インタビュー

これからの放射線科医:専門医制度

これからの放射線科医:専門医制度
西尾 正道 先生

北海道がんセンター 名誉院長

西尾 正道 先生

この記事の最終更新は2015年12月10日です。

放射線科医は、専門医制度に基づいたスペシャリストです。診断医と治療医に区別されており、それぞれ役割が分担されています。しかし以前から放射線科医は少なく、その育成が急務となっています。放射線科医はどのようにしてスペシャリティを獲得していくのでしょうか。そして現在、何を行わなければならないのでしょうか。独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター名誉院長の西尾正道先生にお伺いしました。

現在の日本のがん治療は以前よりは良くなっていますが、バランスが崩れてしまっている状態にあります。がんに対しては手術が第一選択として挙げられ、多くの抗がん剤を使用し、放射線治療は上手に活用されていません。放射線治療で十分に治療ができる病態のものですら切り取られてしまっています。

たとえば放射線治療のメリットを最大限活用できる頭頸部腫瘍においても、切って治療する(手術)体制がとられているのが今のがん治療です。このように、がん治療の三本柱は決して同じ太さではなく、手術と抗がん剤の二本柱に放射線治療が付属しているような体制がとられてしまっています。その理由の一つは、放射線治療専門医が少ないからです。

今後、放射線治療の対象となる患者さんは増加していくと考えられます。しかし現状、放射線医療はどちらかというと軽んじられている傾向があり、医学生に対する放射線治療の講義時間があまり設けられていません。そのため、学生が放射線治療を理解しきれていないのが事実です。それゆえに放射線治療を十分に理解した医師が育たず、また放射線腫瘍医(治療医)の人手不足も免れません。

この危機を防ぐためにも、医学部教育段階で放射線治療を十分に学ばせることが必要だと私は考えています。また、放射線診断学と放射線治療学を独立した講座に分離し、各人材をしっかり育成することも大切です。

では、放射線科専門医とはどのようなものなのでしょうか。

2006年度より日本医学放射線学会専門医制度が改訂され、放射線専門医の称号が分離して認定されるようになりました。

放射線科専門医になるためには、放射線科専門医修練機関認定施設で2年以上研修を積み、一次試験を受験してから二次試験を受験します。従来、放射線科専門医は一次・二次双方の合格をもって放射線科専門医と認定されるシステムでした。しかし2006年度の改訂により、一次試験合格者が「放射線科認定医」、二次試験合格者は「放射線診断専門医」または「放射線治療専門医」に分離して認定されることが決定したのです。

以前は、診断だけでなく治療も行っていた放射線科医もいましたが、専門性が高くなり、診断医と治療医に分かれました。上記の実情に対応して放射線科の専門制度が変化し、どちらかにスペシャリティを置くようにされたのです。

診断医は、画像検査から病気があるか否かを診断する技術に長けています。一方治療医は、放射線の当て方などを考えて、実際にがんを治療する放射線科医です。

診断と治療に分化した放射線科専門医の養成は、今後のがん治療に向けて非常に重要な課題といえます。がん治療専門医の育成にむけて、多様化・複雑化するがん治療法に対応し、知識を身につけるために新たな研修システムを構築する必要があると考えています。

修練機関の問題もあり、すぐさま放射線腫瘍医が育つわけではありません。しかし、外科医、内科医を含め、がん治療医の全員が放射線治療を理解しておくことも重要であるといえるでしょう。