がん治療を受けた人が、がんが再発していないかを確かめるためならばどんなことでもしたいと思うことは、もっともなことです。
がんが再発していないかを調べるためには、何年にもわたり経過を観察する必要があります。再発してないという確信をより強固にするために、PET検査という画像検査をする医師もいます。PET検査はCT検査とセットになる場合が多く、この一連の検査で身体のどこかでがんが進行していないかを調べられます。
しかし、これらの検査は必要が無い場合もあり、検査をすることで生じるリスクが、検査をすることの利益を上回ってしまう場合もあります。その理由を以下に述べます。
多くのがんにおいて、上記の検査をすることが余命やQOLの改善に繋がることはありません。十分な理由もなく検査が行われると、それはかえって患者の不安、誤診や誤った警告(※実際には病気ではないが、検査では陽性となるなど)を招き、不必要な処置や出費の増大にもつながってしまいます。
大抵の場合、身体の状態を注視するためのより良い方法が存在します。
・がんの再発を思わせる症状に気をつけること(「アドバイス・コラム」参照)。
・問診と身体診察を含めた診察を、定期的に受けること。
・がんの種類によっては、簡便な検査が有用です。たとえば、乳がん治療後の女性に対するマンモグラフィー検査などが挙げられます。
・身体の状態に応じて、どのような検査をいつ行ったらいいのか、主治医に確認してください。
PET検査やPET-CT検査は、がん治療後の方に対してストレスを与えることになりかねません。これらの検査により、些細な異常が見つかることがありますが、それをきっかけに追加の検査や、生検・手術といった処置が行われることもあるのです。
また、PET検査、特にPET-CT検査により、身体は高レベルの放射線に被ばくすることになります。放射線の影響は、生涯にわたって身体に蓄積し、がんのリスクを増大させます。有用性があるという医学的な根拠が示されない限りは、これらの検査を何度もするべきではありません。何度も検査することが有用であるかを、医師に確認してください。
あるアメリカの医療センターでは、PET-CT検査をするのに7000ドル(日本円で約94万円)以上の費用がかかります。この費用には、誤った警告のせいで、その後に追加される可能性がある検査や処置の費用は含まれていません。保険会社の中には、がん治療を終えた健康な患者への定期的な(サーベイランス)PET検査には費用を支払わない会社もあります。
では、がん治療後のPET検査が有用となるのは、どのような場合か。
PET検査やPET-CT検査が有用となるのは、症状、身体所見、その他の検査から、医師ががんの再発を疑った場合などです。また、進行がんに対する直近の治療効果を判定する際にも推奨される場合があります。
がんが再発していないかを確認するため、定期的に主治医の診察を受けましょう。もし再発があれば、可能な限り速やかに治療を受けましょう。
以下に関する説明を求めましょう。
・各検査が、どの程度の頻度で必要なのか。
・がん再発を思わせる症状には、どのようなものがあるか。(以下も参考にしてください。)
次のような症状や、原因に思い当たりのない体調の変化があれば、主治医に相談してください。
・しこりや、瘤(こぶ)、腫れがある
・初めての、もしくは普段はない痛みがある、痛みが引かない
・出血したり、あざができやすくなった
・悪寒、発熱
・頭痛
・息切れ
・便や尿に血が混ざる
・吐き気、嘔吐、下痢、食欲減退(食思不振)
・原因不明の体重減少
・長引く咳
・皮ふが黄色くなる
以下のように生活習慣を改めることで、健康を維持することができます。
禁煙:禁煙外来に行ったり、ニコチン代替製品や薬、あるいはこれら全てを試してみてください。
減量:体重が増えすぎると、がんによっては再発リスクが高まります。糖尿病や心疾患にもつながります。
定期的な運動:1週間に2時間半、もしくは1日あたり30分を目標としましょう。ウォーキング、水泳、サイクリング、テニス、楽しめるものならなんでも構いません。
植物性食品の摂取:果物、野菜、穀物をたくさん摂りましょう。赤身肉や加工肉の代わりに、魚、鶏肉、豆類を摂りましょう。
※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。
翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 学生メンバー・大阪医科大学 荘子万能 佐竹
監修:小林裕貴、徳田安春先生
群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 客員教授、筑波大学 客員教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of Hospital General Medicine 編集長
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