イリザロフ法は骨を再生できる治療法です。「先天性小人症」の患者さんの身長を伸ばすことや、ケガによって骨を失ってしまった患者さんの欠損部位を元通りにすることができます。また、悪性腫瘍や骨髄炎などにより骨を切除した患者さんの場合、その部位を修復することができます。さらに、事故や奇形などにより骨が変形してしまった患者さんの場合は、その骨を矯正することもできるのです。イリザロフ法の第一人者である関東労災病院副院長・整形外科統括部長の岡﨑裕司先生にお話をお聞きしました。
イリザロフ法は、何よりも究極の「創外」固定である点が特徴です。つまり、外から器具を用いることにより、全身の骨を固定していく方法です。ここで、「創内」固定という骨に直接プレートを巻き付けていく方法をとる「プレート治療」と、様々な点について比較してみましょう。
※ここではプレート治療を批判するわけではありません。プレート治療もどんどん進化しています。このプレート治療とイリザロフ法による創外固定を併用していくことも増えてきました。
まず、創外固定器を用いるときは外からピンを刺してワイヤーで固定するだけであるため、骨に直接プレートをつけるよりも侵襲は少なくなります。また、創内固定器であるプレートが感染してしまうと、取り出すのが大変です。ピンの感染であればピンサイト(ピンが刺さっている部分)を綺麗にするだけで治療が可能です。
創外固定器は、外から操作ができるという点もひとつの特徴です。骨に対してリモート・コントロールが利くので、さまざまな修正を加えることもできます。骨に直接巻きつけるプレート治療では、手術の後から操作を加えるのは難しくなります。
何といっても一番の特徴は、適度な固定強度をもち骨癒合に有利であること。そして外から細かくコントロールし、適切なテンション(張力)をかけることで、適度な固定強度を保ちながら骨延長ができることです。これは骨癒合の点でも有利です。
整形外科医にとって最も画期的であった長所は、3次元的な変形矯正が可能であることです。これにより、さまざまな方向に矯正をすることができるようになり、曲がってしまった関節なども正しい形にすることができるようになりました。
しかも、創外固定器の特性から経時的に徐々に変形矯正を行うことが可能です。これにより、これまで困難と考えられてきた多くの変形矯正が可能になりました。
さらに、適度かつ強固な固定力とリング型の創外固定器があればできるイリザロフ法は、その適用範囲は多く、あらゆる整形外科領域に使用可能と言っても過言ではありません。
イリザロフ法の創外固定は、早くリハビリに入れる点も特長です。最短の場合は、翌日からリハビリを開始します。このとき、1日3000歩の歩行が目安になります。骨はサボらせない方が良く育ちます。プレート治療ではすぐには足に荷重をかけることができませんが、イリザロフ法ではすぐにリハビリに入ることができます。
次の記事「イリザロフ法の注意点とは? 知っておきたい治療の注意点」では、イリザロフ法を行う際の注意点についてお伝えします。
福島県立医大 外傷学講座(寄付講座) 教授
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