子どもが頭を打ったとき、たんこぶや傷ができることがあります。たんこぶは基本的には自然に吸収されて消失しますが、なかには注意が必要なものもあります。子どもが頭を打ったときに生じた傷の治療について、自治医科大学附属さいたま医療センター救命救急センターの天笠俊介先生にお話しいただきます。
たんこぶは傷の深さ(内出血が起こっている場所)によって、大きく下記の3種類に分類されます。
一般的にいわれる「たんこぶ」は皮下血腫と呼ばれ、皮下組織内に血液が固まっている状態を指します。皮膚が赤く点状に変色して触わると硬く、およそ1~2週間で自然に吸収されます。
稀ですが、上記よりも柔らかいたんこぶができることがあります。このタイプのたんこぶは、帽状腱膜下血腫と呼ばれます。
帽状腱膜下血腫とは腱膜と骨膜の間に血液が溜まった状態で、血液は凝固せず膜間に貯留しており、皮下血腫に比べて広範囲が膨れます。
皮下血腫よりも治るまでに時間がかかりますが、帽状腱膜下血腫も自然に吸収され消失することが多いです。ただしあまりにも大きかったり、急激に大きくなったり、子どもが幼い場合は病院を受診することをお勧めします。
骨膜と頭蓋骨の間に血液がたまった状態です。骨膜下血腫もやわらかいたんこぶで、治るまでに時間がかかります。
ぶよぶよとやわらかいたんこぶができた場合は帽状腱膜下血腫や骨膜下血腫の可能性があります。これらは硬いたんこぶよりも危険性が高いため、大きくてやわらかいたんこぶができている場合は病院を受診しましょう。
非常に大きなたんこぶができた、またはたんこぶがどんどん大きくなってくるなどの場合は医療機関の受診を検討してください。特に2歳未満の子どもでは、大きなたんこぶ(3cm以上)は頭の中の出血リスクの一つであるという研究もあります。
受傷早期では、患部は冷やしたほうが痛みも小さくなり、また大きくなりづらいので、たんこぶを冷やすことには効果があります。
たんこぶに砂糖が効くという情報があるようですが、医学的には証明されていません。
頭を打ったとき、たんこぶ以外に擦過傷(すり傷)や挫創ができる場合があります。擦過傷であれば放っておいても自然に治りますが、挫創で皮膚がぱっくりと切れた場合は、傷の深さや範囲に応じて縫合(ほうごう:縫い合わせること)するかどうかを判断します(医療用のホチキスやテープを使う場合もあります)。
ぱっくりと割れたような傷や、顔や額にできた傷は、医師の処置を受けたほうが綺麗に治るため、受診をお勧めします。
傷を早く治すにはやはり、患部を清潔に保つことが一番大事です。感染を起こすと治癒が遅れるため、傷の部分は丁寧に洗って感染を防止しましょう。
また、再び同じ部分を打たないように、患部はしっかりと保護します。
最近では、良好な湿潤環境(しつじゅんかんきょう)を保ったほうが傷は早く治ると考えられています。擦過傷では、患部の滲出液(しんしゅつえき)が多い時期には軟膏の塗布とガーゼ保護に留め、滲出液が減ってきた時点で傷専用のテープ(キズパワーパッドなど市販のもので十分効果があります)を貼っておくと、よりきれいに治ることがわかってきました。
「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。
【先生方の記事が本になりました】
自治医科大学附属さいたま医療センター 救急科助教
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