縦隔腫瘍とは、体の中心を位置する縦隔に形成されたできものをさします。記事1『縦隔腫瘍とは? 症状・合併症・分類について』では、縦隔腫瘍の分類や症状についてご説明しました。縦隔腫瘍のなかでも発生頻度の高い胸腺腫・胸腺がんの検査・治療について、国際医療福祉大学三田病院 呼吸器センターの小鹿雅和先生にお話を伺いました。
縦隔腫瘍の検査では、まず胸部エックス線・胸部CT検査・胸部MRI検査・超音波検査などを組み合わせた画像診断を行います。CT検査やMRI検査によって、腫瘍の状態や隣接した臓器への浸潤(広がり)の有無を治療前に正確に把握します。
また近年ではFDG-PET(糖代謝を反映したF-18標識フルオロデオキシグルコースを用いた断影撮影法検査)が胸腺上皮性腫瘍に関して良性悪性の鑑別に有用であり、胸腺がんと胸腺腫の鑑別、遠隔転移の評価に使用されています。
記事1『縦隔腫瘍とは? 症状・合併症・分類について』でお話したように、縦隔には生命活動に必要な臓器が多く、治療のためには画像診断によって正確に腫瘍の状態を調べることが非常に重要となります。
画像診断後、経皮的針生検法(体の外から針を刺して腫瘍の細胞、組織の一部を採取する)を行います。採取した組織を顕微鏡で観察し、病理診断を経て、治療方針を決定します。
しかしながら画像診断の結果、外科的手術を要する悪性腫瘍の可能性が高い場合は総合的な判断から、経皮的針生検法による検査を行わないケースもあります。
上記の検査に加えて、採血、腫瘍マーカーによる検査を行うこともあります。また胸腺腫で重症筋無力症を合併している場合には、体内のアセチルコリン受容体の数を調べることもあります。また胸腺がんを疑う症例では肺癌の検査でつかわれる腫瘍マーカー(SCC、CEA、NSE)やαフェトプロテイン(AFP)、ヒト絨毛性ゴナドトロピンhCG、IL-2を用いて調べる場合もあります。
縦隔腫瘍のなかで発生頻度の高い胸腺腫には、低悪性度から高悪性度まで、非常に幅広いタイプが存在します。胸腺腫は、WHO(世界保健機構)による分類で、進行度によってタイプA・AB・B1・B2・B3・Cの6種類にわけられておりましたが、2004年よりType Cは胸腺がんとして別に分類されております。したがって胸腺上皮性腫瘍はタイプA〜B3までは胸腺腫、胸腺がん(胸腺カルチノイドを含む)となります。縦隔腫瘍の分類については記事1『縦隔腫瘍とは? 症状・合併症・分類について』をご覧ください。
胸腺腫のステージ分類では、
縦隔腫瘍は、診断時に良性と判断された腫瘍でも時間経過とともに悪性変化、増大、破裂などのリスクが上がるため、特別な理由がない限り、第一選択として外科的手術による腫瘍の完全切除を試みます。また手術前の病理組織診断ではっきりと診断ができないことが多く、診断と手術を兼ねた手術になるケースもあります。
肺や心臓に浸潤している場合には、浸潤している臓器を合併切除します。たとえば肺を部分切除した場合には、肺の機能低下によって肺炎のリスクが高まるため、術後の生活で感染に注意しなければなりません。
外科的手術では、基本的に胸骨正中切開(皮膚・肋骨を切開して行う手術)で拡大胸腺摘出術を行います。記事1『縦隔腫瘍とは? 症状・合併症・分類について』で述べたように胸腺は成人になれば役割を終える臓器ですから、診断時に胸腺への浸潤範囲を確認し、基本的には手術で腫瘍と周りの胸腺を切除します。
腫瘍が小さい場合には、胸部に小さな創(きず)をつくり内視鏡というカメラを用いて、胸腔鏡手術を行うケースもあります。
縦隔腫瘍の治療の第一選択は腫瘍の切除です。その後は、必要であれば追加で放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)などを行います。また先述のステージ分類において、ステージⅢ以上、つまり胸腺以外の臓器への浸潤・転移があり腫瘍切除が困難である場合には、放射線治療・化学療法を開始します。
縦隔腫瘍の治療では、基本的に胸骨正中切開による手術を行います。胸骨正中切開の手術後は骨同士をワイヤーで固定するため、接合部分が安定するまでの数か月間は、体をねじるなどの動作を避け、体勢に注意して過ごす必要があります。しかしほかに制限することはありませんので、通常に近い日常生活を送ることが可能です。
縦隔腫瘍は比較的まれな疾患ではありますが、重要な臓器への転移を回避するためには、早期に発見し治療を行うことが重要です。「自分は大丈夫」と思わずに、縦隔腫瘍に関して少しでも不安に感じることがあれば、専門医のいる病院を受診してください。縦隔腫瘍には症状がほとんどなく患者さん自ら異変に気付くことは難しいため、定期的な検診を受けることをおすすめします。
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