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インタビュー

公開日 : 2015 年 10 月 06 日
更新日 : 2017 年 05 月 08 日

セラノスティクスとは―診断・治療が同時に行える、効率的ながん治療

横浜市立大学付属市民総合医療センター病院長 放射線医学教授 日本核医学会理事長
井上 登美夫先生

「セラノスティクス」という言葉をご存知でしょうか。がん診療において、診断と治療をあわせて行うこの方法には、大きなメリットがあります。今回の記事では、このセラノスティクスについて、横浜市立大学放射線医学教授・横浜市立大学付属市民総合医療センター病院長であり日本核医学会理事長を務められている井上登美夫先生にお話をうかがいました。

セラノスティクスとは?

がんの治療では、治療を始める前に様々な検査・診断を行い、治療法を決定していきます。セラノスティクス(Theranostics=治療Therapeutics+診断Diagnostics)とは、この診断と治療をあわせて行う考え方や、その手法のことです。例えば、検査のために薬剤を摂取してもらうことがありますが、その薬が同時に治療効果も持っているような場合です。

従来のがん診療に比べ、セラノスティクスには様々なメリットがあります。第1回として、まずはその仕組みについて簡単にご説明します。

分子イメージングとは?

セラノスティクスには、「分子イメージング」という検査の技術が欠かせません。
私たち人間が活動するために、身体の中では絶えず化学反応が起こり、物質が移動し、変化し続けています。がんをはじめ、体内に病気ができると、身体の中の物質が特徴的な動きをすることがあります。たとえばCTなどでは見つけづらいがんがある場合にも、そういった特徴的な流れを検知することでその場所を突き止めたり、進行度を把握したりすることができます。

分子イメージングは、体内に摂取した物質(分子)が体内でどう動いているか、その流れを映像化して把握し、そこから診断に役立つ情報を得る技術です。例えば超音波、CT、MRI、SPECT、PETなど、よく知られている画像検査を用いて行うことができます。とりわけ、最も簡単に実際の診療で応用することができるのはPET-CTです。

この10年間にも、分子イメージングのための多くのPETの検査薬が開発されてきました。残念ながら保険診療の適用となっていて、実際の診療で広く使われているのはFDGという薬剤を使ったPET検査(FDG-PET)だけですが、米国でも我が国でも、国をあげてこの分野の研究が強化されているので、今後も多くの有用な検査薬が開発され、実際の医療現場でも使用されるようになると期待されます。