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これからの医学教育―公衆衛生マインドを育む
超高齢社会の日本では、膨大な医療費、国民健康保険の破綻、医師不足など医療に関する問題は枚挙にいとまがない状況です。このようななかで、今後の医学教育において公衆衛生マインドが求められつつあります。...
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これからの医学教育―公衆衛生マインドを育む

公開日 2018 年 03 月 29 日 | 更新日 2018 年 03 月 29 日

これからの医学教育―公衆衛生マインドを育む
髙久 史麿 先生

公益社団法人地域医療振興協会 会長 / 日本医学会 前会長

髙久 史麿 先生

目次

超高齢社会の日本では、膨大な医療費、国民健康保険の破綻、医師不足など医療に関する問題は枚挙にいとまがない状況です。このようななかで、今後の医学教育において公衆衛生マインドが求められつつあります。今回は、公益社団法人地域医療振興協会 会長・日本医学会 前会長の高久史麿先生に公衆衛生と医学教育についてお話を伺いました。

公衆衛生マインド

公衆衛生とはなにか、を簡単にいうことはなかなか難しいですが、臨床では個人の単位でアプローチしていることを公衆衛生では社会を単位としてのアプローチを考えます。そのため、公衆衛生の守備範囲はとても広くなります。

たとえば、母子健康から学校保健、環境衛生、精神衛生、生活習慣病やインフルエンザなどの感染症予防まで公衆衛生はカバーします。地域社会の人々の心身の健康を持続させるため、組織的に疾病予防をすることも公衆衛生に含まれます。そして、この公衆衛生の感性(公衆衛生マインド)を身につけた医師が今後は重要な役割を担うと考えています。

生活習慣病…食生活・喫煙・飲酒などの生活習慣がその発症・進行に関与する病気の総称

予防医学の重要性

日中医学協会でも話題の予防医学

公衆衛生の領域のひとつに、「予防医学」があります。ご存じのとおり、予防医学は、世界的にも重要性の増している分野であり、日中医学協会などが行う国際的なイベントにおいても注目の議題として取り上げられています。

健康的な生活習慣、予防接種、定期検診など、病気を未然に防ぐことは、健康寿命を伸ばしていくためにもとても大切です。

病気は一人ひとりの生活の質を大幅に下げるだけではなく、精神的にも経済的にも負担がかかります。国民全員が心身ともに健康に過ごし、健康寿命の延伸のためにも予防医学は必要不可欠です。また、予防医学はアプローチ方法によっては社会全体の膨大な医療費負担を減らすためにも重要であるといわれています。

地域包括ケアの中で予防医学を実践する医師

地域包括ケアシステムが注目される以前から積極的に予防医学を中心とした地域包括ケアを実践した医師を2人紹介します。

ひとりは若月俊一先生です。長野県の佐久地域で健康教育を積極的に行いました。今では当たり前となった健康診断の先駆けともいえる集団健診を始めた有名な医師です。

若月先生は、演劇や人形劇などをもちいて住民に健康教育を行い、病気の予防に関する意識を高めていきました。若月先生の活動の結果、佐久地域では健康寿命が長いという実績が出たと聞いています。

もうひとりは佐藤元美先生です。岩手県一関市藤沢町で、総合診療医の先駆けとして地域全体の医療にかかわりました。佐藤先生は目の前の患者さんを日々診療するだけではなく、地域全体をみるため住民に自ら歩み寄り、健康教育をボランティアで熱心に行ったといいます。今では「藤沢方式」と呼ばれ、地域包括ケアにおけるよき手本となっています。

この2人のように、地域包括ケアとして住民に合わせた健康教育を行う医師が今後増えることで、地方自治体、ひいては日本全体の健康寿命の延伸につながっていくと考えます。

総合医と公衆衛生マインド

これから地域包括ケアを担うのは総合診療医です。今後、場合によっては医師の半分ほどが総合診療医となるかもしれません。とても重要な役割を担う存在であると私は考えています。

総合診療医は、単に患者さんを臨床的な意味で総合的に診療するだけではありません。

特にこれからの総合診療医は、公衆衛生マインドを持ち、行政、保健、福祉、介護などの問題まで幅広く理解しなければ、地域全体の健康を保持していくことはできません。

今後の日本において需要が増す医師は、臨床だけではなく、住民教育の視点も持ち、住民の健康を予防から考えられる公衆衛生マインドを持った医師であることは、間違いないでしょう。

若手医師・医学生に公衆衛生マインドを育む

高久先生

近年は、公衆衛生学を扱う講座が各大学で設置されています。私が学生の頃は、衛生学のみで公衆衛生学の講座はありませんでした。現在の日本の医学教育でも、公衆衛生学はともすると比重が低くなりがちになっているのではないかと思います。

しかし、これからますますその重要性は増してくると考えています。海外に目を向けると、医学部と並び、公衆衛生学を学ぶ独立した学部があります。デパートメントではなく、スクールという扱いになっている所もあります。

これからの日本を支える若い医学生や医師の方には、ぜひ公衆衛生学を学んでいただきたいです。国内外の公衆衛生大学院で学ぶのも大切ですが、それだけではなくまずは地域包括ケアシステムに積極的に関わっていくこと、つまり地域に出ていくことこそが公衆衛生マインドを醸成する上で大きな力になると考えます。

公益社団法人地域医療振興協会 会長 / 日本医学会 前会長。1954年東京大学医学部卒業後、シカゴ大学留学などを経て、自治医科大学内科教授に就任、同大学の設立に尽力する。また、1982年には東京大学医学部第三内科教授に就任し、選挙制度の見直しや分子生物学の導入などに力を注ぐ。1971年には論文「血色素合成の調節、その病態生理学的意義」でベルツ賞第1位を受賞、1994年に紫綬褒章、2012年には瑞宝大綬章を受賞する。