お尻のしこり:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典

お尻のしこり

メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】

お尻は皮下組織が豊富で下着や衣類などで蒸れやすい環境であるうえ、座位などによって慢性的に負荷がかかる部位です。このため、さまざまなトラブルを引き起こすことがあります。中でもお尻に形成されるしこりは発症頻度の高い症状であり、原因は多岐に渡ります。

  • お尻に痛みを伴うしこりができた
  • お尻にできた無症状のしこりが突然赤く()れ上がり、強い痛みを生じる
  • お尻にしこりができ、下着に(うみ)や血液が付着することが多くなった

これらの症状がみられた場合、原因としてどのようなものが考えられるでしょうか。

臀部のしこりは、日常生活上の習慣が原因で引き起こされることがあります。原因となる主な生活習慣と、それぞれの対処法には以下のようなものが挙げられます。

臀部は下着や衣類、長時間の座位によって蒸れやすい環境であり、細菌が繁殖して毛嚢炎などの炎症を引き起こすきっかけとなることがあります。

臀部を清潔に保つには

下着や衣類は、通気性がよく汗の吸収能が高い綿やシルクなどの素材を選び、夏場など汗をかきやすい時期は、ストッキングやスキニーパンツなどの蒸れやすい衣類の長時間にわたる着用は控えるようにしましょう。また、長時間座ったままの状態でいる必要がある場合は、こまめに席を立って蒸れを解消することもおすすめです。

慢性的に下痢や便秘などの便通の異常があるとろうを発症しやすくなり、肛門周囲(のうしょう)によるしこりの原因になることがあります。

便通を整えるには

日頃からバランスのよい食生活を心がけ、特に、腸の調子を整える乳製品や食物繊維が多く含まれた野菜類を積極的に摂るようにしましょう。また、ストレスも便通異常の原因になることがあるため、思い当たる場合はストレスを溜めにくい生活を送るようにしましょう。

日常生活上の習慣を改善しても臀部のしこりがよくならない場合や、新たなしこりができるような場合には、思いもよらぬ病気が潜んでいる可能性があります。軽く考えずに、それぞれの症状にあった診療科を早めに受診して検査・治療を受けるようにしましょう。

お尻には、以下のような病気が原因でしこりが形成されることがあります。

お尻は豊富な皮下組織、体毛、不衛生になりやすい環境や慢性的な刺激によって、炎症や感染を起こしやすい部位です。以下のようなお尻の炎症や感染による病気は、しこりを形成することがあります。

毛嚢炎(もうのうえん)、せつ

毛包内に細菌感染が生じて炎症を引き起こしたものが毛嚢炎であり、感染を生じた毛包に腫れや発赤、痛みを引き起こし、内部に(うみ)を溜めたしこりを形成します。毛嚢炎が悪化して病変(病気による変化が起きている箇所)が大きくなり、痛みなどの症状が強くなったものがせつです。せつは、一般的にはおできと呼ばれています。

お尻にも毛嚢炎やせつを発症することがあり、座位時に病変部が刺激されると強い痛みを生じることが特徴です。

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粉瘤(ふんりゅう)

毛穴の上方の一部が皮膚(ひふ)内で袋状になり内部に角質が溜まって柔らかいしこりを形成する病気です。通常、痛みなどの自覚症状はほとんどありません。しかし、しこりの内部に細菌感染が引き起こされると、病変部が大きく腫れ上がって強い痛みが生じると共にの流出が見られることもあります。

肛門周囲膿瘍(のうよう)

()の一種とされているろうを発症することで肛門の周辺に瘍が形成され、体の表面からしこりとして触れることがあります。強い痛みや腫れ、発赤を伴い、発熱などの全身症状を引き起こすことも少なくありません。

臀部膿皮症(でんぶのうひしょう)

肛門周囲から臀部(でんぶ)大腿部(だいたいぶ)の広範囲に黄色ブドウ球菌などの細菌感染を生じ、内部にを溜めた痛みを伴うしこりを形成する病気です。再発を繰り返すことが特徴で、慢性化すると、炎症が治まってもしこりや(あと)が残ることも少なくありません。また、皮膚がんを発生することもあります。しこりを取り除く手術が必要になる場合もありますが、最近、皮下注射による新しい治療が始まっています。

お尻にも腫瘍が発生することがあり、しこりの原因となるケースがあります。お尻に発生しやすい腫瘍には以下のようなものが挙げられます。

脂肪腫

良性腫瘍の一種であり、皮下脂肪の多いお尻に形成されることがあります。通常は柔らかいしこりを触れるのみで、痛みなどの自覚症状はありません。しかし、腫瘍が大きく、座位時に圧迫を受けやすい部位に発生した場合は腫瘍の表面がダメージを受け、痛みや出血の原因になることがあります。また、血管成分が多い脂肪腫も痛みを生じます。

脂肪腫
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臀部肉腫

お尻の軟部組織(皮下脂肪や筋肉など)に発生する悪性腫瘍(がん)であり、脂肪肉腫平滑筋(へいかつきん)肉腫などが挙げられます。早期の段階では硬く可動性の低いしこりが触れるのみですが、大きくなるとしこりに潰瘍が形成されたり、痛みを伴ったりするようになります。

臀部のしこりは、毛嚢炎(もうのうえん)など日常的に起こりうる症状であるため、余程ひどい症状がない限りは病院を受診する人は少ないでしょう。しかし、中には思いもよらない病気が潜んでいたり、治療が遅れることで手術の必要が生じたりするケースも少なくありません。

特に、非常に強い痛みを伴うため日常生活に支障がある、しこりから(うみ)や血液が流出している、しこりが圧迫されるため座位に違和感がある、しこりが徐々に大きくなっていく場合などは、なるべく早めに病院を受診するようにしましょう。

受診する診療科は皮膚(ひふ)科がよいですが、便の変化や排便時に痛みなどがある場合は消化器外科などで相談することもひとつの方法です。受診の際には、いつからしこりがあるのか、随伴する症状、しこりの変化などを詳しく医師に説明するようにしましょう。

受診の目安

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • かゆみ、皮むけ、赤み、腫れ、痛みなどがある
  • 短期間で明らかに増えている、大きくなっている
  • サイズが大きい
  • 肛門周囲にできている

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 短時間でよくなり、その後繰り返さない
原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。