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インタビュー

子どもの機嫌が悪い、ぐったりしているとき:病気の可能性とその種類

子どもの機嫌が悪い、ぐったりしているとき:病気の可能性とその種類
笠井 正志 先生

兵庫県立こども病院 感染症科部長

笠井 正志 先生

「子どもの機嫌がいつもと違う」とき、大抵は問題がないもののごく一部に緊急の病気が隠れていることがあります。では具体的にどのような病気があるのでしょうか。今回は、兵庫県立こども病院感染症内科科長の笠井正志先生に、ご自身の経験も交えてお話しいただきました。

子どもが不機嫌で受診された場合、原因の多くは感染症です。次に多いのが、腸重積(腸の一部が重なり合ってしまう状態で、2歳くらいまでに多く、進行すると腸の壊死を起こす可能性がある深刻な疾患)で、その次に何らかの外傷などが続きます。また、頻度としては稀ですが、見逃さないようにしているのが、心不全(心臓が疲れている状態)や呼吸不全などです。

大抵は、呼吸不全になる前の「ゼイゼイ・ハアハア」という音がしている段階で、親御さんは子どもを病院に連れてきてくれます。気道異物では特に緊急の対応が必要です。飲み込んだものが急に空気の通り道(気道)にひっかかった場合、呼吸がゼイゼイしたりヒューヒューしたりしますが、その前に機嫌が悪くなって気付くこともあるでしょう。

このほかには、かぜだと思っていたものの、不機嫌な状態がずっと続いていたことで、心不全に気付くというケースもまれにあります。

ワクチンを打った後に、その部分の痛みや腫れで不機嫌になることもあるでしょう。しかし、重症な感染症の中にはワクチンで予防できるものもあります。例えば、ヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンが普及したおかげで、重症な細菌性髄膜炎(脳をつつむ髄膜の感染症で、高い割合で重症化し後遺症を残す)になる子どもは激減しました。ワクチンを接種した部分の痛みや腫れは一時的なものなので、不機嫌になることが予想されても、ワクチンを普段からきちんと打つことがとても重要です。

私が小児科の駆け出しのころ、泣き止まない赤ちゃんの受診があったのですが、検査の結果、不整脈という診断がついたことがあります。

お母さんがどんなにあやしても赤ちゃんは泣き止まず、次第にぐったりしてきたため受診されました。病院で心電図をつけてみたところ、脈が異常に早くなってしまう不整脈で、心不全になっているとわかりました。その赤ちゃんは、薬で治療をして無事によくなりその後もしっかり発育しています。

ほかにも機嫌が悪い際に、見逃さないようにしたい疾患を以下に述べます。

「不機嫌」が理由で小児救急外来を受診した人の中に、尿路感染症が隠れていることはよく知られています。私は救急外来では、不機嫌でなおかつ熱の原因がわからないときは尿の検査をするようにしています。尿路感染症が原因だと判明することは意外に多いです。

細菌性髄膜炎は、重症な感染症の中で特に怖い病気として有名ですが、「不機嫌」だけが理由で受診されることはほとんどありません。細菌性髄膜炎の場合、その多くが痙攣(けいれん)を理由に受診されます。機嫌が悪いという状態を通り越して、それよりずっと悪い意識障害という形での受診が多いのです。

細菌性髄膜炎の経過は2通りで、熱が出てすぐに痙攣を起こすパターンと、熱がでて数日様子をみていたら次第にぐったりして痙攣を起こすパターンがあります。症状の進行速度が時間単位のときと、日単位のときがある印象です。

教科書的には、実際に抱っこしても泣き止まないのが髄膜炎といわれます。普通は赤ちゃんの機嫌が悪いとき、抱っこすると泣き止むのですが、髄膜炎の場合は抱っこすると硬膜(神経のまわりの膜)が引っ張られて痛むため逆に泣いてしまうのです。ただし、どちらかというと髄膜炎は泣けないほどぐったりしていて、じっとして動かないというパターンが多い印象です。また、敗血症(血液中に最近やウイルスが入ってしまう重篤な感染症)の場合も、不機嫌というよりはぐったりして受診されることが多いです。

関節や骨に細菌感染を起こしている状態です。感染した部分は痛むのですが、年齢の小さな子どもの場合は自分でどこが痛いのかわかりません。熱や不機嫌の原因がわからず、採血をすると炎症の数値が上がっていて、おむつを開けて診察をしたら実は股のつけねが赤く腫れていて、骨髄炎関節炎がわかるという場合もあります。医者も注意して診察しなければ見逃しやすい病気です。治療が遅れると、骨や関節に後遺症が残ることもあります。

不機嫌に加えて強く泣いている場合、頻度が高い病気には急性中耳炎が挙げられます。とにかく耳が痛み、耳垂れを起こすこともあります。特に、過去に中耳炎を起こしたことがある子どもでは中耳炎を必ず考慮します。子どもの全身の状態が悪いわけではないものの高熱がでていて、耳を強く痛がっているのであれば中耳炎の可能性が高いでしょう。中耳炎は子どもの感染症全体の中でもとても多いものですが、きちんと対応すればよくなります。

医療者は、子どもがとてもぐったりしている状態を「not doing well」と呼び、重症な病気が隠れている可能性を考えます。ぐったりしているときは泣き方も弱く、意識障害も考えられます。不機嫌で泣き止まないというのは、その手前の状態で、中耳炎や生理的な不快感を含みます。不機嫌からさらに病状が進んで、最終段階に至ったものが「not doing well」という状態なのです。

不機嫌で何かおかしいという段階できちんと受診できれば、早期発見ができるため、仮に髄膜炎などの重症感染症でも迅速に対応できるでしょう。ですから不機嫌の段階で、「何かおかしい」と気づくことはとても重要です。受診された場合は、いろいろな重症疾患を早期発見できるよう、我々医療者も心がけて診察しています。

不機嫌な子どもを診察するときに、医者は「頭のてっぺんから足の先までみるように」と習います。例えば小児科医が必ず勉強する病気として、足の指先に髪の毛が強く巻き付いてしまう「ヘアターニケット症候群」というものがあり、とても稀なのですが、この痛みから不機嫌になり受診される方がいることは有名です。この病気は、もちろん親御さんが知っている必要はありません。しかし医者は、このような稀な病気も頭に入れつつ、常に子どもの全身をみているのです。

 

「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

 

【先生方の記事が本になりました】

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