インタビュー

これからの周産期医療の課題 産婦人科医・光山聡先生が患者さんに伝えたいこととは

これからの周産期医療の課題 産婦人科医・光山聡先生が患者さんに伝えたいこととは
光山 聡 先生

東京都立多摩総合医療センター 産婦人科非常勤医師(前産婦人科部長)

光山 聡 先生

この記事の最終更新は2016年04月21日です。

記事4『妊婦さんを救命するためのシステムづくり―スーパー総合周産期センターの役割』では、東京都における周産期医療の向上をお話ししましたが、現在でもまだその課題は残っています。特に大きいと考えられるのが、地方での産科医療の供給不足・すなわち地方の産科医の不足です。今後の周産期医療の課題を踏まえ、妊婦の方々に対するメッセージを、東京都立多摩総合医療センター 産婦人科部長の光山聡先生にお話ししていただきました。

東京では記事4『妊婦さんを救命するためのシステムづくり―スーパー総合周産期センターの役割』で述べたようなスーパー総合周産期の体制が出来上がってきていますが、地方にはまだ多くの課題が残っています。

東京都には大学病院や産科施設が多くあり、他県に比べ産婦人科医が多く勤務しています。東京都はその面では恵まれているのですが、地方で同じような体制が築けるかというと厳しいところがあります。

周産期専門医一覧を見ると、周産期専門医がひと県に数人であるところも複数県あり、そもそも産科医療の医師自体が少ないことが分かります。このような現状下で、全国各地に東京都のスーパー総合周産期のようなシステムを作っていくのは、現時点では難しいのではないかと考えています。

東京都だけに限定すれば周産期医療体制整備が向上しているということができますが、他県については同じことがいえるとは限りません。地方では周産期医療体制整備の向上の必要性を痛感しながらも、具体的には実現できないもどかしさを感じていらっしゃる方が多いと思います。

一番の問題点は、麻酔科医が不足している点です。

産科救急に関して、産科医だけが多くいればいいという問題ではありません。緊急対応には手術が必要なことが多く、手術室の整備はより求められてくることになります。インフラ的な部分がしっかりと整っていなければ、搬送の依頼があっても手術室が満室で受け入れられないという事態が発生しかねません。3次医療施設の総合病院であれば、手術室も産科だけのものではありませんし、そうした病院には産科以外でも救急搬送されてくる方がたくさんいらっしゃいます。麻酔科医の充実は早期に望まれています。また同様に、救急専門医もその充実が望まれます。

このような状況であっても、最も医師・病院がしてはならないのは、妊婦さんとその子どもの命を救えなかったということです。

たとえば妊婦さんが「お腹が痛い」と感じたとき、人によっては「少しくらいの痛みであるからまだ我慢できる」といって病院に来るのを遠慮してしまう方がいます。確かに、単純な腸の動きでも痛みは生じますし、便秘の場合でも痛みはあります。「お腹が硬くなっている」というとき、これは常位胎盤早期剥離(詳細は記事1『常位胎盤早期剥離とは―分娩前に胎盤が剥がれてしまう重症疾患』)の症状ですが、お腹が硬くなっている妊婦さんがみなさん常位胎盤早期剥離というわけではありません。とはいえ、少しお腹が痛くても心配無用とはいえません。自己判断で解決してしまうことは避けてほしいと考えています。

「異常な痛み」といっても、自覚症状は人によって異なります。同じ痛みの度合いであっても、非常に痛がる方もいれば、あまり痛いと感じないもしくは我慢してしまう方もいます。この微妙な点を判断するのは難しいところです。だからこそ検査が必要だと考えられており、そのために医師に相談し、医師に判断してもらうことが大切なのです。

妊婦さん自身も、自分で正常のお腹の硬さ、通常レベルの痛みの程度を知るため、日ごろから自分のお腹を触って知っておくことが大切です。いつもの様子を頭に入れておき、それでも今日は変に硬いと感じるようであればそれは危険なサインといえます。

痛みの度合いも、切迫早産や常位胎盤早期剥離であれば「ちょっとした痛み」というものではありません。ある程度通常では想定できないほど強い痛みの場合は、我慢しすぎて赤ちゃんが亡くなるのを防ぐためにも、早急に医療機関に相談してください。

妊婦さんへの保健指導でもパンフレット等を渡して啓蒙活動を行ってはいますが、それでも夜に病院へ行くのを遠慮してしまう患者さんがいらっしゃいます。私は、ぜひともそこは我慢しないで、いち早く病院に来ていただきたいと思っています。

 

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