆみの原因として、毛じらみや蟯虫(ぎょうちゅう)などの寄生虫も挙げられます。毛じらみは毛に寄生し、皮膚からの吸血によってかゆみが引き起こされます。蟯虫は大腸や直腸に寄生しますが、肛門に卵を産みつけることで、それが刺激になって肛門にかゆみが現れるようになります。

いずれもかゆみが強く、かゆみによって寝不足になったり、かきむしることで細菌感染症などの合併症が生じたりすることも珍しくありません。

かゆみの程度が弱くほかの症状がない場合でも、長く続いているのであれば一度病院で検査を受けるのがよいでしょう。

肛門のかゆみが強くかきむしってしまう場合や、かゆみ以外に湿疹や赤い斑状の病変など見た目に変化が現れている場合には、早めに受診をするようにしましょう。

受診に適した診療科は皮膚科や肛門科です。受診の際には、いつ頃からかゆみが現れたのか、どの程度のかゆみか、ほかの症状はあるのかなどについて、なるべく詳しく医師に伝えるとよいでしょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。