近年急速に増えた「PET」という検査。耳にされたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回の記事ではこれがどのような検査なのかについて、横浜市立大学放射線医学教授・横浜市立大学付属市民総合医療センター病院長であり日本核医学会理事長を務められている井上登美夫先生に、わかりやすくご説明いただきます。
日本核医学会・アイソトープ協会の調査によると、2002年以降、急激にPETの検査件数が増え、現在は全国で50万件を超える検査が1年間に行われています。CTやMRIに比べると少ない数ですが、着実な増加傾向にあります。精密検査でPETを受けることになった、という話をみなさんが身の回りで聞くことも珍しくなくなったのではないでしょうか。今回は3回にわたって、PETがどのような検査で、何を調べることができるのか、検査を受ける際の注意点などについてお話ししていきます。
ここでは特に、PETのなかでも代表的な検査であるFDG-PETについてお話しましょう。
FDG-PETでは、FDGというブドウ糖によく似た物質を使って検査をおこないます。人間の身体には食物などからブドウ糖を取り込み、分解(代謝)してエネルギーに変え、細胞の中に取り込む仕組みがありますが、FDG-PETはその仕組みを利用した検査です。
FDGの化学構造は、骨格はほとんどブドウ糖と同じですが、F-18という放射性同位元素が含まれるためγ線(放射線)を発します。普通のブドウ糖は信号を出しませんが、FDGはブドウ糖に似た構造を持っていてγ線という信号を出す物質だと考えてください。
FDGは、注射すると血液を経由して細胞の中に入り込んでいきますが、ブドウ糖と同じ構造をしているため、途中まではブドウ糖と同じ仕組みで代謝がすすんでいきます。
普通のブドウ糖が代謝されるとエネルギー源(ATP)となり、細胞の中で消費されますが、FDGは構造がわずかに違うため、最後まで分解されずに細胞の中にとどまるのです。FDGは閉じ込められた細胞の中からγ線を発しますので、それを検出すればFDGのたくさん集まっている場所がわかります。
ここで、がん細胞は正常な細胞より多くブドウ糖を取り込むという特徴があります。この特徴を生かし、FDGが多く検出される場所にがんがあると突き止めることができます。
また、場所だけでなく、がんの悪性度も把握することができます。増殖が活発ながん細胞はブドウ糖を多く消費するので、そのためにFDGの代謝も多く起こります。つまりFDGが強く集まるがんは増殖能力の高い、悪性度の高いがんだということができるのです。
上でお願いしたとおり6時間以上の空腹を保った状態で来ていただいたら、まずFDGを注射します。それから1時間安静にして、血液から組織へFDGが移動していく時間を稼ぎます。時間がたつとブドウ糖は細胞内で代謝されますが、FDGは細胞内で代謝が進まず、F-18が細胞の中にとどまりますので、腫瘍とそれ以外の部分のコントラストが出てきます。
撮影時間は装置の性能によって違います。通常の場合ですと、20分から30分ぐらいの撮影時間です。CTやMRIと違い、行ったらすぐ撮影できる検査ではないのです。
少し時間はかかってしまいますが、CTやMRIとは違った切り口でがんを見つけることができ、現在はがんの診療に欠かせない検査となっているFDG-PET。次回はPETでがんのどのような情報をとらえることができるのかについてお話しします。
医療法人 沖縄徳洲会 湘南鎌倉総合病院 先端医療センター センター長
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