インタビュー

一般の方にもできる蘇生法、BLSとは

一般の方にもできる蘇生法、BLSとは
近藤 豊 先生

順天堂大学大学院 医学研究科 救急・災害医学講座 主任教授

近藤 豊 先生

この記事の最終更新は2015年12月11日です。

BLS(一次救命処置)は非常に大切で、心肺停止の患者さんを救命できる可能性があります。しかも道具を必要としない救命処置ですので、いつでも実施できます。この項では「一般の方にもできる蘇生法、BLSとは」について、ハーバード大学医学部外科学講座研究員の近藤豊先生にお話頂きました。

何らかの原因で呼吸が止まる、心臓が止まるなど危機的状況に陥り、いったん生命の維持が困難と考えられた方が再び生き返ることを「蘇生」と呼びます。

また、蘇生のために緊急で施される処置のことを「蘇生法」または「心肺蘇生法」といいます。この蘇生法、実は古代においては死後冷たくなった患者を温める“温熱療法”が試みられていました。一方、現在の蘇生法の基本である“胸骨圧迫(心臓マッサージ)”、“人工呼吸”、“電気的除細動(いわゆる電気ショック)”が最初に提唱されたのは1960年になります。つまり、蘇生法の歴史はまだ55年しか経っていないのです。

蘇生が必要な状態とは、何らかの原因で呼吸が止まる、心臓が止まる、また生命の維持が困難と考えられる場合です。一般の方であれば、どのようにこの状態を見極めるのか難しいと思っている方も多いのではないでしょうか。そのため、まずは蘇生が必要であるかどうか確認する方法をお話します。

倒れている方を発見したら周囲の安全を確認して、「反応がない」かどうかをチェックします。反応がない場合は一刻を争うので、緊急通報と自動体外式除細動器(以下AED、エー・イー・ディと読みます)を持ってくるように周囲に呼びかけましょう。

次に「呼吸がない、もしくは正常な呼吸ではない」かどうかを確認します。呼吸がない、もしくは正常な呼吸ではないと判断されれば蘇生法が必要となります。逆にいえば、倒れていても反応がある場合や声を出す場合は心肺停止状態ではありません。

BLS(Basic Life Supportの略、ビー・エル・エスと読みます)とは、急に人が倒れたりした場合、救急隊や医師に引き継ぐまでの間に、その場に居合わせた方が行う応急処置のことです。すなわち、その場にいる方は、前述した蘇生が必要な状態の方に対してBLSを行う必要があります。

蘇生が必要と判断したら、胸骨圧迫と人工呼吸を行います。胸骨圧迫から先に開始をして、その後に人工呼吸をするという順番です。割合は胸骨圧迫30回を行った後に、人工呼吸を2回行うペースを目安にしてください。胸骨圧迫については、速さは100〜120回/分、深さは5〜6cmを目標にします。また、人工呼吸では息を送り込んだ後、軽く胸が上がっているかを確認しましょう。

時折、吐物などで傷病者の口が汚染されていると人工呼吸が躊躇われますが、その際は胸骨圧迫のみでも構いません。これは胸骨圧迫だけでも、人工呼吸をしない場合と同等以上の可能性があるとの報告があるためです。

BLSでは、胸骨圧迫を絶え間なく実施することが最も重要です。これは胸骨圧迫をすることにより、他動的に血液を循環させられるため、脳の障害を防いだり、心臓を再始動させることが期待出来るからです。そのためにも胸骨圧迫をするときは出来るだけ交代要員を確保することが望まれます。疲れてくると質の高い胸骨圧迫を実施することは困難であるため、発見者の方は周囲の方に積極的に声をかけるようにしましょう。

本項ではAEDの使い方についてご説明します。

AEDが到着したらまずスイッチをオンにしてください。機械本体の立ち上がりに多少の時間がかかるため、素早く行うことを心がけます。スイッチをオンにした後は音声が流れますので、その指示に従えば医療従事者でなくても操作できるようになっています。

音声は、まずパッド(電極)を体に装着するように指示します。その後AEDが自動的にショックの必要性を解析し始めます。もしもショックが必要であれば、ショックボタンを実際に押下します。この際必ず、倒れている方の体に誰も触れていないことを確認してください。もしも触れていた場合には、その方にもショックを施すことになってしまいます。この注意点もAEDがきちんとアナウンスしますので、そのとおりに従えば問題なく実施できます。

以上、一般の方にもできる蘇生法、BLSについて述べましたが、日頃から練習しておくと万が一その場面に遭遇したときも速やかに行動することができます。全国の様々な施設で一般者向けに講習会が実施されていますので、この機会に是非参加してみてはいかがでしょうか。

    実績のある医師をチェック

    Icon unfold more