インタビュー

国立がん研究センター中央病院におけるIVRセンターの開設について

国立がん研究センター中央病院におけるIVRセンターの開設について
荒井 保明 先生

国立研究開発法人 国立がん研究センター 理事長特任補佐(前中央病院長)/ 中央病院放射線診断科...

荒井 保明 先生

この記事の最終更新は2016年04月14日です。

前の記事「IVRとは何か-がん領域におけるIVR(画像下治療)の有用性」で、IVR治療の有用性についてご説明しました。IVRを多くの方に知ってもらう活動のひとつに、国立がん研究センター中央病院におけるIVRセンターの開設があります。IVRセンターではどのような活動が行われているのでしょうか。国立がん研究センター理事長特任補佐(前中央病院病院長)ならびにIVRセンター長の荒井保明先生にお話しいただきました。

 

がん領域におけるIVR治療を日本でもっとも行っているのが国立がん研究センター中央病院です。しかし、当病院に勤める医師しかIVR治療の有用性を知らないというのは極めて不健全といえます。そこで、2014年の12月にIVRセンターを設立しました。IVRセンターでは多くの医師や医療機関にIVRを知ってもらうために他の病院からの患者さんを受け入れる体制をとっています。

現在、国立がん研究センター中央病院外からの問い合わせは月に20件ほどあります。患者さんから直接電話がかかってくることもありますし、他病院から紹介されて来られる患者さんもおられます。

他の病院からの紹介患者さんには、可能であれば一度来院していただき、画像診断を行ってIVR治療の適応があるかどうかを判断します。適応がある場合には当病院に3日〜1週間程度入院していただき、治療がおわったのちは紹介元の病院に再度通っていただく形にしています。たとえIVRの適応がない場合でも、他の治療が可能であればそちらを説明する場合もあります。

また、当病院にセカンドオピニオンとして来られる方もおられますので、紹介元の病院で標準的な治療がしっかりと行われている場合は、これまでの治療が誤りではないことをしっかりとご説明し、IVRが適応にならない場合でも患者さんが前向きにがん治療に臨めるように心がけています。

IVR治療後に紹介元の病院にお返しするという体制により、紹介元の医師にもIVR治療の有用性を知ってもらえる機会がうまれます。さらに、がん領域におけるIVR治療をさらに磨き、高めるためにもIVRセンターの果たす役割は非常に重要であると考えています。

 

IVRはさまざまな領域で使用されています。たとえば動脈の閉塞性疾患に対するステントなどを用いた拡張術は多くの施設で行われています。また、肝臓がんに対する動脈化学塞栓術も同様です。しかし一方では、がんに伴う症状をとるための緩和的なIVR治療を行っている施設は限られています。

積極的に行っている施設として、愛知県がんセンター中央病院、静岡県立静岡県がんセンター、奈良県立医科大学附属病院、岡山大学病院、がん研有明病院などが挙げられますが、一般の方々がどの施設でどのようなIVR治療が受けられるのか簡単に検索できるよう、病院の一覧表を日本IVR学会のホームページに掲載する取り組みも進めています。

現在運営されているものとしては、がんではありませんが、日本産婦人科学会との連携で作成した「産科危機的出血に対する動脈塞栓術を施行可能な病院」の一覧があります。お産に伴う緊急の出血の際に、IVRを用いた止血術が行える施設をホームページに掲載しています。現在がん領域においても作成を進めており、さまざまな領域にも拡大させていく予定です。

※参考:産科危機的出血に対する動脈塞栓術を施行可能な病院(日本インターベンショナルラジオロジー学会)

 

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