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インタビュー

エボラ出血熱の予防法と治療法

エボラ出血熱の予防法と治療法
青柳 有紀 先生

ダートマス大学 Clinical Assistant Professor of Medicine

青柳 有紀 先生

エボラウイルス感染症(いわゆる「エボラ出血熱」)は、エボラウイルスの感染によって起こる致死性の高い病気です。エボラウイルス感染症の感染拡大を防ぐために、世界中の医療従事者・NGO・各国政府が協力したことで、2014年に始まった流行は徐々に収まりつつあります。2015年5月9日にはリベリアでエボラウイルス感染症の終息宣言が出されました。

エボラウイルス感染症を予防するにはなにを行うべきなのか、また感染してしまった場合にはどのような治療法があるのか、青柳有紀先生に伺いました。青柳先生はアメリカの感染症専門医で、現在はルワンダで勤務されています。

結論から言うと、エボラウイルス感染症に対する確立された治療法はありません。エボラウイルス感染症はエボラウイルスの感染によって起こる病気ですが、エボラウイルスそのものに対して決定的な効果を持つ薬剤は、まだ開発途上です。

したがって、あくまで治療の中心は対症療法(根本的な治療ではなく、表面的な症状をやわらげる治療)ということになります。嘔吐・下痢などによって脱水や血圧の低下が起こった場合は、輸液を行います。また電解質のバランスが狂ってしまった場合も、それぞれの成分を補正します。呼吸状態が悪くなった場合は呼吸管理、血圧が下がってしまった場合は循環管理と、それぞれの症状をコントロールするための治療が行われます。

エボラウイルスに対してのワクチンや、エボラウイルス感染症そのものを治療する薬剤についても研究開発が進められていますが、現時点ではまだその効果は確定していません。

エボラ出血熱(エボラウイルス感染症)を予防するためには、エボラウイルスがどのような感染経路をとるのかを理解する必要があります。感染経路については、別の記事に詳細を書いていますので、そちらも御参照ください。一般的な感染症の感染経路は「接触感染」「飛沫感染」「空気感染」の3つに分けられ、それぞれの感染経路によって予防策が異なります。

「接触感染」は、感染した患者さんの血液や体液に直接触れることで感染します。クラミジアなどの性感染症、流行性角結膜炎などの眼科感染症が代表的です。接触感染を予防するためには、患者さんとの接触前後に手洗いをし、体液に触れる可能性があるときには手袋、また場合によりガウンを使用します。

「飛沫感染」は、病原体を含んだ飛沫が粘膜などに触れることで起こる感染ですが、咳やくしゃみなどで飛ばされる病原体を含んだ粒子のサイズが大きいので、病原体が長い距離に渡って拡散することはありません。インフルエンザ百日咳が代表例です。この場合は、基本的には接触感染の予防策に加えてマスクを、また場合によりゴーグル等も使用します。

「空気感染」は、咳やくしゃみなどで飛ばされる病原体を含んだ粒子のサイズが小さいので、病原体が長期間にわたって空気中をただよいます。この場合は、患者さんを空調設備のある個室に収容して、N95などといった高性能の濾過マスクを着用して患者さんに接触します。

エボラウイルス感染症の場合、「接触感染」を起こすことは分かっています。また、「空気感染」はしないこともわかっています。一方で「飛沫感染」を起こすかどうかは専門家の間でも議論が分かれているところです。したがって、エボラウイルス感染症を予防するには、基本的に「接触感染」および「飛沫感染」の予防をする、すなわちそのための装備(手袋、眼部を保護するもの、フェイスマスク、ガウン)をすることで十分だと考えられています。

しかし、メディアの報道で皆さんがご覧になる西アフリカの医療従事者は、まるで宇宙服のような重装備で患者さんの治療にあたっておられると思います。この理由を理解するには、流行が起こっている西アフリカと日本のような先進国の医療環境の違いを理解する必要があります。西アフリカでは医療資源に乏しいので、水道が完備されていなかったり、狭いスペースに多くの患者さんが収容されていたりと、日本では考えられないような環境にあります。患者の体液に汚染されてしまった物品などを適切に管理することが難しく、感染の危険性のある環境で長時間活動しなければならないので、一般的な飛沫感染防御以上の処置を行わなければならないのです。

記事1:エボラウイルス感染症(エボラ出血熱)の原因―エボラウイルスとは
記事2:エボラ出血熱の致死率は70%?エボラウイルス感染症の高い致死率
記事3:エボラウイルス感染症(エボラ出血熱)が空気感染する可能性は?
記事4:エボラウイルス感染症(エボラ出血熱)の診断方法
記事5:エボラ出血熱の予防法と治療法
記事6:エボラウイルス感染症(エボラ出血熱)を通じて、皆さんに知ってほしいこと

  • ダートマス大学 Clinical Assistant Professor of Medicine

    青柳 有紀 先生

    国際機関勤務などを経て、群馬大学医学部医学科卒。米国での専門医研修後、アフリカ中部に位置するルワンダにて、現地の医師および医学生の臨床医学教育に従事。現在はニュージーランド北島の教育病院にて内科および感染症科コンサルタントとして勤務している。日本国、米国ニューハンプシャー州、およびニュージランド医師。

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