日本ではがんで亡くなる方の割合は3人に1人といわれています。残された時間をどこでどう過ごしていくかという問題は、私たちにとって大きなテーマになりつつあります。
この記事では、横浜市立大学大学院医学研究科 がん総合医科学主任教授の市川靖史先生に、緩和ケア病棟や緩和ケアチームについてお話をうかがいました。
厚生労働省から緩和ケア病棟としての承認を受けている病棟で、医療費は治療の内容にかかわらず定額(一日あたりの金額が決まっている)です。医療保険が適用されます。
緩和ケア病棟では、患者さんの病状が急変した時も迅速な対応をとることができるよう、付き添うご家族の休息や一時寝泊まりするための部屋を備えているところが多くなっています。また、患者さんができるだけ自宅にいるときと同じように過ごせるよう、簡単な調理をして好きなものが食べられるなど、自由に使えるフリースペースが用意されているところがあります。
医師やスタッフは、患者さんの容態をチェックするだけのために部屋を訪れるわけではありません。話したいことや訊きたいことがある方とは長話をすることもあります。不安を解消し、おしゃべりを楽しんで気晴らしをするといった「普通のこと」ができる環境で過ごしていただけるよう配慮します。
病状の進行に伴う痛みや不眠、倦怠感などさまざまな症状に対応しますが、薬を投与して熱や血圧を下げることはありません。呼吸がしづらく息苦しさを訴えるような場合には酸素を吸っていただくこともありますが、人工呼吸器の装着や心肺蘇生など、延命のための措置は行いません。一日のうちで眠っている時間がだんだん長くなり、自然な状態で最期を迎えられるよう見守ります。
緩和ケア病棟には医師を中心にさまざまな役割を持つスタッフがいて、ひとつのチームを構成しています。
その他、できるだけ身体の機能を維持しながら生活を送れるようリハビリテーションを行う場合には、理学療法士や作業療法士がサポートします。また、音楽療法士や言語療法士が生活の質の維持・向上をお手伝いすることもあります。
緩和ケア病棟を持たない医療機関であっても、緩和ケアの専門チームを有しているところがあります。横浜市立大学市民総合医療センター 化学療法・緩和ケア部では、主治医や担当看護師との連携のもと、緩和ケアチームのメンバーが外来や病棟にうかがって痛みやその他の症状を和らげるために協力して診療・ケアを行っています。また、在宅緩和ケアを希望される方の退院からご自宅へ移られる際のサポートもしています。さらに医療を受ける方全体が高齢化している現状を踏まえ、がん以外の患者さんに対する緩和ケアにも取り組んでいます。
市川靖史先生が最新のがん治療情報を分かりやすく発信している2020年度横浜市民講座『がん放射線治療最前線 in KANAGAWA』もぜひご覧ください!
横浜市立大学大学院 医学研究科がん総合医科学主任教授、横浜市立大学附属病院 臨床腫瘍科・乳腺外科 部長
横浜市立大学大学院 医学研究科がん総合医科学主任教授、横浜市立大学附属病院 臨床腫瘍科・乳腺外科 部長
日本外科学会 外科認定医・外科専門医・指導医日本消化器外科学会 消化器外科認定医・消化器外科専門医・消化器外科指導医日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡指導医日本臨床腫瘍学会 暫定指導医・がん薬物療法専門医日本癌治療学会 会員日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
北海道大学医学部を卒業後、沖縄県立中部病院を経て現在は横浜市立大学がん総合医科学講座で主任教授を務める。乳がん、消化器がんなど悪性腫瘍の薬物療法を中心としたがん治療全般を専門とする。治験や臨床研究に企画・立案から取り組むとともに、がん治療のもうひとつの柱である緩和医療の充実にも力を注いでいる。
市川 靖史 先生の所属医療機関
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