インタビュー

総合病院の重要性と総合病院のなかの小児医療の役割

総合病院の重要性と総合病院のなかの小児医療の役割
寺井 勝 先生

千葉市立海浜病院 小児科 、千葉市病院 前事業管理者

寺井 勝 先生

この記事の最終更新は2015年12月04日です。

地域の住民が安心して生活するために、総合病院とよばれるすべての年齢に対応できる病院が三次医療圏にあることが望ましいと、千葉市立海浜病院の寺井勝先生は考えていらっしゃいます。本記事では、総合病院と救急医療・母子医療について、寺井先生にお話しいただきました。

近年、成人に達した小児が小児期から背負い続けている病気に対応できる医療機関が必要な時代となってきました。たとえば、小児の心臓病である「先天性心疾患」が挙げられます。先天性心疾患をもって生まれると、かつては大人まで成長することが難しいということがありました。しかし現代では医療の進歩により、先天性心疾患をもったこどもも成人まで成長し、女性であれば出産まで可能となってきました。つまり、小児の病気が成人の病気へと移行しているのです。

そういった意味では、ジェネラルホスピタル(総合病院)のなかに小児医療部門や、小児期の病気をもって成人となった女性が安心して出産できる周産期部門も備わっていることが望ましいでしょう。このような総合病院では、小児から成人へのスムーズな移行が可能となり、胎児から高齢者まで幅広い方が頼れる基幹病院となるのではないでしょうか。こうした病院が三次医療圏にひとつ、人口の多い自治体では二百万人口にひとつあることが望ましいと考えています。

総合病院は、特殊な救急診療も行える病院でありたいです。脳梗塞を例に挙げます。脳梗塞治療の急性期治療では、tPA治療(血栓溶解療法)のように、脳に詰まった血栓を溶かして血流の確保が行われます。この治療は発症してから出来るだけ早く実施することで治療効果が高まると考えられています。また、どこの病院でも出来るという治療ではありません。つまり、なにかが起こったらこの病院に行けば安心と思われる病院が「ジェネラルホスピタル(総合病院)」と呼ばれるものになるのではないでしょうか。小児医療の視点で言えば、日本小児科学会の提唱する地域小児科センターとなりうる病院が総合病院の機能を持っていれば理想的です。

またこのような総合病院の存在は、救急車の搬送時間にも影響してきます。大都会などは多数の病院が存在するため、どの病院に搬送すべきか、対応可能な病院を探すのに時間がかかるケースも少なくありません。そこで、どのような場合でも対応可能な総合病院が適切に配置されていれば、スムーズな搬送が可能となるのではないでしょうか。

上記のような総合病院は必ずしも大学病院でなくてよいと考えています。むしろ、先進的で高度な医療、たとえば再生医療遺伝子治療は総合病院の役割というよりは基礎研究の基盤を持つ大学病院がおこなうことができる医療ではないでしょうか? 総合病院で救急医療や専門的治療を受けられる、一方、再生医療や移植医療は大学病院で受けられる、そんな医療連携がどこの自治体でも出来るそんな時代がやって来て欲しいものです。

今後は、「小児救急も診られる」・「小児期からの病気をもった妊婦が出産できる」・「高齢者も診られる」というような、地域に必要とされる総合病院をつくることに引き続き尽力していきたいと考えています。また、総合病院のなかの小児医療体制の構築にも携わっていきたいと考えています。総合病院をつくるためには、基幹病院の勤務医や地域の医師会医(開業医)だけでなく、行政の協力や市民の働きかけも重要になります。多くの住民が愛着をもち、誇りに思う「おらが町の病院」が日本全国で生まれることを期待します。

 

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