インタビュー

子どもの機嫌が悪いとき 家庭でできる「子どものみかた」(基本編)

子どもの機嫌が悪いとき 家庭でできる「子どものみかた」(基本編)
笠井 正志 先生

兵庫県立こども病院 感染症科部長

笠井 正志 先生

この記事の最終更新は2016年08月08日です。

「子どもの機嫌が悪い」とき、大抵は問題ないものの、ごく一部に緊急の病気が隠れていることがあると記事1「子どもの機嫌が悪いとき 緊急対応が必要なときがある」でお話ししました。では、本当に受診が必要かを判断するために、家庭ではどのようなポイントをみるべきなのでしょうか。ひきつづき、兵庫県立こども病院感染症内科科長の笠井正志先生にお話しいただきました。

①泣き方の強弱をチェック

②おむつの中など外から見えない部分をチェック

③「食う、寝る、遊ぶ」ができているか全身をチェック

具体的にはどのような点をみるか、以下に詳しく解説していきます。

まずは泣き方の強弱をみてください。子どもの不機嫌さの中には、強く泣いているときと、元気がなくてぐったりしているときの2種類があります。泣き方が力強いかどうかは、親御さんでも十分に判断がつくはずです。

・泣き方が強い場合

基本的には心配いりません。強く泣く原因のほとんどは、どこかが痛い、どこかがかゆい、部屋の温度が不快、食べたものが嫌だった、お母さんが怒っていて嫌だなど、子どもにとって不愉快なことがある場合でしょう。ただし中には、急性中耳炎やどこかの骨が折れているといった病気が原因の場合もあります。このように、強く泣く場合の原因は、本当に病気のときと、説明のつかない生理現象との2種類に分けられるでしょう。

とにかく、まずは子どもをよく観察することです。機嫌を損ねているだけかもしれないので、あやしたり、ときにはドライブに行ったりするのもよいでしょう。赤ちゃんであれば、母乳やミルクをあげて落ち着くかどうかみるのも有用です。また、お母さんだけで対応するのでなく、ときにはお父さんと交代したり、周囲の人にも助けてもらいましょう。一人で抱え込まず、夫婦や家族で助けあうことがとても大切です。親御さんは、自分自身がイライラしないよう、自分をいたわることも忘れないでください。

泣きが強く、様々な工夫をこらしても泣き止まなければ受診をしてよいでしょう。強く泣いている場合、ほとんどは問題ありませんが何かしらの病気が原因のケースもあります。弱く泣いている場合はその逆で、中には問題ない場合もありますが、大半は病気などが原因です。

・泣き方が弱い場合

すぐに病院を受診しましょう。重大な病気が隠れていることがあるので注意が必要です。このとき、電話相談などせずにすぐ受診して構いません。例えば、細菌性髄膜炎の場合は、あまり泣く力もなくぐったりしていることが多いです。泣きが弱いときでも、大きな問題がないことはあります。しかし、ここから先は専門家が診察して医学的に判断すべき範囲です。

・意識がおかしい場合

子どもが不機嫌なとき最も重症なのは、「意識がおかしい」場合です。泣き方のチェック以前に、この場合はすぐに受診をしてください。顔色が悪いときもすぐに受診が必要です。

☆親御さんが一人で抱えこまないことが大切

私がもう一度強調したいのは、子どもが不機嫌になってしまったときに親御さんが一人で抱え込まないようにしてほしいということです。子どもの不機嫌の大半は、病気以外のものであり、根気が必要になります。そのため、周囲に助けを求めることも非常に重要です。

子どもの機嫌が悪いとき、意外と「おむつの中」に答えが隠れていることもあります。

「泣き方」の次は「おむつの中」をみて、おむつかぶれがないか、便の状態がおかしくないかなどをみていきます。また、股のつけね(鼠蹊部:そけいぶ)や、男の子であれば陰嚢(いんのう)もみましょう。ヘルニア(腸が脱出してしまっている状態)で盛り上がって痛がっていることもあります。稀ですが、股関節の炎症を起こしている場合も考えられます。この場合は、股の付け根が赤く腫れ上がっていたり、腫れてはいないけれどおむつを替えるときに足を動かすのをひどく嫌がったりします。

便関連の問題は、ほとんど便秘が原因です。子どもの排便状況を思いだしてください。便が2~3日出ていない、便がころころとしていて硬かったなどの場合は、便秘の可能性もあります。また下痢でも不機嫌になるでしょう。血便など普段と異なる便がでていれば、もちろん受診してください。

(便秘のタイプ)

このように、オムツを開けて見ることで、様々なことがわかります。便関連での機嫌の悪さの多くは便秘によるものだと考えられますが、おむつかぶれ、ヘルニア、股関節炎なども考えることができるのです。

子どもの機嫌が悪いときも、特別な方法ではなく、親御さんの普段の行動通りに子どもをみていけばよいのです。まずは「泣き方」をみて、次に「オムツの中」をみて、最近のウンチの状態を思い出して、最後に子どもの全身状態をチェックして、という流れは難しいものではありません。意識が悪いかどうかは、こうしたチェックをしているうちに気がつくでしょう。

また、体温も測ることが多いと思います。こうしたチェックをして、それでも親御さんからみて「やはり心配」ということであれば、もちろん病院を受診して問題ありません。

親御さんは「全身状態を把握してください」と言われても困ってしまうかもしれません。具体的には次の記事3「子どもの機嫌が悪いとき 家庭でできる子どものみかた(応用編)」で紹介しますが、主に普段通り「食う、寝る、遊ぶ」ができるかのチェックをするとよいでしょう。このうち一つ以上ができていなくて、理由もわからず不機嫌ならば、それは十分に受診の根拠になります。逆に、原因がわからなくても、「食う、寝る、遊ぶ」がちゃんとできていれば様子見でもいいわけです。

子どもの不機嫌の大抵は、原因がわかりません。病院にいってもわからないこともあります。しかしその中でも、隠れているわずかな重症な病気を見逃さないことが重要です。

 

「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

 

【先生方の記事が本になりました】

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