朝起きあがったときにクラクラとめまいがしたり、短いめまいを繰り返したりしている場合、めまいの中でも起こる頻度が高い「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」かもしれません。ここでは、BPPVがどのような病気なのか、原因や症状、治療について新潟大学耳鼻咽喉科学教授、堀井新先生にお話頂きました。
良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、特定の頭の位置をとるか頭の位置を変えると、周囲がぐるぐると回るような感覚が生じる病気です。
具体的な症状の特徴としては、
・起床時にクラクラするようなめまいが起こる
・寝返りをうったり、頭や体を動かしたりしたときにめまいが起こる
・一回一回のめまいの継続時間が短い(数十秒程度)
という症状が挙げられます。
起床時や睡眠時だけではなく、洗髪などで下を向いたときや、洗濯物を干すときに上を向いた頭位でめまいが誘発されることが多いです。めまいに伴って吐き気や嘔吐の症状が出る場合もありますが、耳の聞こえが悪くなったり、意識や言葉、運動の障害を伴うことはなく、良性であるため基本的に大きな心配はいりません。
めまいを伴う疾患全般に女性の患者さんが多いので、BPPVに限ったことではありませんが、女性の発症が多くまた高齢者にも多い疾患の一つです。
BPPVの原因は頭部の運動を感ずる内耳の半規管と言われる管の中に、耳石が紛れ込むためと考えられています。耳石は普段耳の奥にある重力を感知する前庭(耳石器)という場所にある、小さな砂粒のようなカルシウムの結晶です。この耳石が外傷など何らかの理由で剥がれ落ち、それが動くことで半規管を刺激してめまいが起こるのです。
半規管には、前半器官・後半器官・外側半規管と3つあり、BPPVが起きるのは主に後半器官と外側半規管です。ほとんどが特発性といわれており、外傷後や長期寝たきりで臥床している方などにおこりやすいといわれています。
たとえば、長期間寝たきりになっていると常に後半器官が下方に存在するようになるので、そこへ耳石が溜まってしまったまま動かなくなります。それが原因となりBPPVを発症するのです。
また耳石もカルシウムであるため、骨粗しょう症との関連も考えられています。
検査は主に、眼振の検査(目の動きの検査)と聴力検査です。具体的には、特殊なゴーグルをかけて、実際に寝た状態で首を回して、めまいの症状が出るかを調べます。また、BPPVでは難聴になることはあまりないので、陰性所見(BPPVでは認められない所見)として聴力の検査を行うこともあります。
最後の症状が現れた日から1週間程度経って検査を行うと、眼振症状が現れないこともあります。しかし、その場合でも再びめまいが起こる可能性はあるので、治療法を聞いておくことが大切です。
BPPVの治療法としては、以下の3つが挙げられます。
「浮遊耳石置換法」は、浮遊している耳石を元の位置に戻すというリハビリです。
これは「めまい体操」と呼ばれており、まず左右のどの半規管でBPPVが起きているのかを診断し、起こっている半器官に応じた体操のやり方を患者さんに説明し、実践してもらった後、自宅でも同じように体操を行ってもらう方法です。
BPPVに関しては物理的なことが原因で起こっているため、基本的に「薬で治す」ものではないと考えた方がよいです。ただ、めまい感を取るために薬が処方される場合ももちろんあります。
BPPVで手術を行うケースもありますが、眼振検査で症状を確認できた患者さんの中でも3%程度の割合です。手術を行う場合、1年以上再発を繰り返していたり、ずっと眼振が止まらないという症状がある方の中でも、日常生活の支障度や社会的な条件を考慮したうえで判断しています。
手術は、「半規管遮断術」と呼ばれる手術を行います。この手術は、半規管をつめて内リンパの対流や耳石のような物質の移動が起きないようにする方法です。大きな危険があるものではないですが、内耳に触れるため、難聴などのリスクもあります。手術を受ける場合には、そうしたリスクも踏まえた上での決断が必要です。
BPPVは、自然経過でも2週間程度で治ると言われています。しかし最初に右の半規管で起こったものが、次は左の半規管で起こるということもあります。これは手術を行った場合でも同じことがいえ、手術を行った半規管でのBPPVは治ってもまた別の半器官で起こるという可能性があるのです。
もしおさまったものが再び起きた場合、「めまいがしないように」と動作が遅くなり、慎重になってしまいがちですが、それはめまいの改善に逆効果となります。めまいが起こることで耳石が元に戻る可能性もあるので、まずは普通の生活を2週間送ってみて、それでも治らない場合は、再び診察を受けることが大切です。
新潟大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 教授
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