インタビュー

思春期の性教育-言いにくいと感じる内容こそ真剣に話す

 思春期の性教育-言いにくいと感じる内容こそ真剣に話す
齋藤 益子 先生

帝京科学大学医療科学部看護学科 教授 医学博士

齋藤 益子 先生

この記事の最終更新は2016年06月10日です。

齋藤益子先生は妊娠や出産から避妊などの性に関する啓発活動に積極的に取り組まれています。2015年ではこれらについての講義を、東京と九州や岡山、岐阜などでそれぞれ数回行われました。小学生・中学生・高校生と講義を受ける年代にあわせて内容を変えているとのことですが、教育の現場では現在どのような性教育が行われているのでしょうか。

主に講義でお話しになっている内容と留意されている点、そして性教育の現場を通じて感じられたことについてお話しいただきました。

基本的に保健体育の時間に性や生殖に関する授業が行われることが一般的ですが、性の専門家をよぶことからも、2015年に講義を行った学校では熱心な養護教員の先生方が多かったように思います。

使える時間が60分ほどと非常に限られていますので、妊娠や出産など生命の誕生に関する内容が中心となります。基本的には男女混合の状態で受けていただきますが、女子の月経や男子の包茎やマスターベーションを話題にするときは男女別々にしてお話をすることもあります。

思春期の真っ只中にいる子ども達は、講義中も恥ずかしがったり、ふざけたりするような様子は見受けられませんでした。自分の時も母親はこうやって一生懸命産んでくれたのかと、熱心に写真や出産時の映像を見てくれていました。もちろん養護の先生による熱心な指導や解説が事前にあったから、こうした講義が行えたのだと思います。

たとえば性行為に関する講義を行うときには、中学生を対象としたものと高校生を対象としたものとでは内容を変化させています。

中学生であれば命の誕生や、性交渉は愛する人と行うのだからまだ性行為をしたことが無くても焦らなくて大丈夫というメッセージを送るようにします。避妊について具体的な内容は話しませんが、パートナーができたら避妊について勉強しようと強調します。

一方高校生の場合、約30%は性行為の経験があるというデータもあります。そこで、性行為はできれば20歳になって成人を迎えてからというメッセージとともに、もし性的パートナーができたら、避妊と性感染症の予防について勉強しておこうと話し、性感染症や避妊に関する具体的な内容も取り上げています。コンドームの使用方法などは、希望があれば個別に指導をするようにしています。

「セックス」や「エッチ」など、性交に関する言葉は日常生活では使用するのにも関わらず、学校教育の現場では使用しないでほしいとされる言葉があります。こうした言葉は資料上には使用しませんが、画像や口頭で使用することもあります。過剰な配慮が裏目に出てしまうのであり、あえて普通に使用したほうが、子どもたちはこうした言葉をすんなりと受け入れてくれます。

ほかにも、小学生に性交という言葉を使わずに精子と卵子の出会いを説明する機会がありました。この時は射精された精子と卵管を通ってきた卵子とが出会って受精すると説明したところ、大半の小学生は納得してくれました。性や生殖にまつわる話題は学校という教育現場だけでなく、家庭でも言いづらいと感じてしまう内容です。だからこそこうした内容を、普段学校にいない専門家が代弁して子供たちに伝えるというのも、この講義の持つ大きな意味のひとつともいえます。