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インタビュー

慈恵大学と国立がん研究センターの新たな取り組みとは?医療・教育・研究の包括的な連携

慈恵大学と国立がん研究センターの新たな取り組みとは?医療・教育・研究の包括的な連携
栗原 敏 先生

学校法人慈恵大学 理事長、東京慈恵会医科大学 前学長・名誉教授

栗原 敏 先生

東京慈恵会医科大学、慈恵第三看護専門学校、慈恵柏看護専門学校、そして4附属病院を運営する学校法人慈恵大学は、独立研究開発法人国立がん研究センターとの間で医療・教育・研究など包括的な連携を進める協定を結んでいます。大学とナショナルセンターがこのような形で包括的な協定を結ぶことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。東京慈恵会医科大学第10代学長を務め、現在は学校法人慈恵大学理事長の栗原敏先生にお話をうかがいました。

学校法人慈恵大学と独立研究開発法人国立がん研究センターは、2015年(平成27年)4月1日付で医療・教育・研究などに関わる連携・交流を促進する包括協定を締結しました。この協定は、慈恵大学と国立がん研究センターが連携することによって双方の機能強化を図り、大学とナショナルセンターとの新しい連携モデルの構築を目指すものです。

*参考リンク:本学と国立がん研究センターとの包括連携に関する協定について

この話が持ち上がった当時、国立がん研究センター中央病院の病院長であった荒井保明先生(理事長特任補佐、放射線診断科長・IVRセンター長併任)は東京慈恵会医科大学の卒業生であり、堀田知光前理事長・総長とは私自身も以前から交流がありました。そのお二人が国立がん研究センターに着任されたことで機運が高まり、堀田総長から私たち慈恵大学との間で臨床、研究などの連携を進めていきたいというご相談があったのです。

私たちは他のいくつかの大学とは連携していますが、ナショナルセンターとの間で正式に連携するということはこれまでありませんでした。大学とナショナルセンターではいわゆる文化の違いがありますが、お互いにメリットがあるところについては協力していくということで、今回、協定の締結に至りました。

本院の腫瘍センターホームページの写真

背景のひとつとして、国立がん研究センターはがんの専門施設であるため、がん以外の疾患については診療体制が十分ではないという問題があります。たとえば心臓が悪いなど、循環器に問題を抱えている方ががんになった場合、国立がん研究センターでは患者さんを十分診ることができないことがあります。そのような場合、東京慈恵会医科大学附属病院が診療で協力できればいいということがそもそもの始まりでした。

また、国立がん研究センター中央病院はあくまでもがんの「治療」を目的としている施設であり、がんの末期で手の施しようがない患者さんについてはケアできない場合もあります。そのような患者さんが東京慈恵会医科大学附属病院に送られてくるということが以前からありました。つまり、従来から医療現場では連携が行われていて、そこへ包括的な連携をしたいという申し出があったので、きちんとした形で協定を結ぶことになったのです。

もちろん臨床の部分では、私たちも国立がん研究センターへ行って勉強させていただいています。すでに臨床のスタッフが赴き、医師だけでなく看護職のレベルでも交流しています。がんの患者さんに対する看護などについては学ぶべき点も多くありますが、私たちも患者さんの立場に立った看護を実践していますから、お互いにレベルアップが図れると考えています。

また、国立がん研究センターでは、かつて麻酔科医が不足して非常に困ったということがありました。私たちのところでは幸い麻酔科医が十分にいますので、協力しながら、一方ではがん治療や外科手術について勉強させていただけるのではないかと考えています。

参加型実習

研究の面でも、すでに国立がん研究センターでお世話になっている研究者は少なくありません。今回の包括協定では大学院レベルでの協力として、連携大学院制度をスタートさせることになりました。

慈恵大学から国立がん研究センターの職員7人に対して連携大学院教授の辞令を交付し、連携大学院の教員として教育・研究指導を担当していただきます。東京慈恵会医科大学の大学院生が国立がん研究センターで、連携大学院教員の研究指導を受けることができますし、国立がん研究センターの職員が社会人大学院生として国立がん研究センターで臨床に従事しながら研究指導を受けることもできます。

大学院修了要件の単位を取得するためには、東京慈恵会医科大学大学院で開講される授業を受講する必要がありますが、社会人大学院生にも対応しています。国立がん研究センターは学位を授与することができませんが、仕事に従事しながら連携大学院で学位を取得することができれば、国立がん研究センターの職員の方々にも大きなメリットになります。

東京慈恵会医科大学の松藤千弥学長は研究の活性化を図りたいと考えており、その意味でも非常によい連携ができるのではないかと期待しています。また、国立がん研究センター中央病院副院長で教育担当の大江裕一郎先生も東京慈恵会医科大学の出身ですから、その点でも良いタイミングだったのではないかと考えています。

国立がん研究センター(東京都中央区築地)と慈恵大学(東京都港区西新橋)は立地的に非常に近く、連携するには好条件がそろっています。また、国立がん研究センター東病院がある千葉県柏市には、私たちの東京慈恵会医科大学附属柏病院があります。協定を結ぶ以前から東病院と柏病院の間ではお互いに患者さんを紹介して連携が行われていました。

その国立がん研究センター東病院におられた西田俊朗先生がこの度、中央病院の院長に就任されました。今後、より連携を深め協力できるのではないかと話し合っているところです。

今回の包括協定を検討するにあたり、2017年から始まることになっている新専門医制度のことまで念頭に置いていたわけではありません。しかし、本格的な議論が進む中で、新専門医制度が発足したときには協力していくことが話し合われています。

新専門医制度では、がんの専門病院である国立がん研究センターは他の診療科を持たないため、基幹病院としての要件を満たすことが難しくなります。その意味では総合病院である東京慈恵会医科大学附属病院を持つ私たち慈恵大学と連携することは非常に大きなメリットになるのではないかと考えています。

ナショナルセンターとの連携のひとつとして、独立研究開発法人国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)との関係も挙げられます。国立成育医療研究センターには東京慈恵会医科大学出身の先生方がおられ人的交流が行われています。東京都狛江市にある東京慈恵会医科大学附属第三病院とは立地的に近いということもあります。

慈恵大学では「西新橋キャンパス再整備計画」を進めていますが、現在、建設中の新病院は、東京都の要請により「小児・周産期医療センター」を開設する予定です。

*参考リンク:西新橋キャンパス再整備計画

小児・周産期医療センター開設後は、NICU(Neonatal Intensive Care Unit:新生児集中治療室)やPICU(Pediatric Intensive Care Unit:小児集中治療室)、MFICU(Maternal-Fetal Intensive Care Unit:母体胎児集中治療室)などを始めとする難しいお産や新生児・小児への対応を私たちのところが受け持ち、愛育病院(東京都港区)は正常分娩を主に扱うといった役割分担をしていくことになっています。

また、東京都が政策的に推進している医療圏の整備として、小児・周産期医療の他にも、災害医療や救急医療への対応も求められています。私たちはこれに応えていくために、中央棟と呼ばれる入院棟の1階に救急部を移設し、より迅速な救命救急体制を整えるよう計画しています。

※記事内に使用している写真は、弊社撮影分を除き慈恵大学より提供いただいております。