スポーツ障害は、体の同じ箇所に繰り返し力が加わることによって痛みが出たり、動きが悪くなったりする状態をいいます。スポーツ障害は早期に対処すれば大事に至らないため、症状に対してどのような処置をとるかが重要です。滋賀医科大学整形外科学講座教授の今井晋二先生にスポーツ障害についてお話しいただきました。
スポーツ障害はスポーツ外傷とよく混同されます。スポーツ外傷は運動中に一時的に大きな力が加わって組織が損傷した状態を言います。たとえばジャンプの着地に失敗して足首を捻挫したなどで、捻挫のほかに打撲、骨折、肉離れ、じん帯損傷などがあります。これに対してスポーツ障害は、何度も繰り返し強い力が加わる、すなわち高頻度高負荷で力が加わることで肩やひじ、ひざ、足首などに痛みをはじめ、症状が慢性的に続く状態をいいます。運動に伴う筋肉の伸縮やねじれ、骨での衝撃吸収などスポーツが体に与える力は大きく、野球肘、テニス肘、ジャンパー膝をはじめスポーツ名称とともに用いられることもあり「使いすぎ症候群」などと言われることもあります。
軽いものではプレー中に痛みを感じたり、プレー後に痛みが出たりしますが、重症化すると始終強い痛みを感じ、日常生活にも支障をきたしてしまいます。違和感があるまま運動を続けてしまうと長期間休まざるを得なくなったり、重症化して手術をせざるを得なくなると、本来の能力を取り戻すことができなくなってしまうこともあります。
代表的なスポーツ障害に「野球肘」があります。まだ骨・軟骨組織が成長しきっておらず柔らかい小学4年生~中学3年生で、野球の投手を務める子どもに多く発症します。これは病名でいうと「離断性骨軟骨炎」で、関節の表面にある軟骨が損傷する病気です。例えば、少年野球チームのエースが野球肘になった場合、監督など指導者はどう考えるでしょうか。チームの勝利を最優先してエースの選手を酷使すると重症化し、手術でないと治らない状況になることもあります。投手としての選手生命が絶たれることもあります。一方で、長い目で選手生命を考え、肘を酷使しない1塁手や外野手に転向したとすれば、骨・関節の成熟後に再び投手として復帰し、活躍することも可能です。高校2、3年生ごろになって成長軟骨が消失し、骨格が成長しきれば損傷の可能性が減るからです(図1)。
野球肘のことが認知されてきたとはいえ、まだ知らない指導者も多く、投手として肘の酷使を強いられている子どももまだ見受けられます。日本整形外科学会では地域ごとに少年野球チームの監督や指導者を集めた研修会などを開いています。私も昨年、彦根市で、少年野球の指導者を集めて講習会を実施し、早期に気づけば完全に治ること、子どもが痛みを感じているときには投球制限やポジションの転向などの対策を取ることを伝えてきました。
滋賀医科大学 整形外科学講座 教授
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