インタビュー

診察をする放射線科医。相談室や市民会も執り行い、がん患者と向き合う

診察をする放射線科医。相談室や市民会も執り行い、がん患者と向き合う
西尾 正道 先生

北海道がんセンター 名誉院長

西尾 正道 先生

この記事の最終更新は2015年12月12日です。

自分ががんであるとわかった場合、誰であっても心身ともに大きなダメージを負うことは予測できるでしょう。患者さんのために、がんに対する治療はもちろん、心の不安を取り除くサポート体制を築くことも非常に重要です。独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター名誉院長の西尾正道先生は、特殊な形のがん相談外来や患者会に携わり、あらゆる角度から患者さんに向き合っていらっしゃいます。西尾先生の活動についてお聞きしました。

『「手術室に入る放射線科医」常に現場に出ていた放射線治療医として』でも述べましたが、放射線科医としては珍しく、自分で内視鏡検査をしています。頭頸部がんの診察では額帯鏡も使います。

放射線医ではありますが、耳鼻科、消化器内科、婦人科…各専門医が行う診察も、基本的には自分で行っています。放射線をどのように当てるかを決めるためにはまず局所所見(医学的判断)が最も基本的な情報なのです。

世界的にはOECD諸国の年間平均外来患者診察数が2400人なのに対して、日本は7000人を超えています。これでは日本は3分診療とならざるを得ませんし、医師の過重労働が続いています。

前述のとおり、各診療科の専門医のお力もお借りしながらでも私はできるだけ自分で診察し、最後まで経過観察する姿勢で診療にあたってきました。基本的な姿勢として、誠意と熱意があれば医師と患者の信頼関係が構築できます。

院長に就任した2008年からは、紹介状も検査資料も一切不要の「がん何でも相談外来」を設け、患者さんの話を聞き、今後の治療や対応についてアドバイスする外来を行っています。

がん何でも相談外来」とは、患者さんが既存の診察では聞きづらかった・聞くことも躊躇してしまうことだった内容などを聴き、具体的なアドバイスをするものです。何らかの事情でセカンドオピニオンを受診できない方を対象にしていますが、そのような方々の場合、主治医との関係を壊したくないなどの不安を持っており、紹介状を書いてもらうことを躊躇する方が多いように感じられます。がん何でも相談外来の場合は、前述のとおり、紹介状も検査資料も不要ですから、気軽に利用することができます。

もう一つ関わっている団体が、「市民のためのがん治療の会」というものです。

ここでは、「がん何でも相談外来」のようなセカンドオピニオンのサポートはもちろん、がん治療や放射線治療の情報を提供することを目標としています。

放射線治療はいまだに誤解の残る治療法です。原爆投下や様々な事故から、放射線は危険なものだという固定概念がまかり通ってしまっている現状があります。

そこで「市民のためのがん治療の会」は、専門家が適切に相談に応じることで正しく放射線の情報を伝え、正しく放射線治療を理解してもらうように活動しています。放射線治療専門医の少なさや教育の問題等、放射線医療の現状の問題点を改善するため、またがん患者さんにとって放射線治療という選択肢があることを知ってもらうため、「市民のためのがん治療の会」の活動を支援し続けています。