前の記事(「小児科医療ではなく小児医療」を行うことの重要性)で、小児救急からその後の小児医療を行うためには、地域小児科センターが小児の二次医療圏にひとつあることが望ましいとご説明しました。しかし、この実現にはいくつかの課題もあるのです。今回はその課題と今後の展望について、千葉市立海浜病院の寺井勝先生にお話しいただきました。
日本小児科学会は地域小児医療圏(小児の二次医療圏)に労務環境を整備しながら24時間体制で小児の二次医療を提供できる地域小児科センターの設置を提唱しています。医療施設が充実している地域では可能なことですが、地方によっては、「24時間対応可能な地域小児科センター」を実現するために課題となることがあります。それは、病院によって備えている機能(診療科)にばらつきが生じているということです。
たとえば、地域においてこどもの病気の治療に中核的な役割を果たす地域小児科センターでは、新生児医療や救急医療の充実が求められます。しかしながら、産科医の不足が顕在化(それまで隠れていたものが表に出てくること)したり、救急医療の後方支援となる脳神経外科や整形外科、形成外科が整備されていない病院も少なくありません。また、先天性心疾患のような生まれつきの心臓病をもった成人をケアできる周産期(産科)の充実が備わっていないケースもあります。
先天性心疾患をもった妊婦さんについては、心臓に異常がない妊婦さんよりも出産時に心臓(循環器)に注意を払う必要があります。そのため、循環器内科・心臓外科・産科や新生児科が充実している必要があります。つまり、病院によって備えている専門性(診療科)や機能が異なるため、ひとつの病院ですべてを診ることが難しい場合があるということなのです。このような総合的な医療機能は、次の記事「総合病院の重要性と総合病院のなかの小児医療の役割」で述べる総合病院が担うことになります。
さまざまな課題がありますが、ひとつの病院で胎児から成人まで診てくれるような施設があるということは、地域の住民の安心につながるのではないかと考えています。今後も時代とともに診療科や病院のあり方などは変化していくでしょう。ですが、これらの背景には住民によい医療を提供したい、安心して暮らしてもらいたいという想いがあります。そのために今後も、小児の医療体制の構築に尽力していきたいと考えています。
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千葉市立海浜病院 小児科 、千葉市病院 前事業管理者
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