院長インタビュー

時代の医療ニーズを先駆けて実施する鶴巻温泉病院

時代の医療ニーズを先駆けて実施する鶴巻温泉病院
鈴木 龍太 先生

医療法人社団 三喜会 理事長、鶴巻温泉病院 院長

鈴木 龍太 先生

この記事の最終更新は2017年07月18日です。

小田急電鉄小田原線鶴巻温泉駅より徒歩3分の地に、鶴巻温泉病院が開院したのは1979年。背後には丹沢の山並みが迫り、晴れていれば裏山の山頂から江ノ島や横浜ランドマークタワーが望めます。近くには将棋の名人戦や竜王戦がしばしば行われている旅館もあり、温泉地としても有名です。

鶴巻温泉病院は、当時国内でほとんど行われていなかったリハビリテーションを早期に導入して評判を呼びました。2000年に回復期リハビリテーションの制度ができると、神奈川県では最初に回復期リハビリテーション病棟を開設しました。その後ブランド病院として、東京や横浜などの首都圏から来院する患者さんを多く受け入れていました。現在では首都圏に回復期リハビリテーション病院が多くできたこともあり、近隣から来院する患者さんが大半を占めるようになっています。

「地域に貢献できる病院を目指しています」と言う鈴木龍太理事長(病院長兼務)に、一般にはあまり知られていない慢性期型病院の機能や特徴についてお話しをうかがいました。

鶴巻温泉病院は、急性期病院で行われている一般的な外来診療は実施しておりません。患者さんの全員が入院目的で、ほとんどが近隣の急性期病院から、あるいは訪問看護ステーションや介護施設からご紹介いただいた患者さんです。患者さんの病態は大きく3つに分類することができます。

  • 病状が急速に進展する急性期を脱したものの、積極的なリハビリテーションが必要な回復期の患者さん
  • 病状がほぼ落ち着いてきた慢性期の患者さん
  • 緩和期の患者さん

患者さんが罹っている疾患・病態としては、多い順に脳卒中、大腿骨頸部や脊椎の骨折、神経難病、末期がんです。そういった患者さんを回復期リハビリテーション病棟、医療療養病棟、障害者・難病リハビリテーション病棟、緩和ケア病棟の4つの区分の病棟で受け入れています。

脳卒中骨折、機能障害などの回復期に入っている患者さんに対し、日常生活動作を向上させて、在宅での療養ができるようにサポートします。206床に100名以上というリハビリスタッフの高密度配置により、患者さんがそれぞれの生活の場でどんな動作が必要となるかを事前に見極めて、訓練に入ることを目指しています。

具体的には入院初日から医師、看護師、介護福祉士、リハビリスタッフ、ソーシャルワーカー、管理栄養士などの専門職が関わり、患者さんやご家族のご希望や家庭環境などを綿密にお聞きした上で、患者さん個別のリハビリプランを作成。退院後の生活のイメージや目標を持っていただいてリハビリを開始します。高いモチベーションを持っていただいた上で訓練に入るので、患者さんも一所懸命取り組むことができます。

まだ回復半ばで、医療の依存度が高い患者さんをお引き受けして、自立を目指せるように支援します。病気からの回復を図るのはもちろんですが、身体機能を維持してADL(日常生活活動)の改善にも気を配り、在宅での療養を目指せるように治療計画を組み立てます。

また在宅療養中、容態が急変して医療が必要になることがあります。そんな方にも対応します。

リハビリは、単に失われた機能を回復するのではなく、その人らしく生き抜くために身体機能を再構築することだと考えています。

それには症状に合わせたリハビリ、痛みや不快な症状を取り除く治療、不安を軽減する緩和ケアの組み合わせが必須です。医療、看護、介護、リハビリ、薬剤管理、栄養管理、精神的ケアに携わる専門家たちがチームの総合力で患者さんを支えていきます。

治癒を目指した治療が有効でなくなった、あるいはそんな治療を望まない患者さんの苦痛をやわらげ、穏やかに療養できるようにサポートします。

患者さんの意思、価値観、信念、ライフスタイルを尊重した療養環境をご提供できるように、医師、看護師、リハビリスタッフ、ソーシャルワーカー、薬剤師、栄養士、臨床心理士らがチームを組んで、総合的な緩和ケアを致します。

リハビリ器具や機械に頼らず、リハビリスタッフが1対1で行うマンパワー(人の手)によるリハビリを行っています。また医療と一体化した信頼性の高いリハビリを実施しています。

先端機器の導入と数多いリハビリスタッフにより、身体機能と日常生活活動の改善、そして、その人らしい人生の再獲得を目指すリハビリテーションを実施しています。

理学療法では、筋力の増強、歩行訓練、手足の拘縮(こわばり)を防ぐための関節運動、手足の麻痺の回復を図る運動療法、ベッドから起き上がる起居動作練習など行います。また、患者さんの状態に合わせ、先端機器を利用したリハビリテーションの提供も行っています。これらのリハビリは、患者さん個々の退院後の生活をイメージしつつ、そのときのコンディションを細かく観察しながら進めていきます。

ロボテックリハビリでHALⓇを使用しているところ

作業療法では、自宅に戻っての生活を考え、洗面、食事、排泄、料理、入浴など退院後の生活を想定した作業練習を行います。また、買い物や交通手段の練習、ご自宅など実際に行う活動や生活の場の評価も行います。移動関連では、運転のニーズもあり運転に関する評価など幅広い生活場面を想定したリハビリの提供を積極的に行っています。

ドライブシュミレーターで運転の訓練をしているところ

会話や読み書きなどコミュニケーションに関わる障害や、食物など飲み込みに関わる嚥下障害に対する摂食・嚥下のアプローチを入院早期から実施しています。また、“口から食べる”ということをすすめるために、医師・歯科医師・看護師・介護福祉士・歯科衛生士・管理栄養士・薬剤師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が連携し、個々の患者さまに合った具体的な計画を立てて、練習を行っています。

レクレーションの狙いは、生活の目的意識を向上させることと、社会参加へのきっかづくりにあります。

レクリエーションでは患者さまの意欲向上や生きがいの再発見を支援し、患者さま一人一人のニーズに合わせたレクリエーション活動を提供しています。レクリエーション活動を通じて楽しみながら身体を動かすことで心身機能の維持向上や心の元気の回復を目指します。また、患者さまの生活がより豊かになることを最重要課題とし、院内コンサートや年末年始イベント、外出サービスなど四季折々のイベントを企画しています。

それぞれの病棟で、誕生会、お茶会、ビデオ鑑賞会、季節に合わせたお花見、七夕会、納涼会、クリスマス会などの行事を取り入れ、患者さんの充実した入院生活を演出するとともに、病棟の職員とのコミュニケーションを図っていただきます。

治療に生かせるプログラムとしての活動もあります。

  • 趣味活動(手芸、書道、パソコン、書字)
  • サークル活動(園芸、囲碁、将棋、麻雀、絵画、カラオケ)
  • 鑑賞型イベント(コンサート、演奏会、落語)
  • 体験型イベント(手工芸、料理、体操等)
  • 外出サービス(近隣散策、外食ツアー)
  • グループレクリエーション
  • 音楽活動
  • 運動活動

これらのレクレーションは、リハビリなどの病棟スタッフが片手間で行うのではなく、当院では音楽療法士や植木の園芸療法士といった専任のレクレーショントレーナー12人を雇用して実施しています。これも当院の大きな特徴です。

 

神経難病の患者さんは比較的若く発症し、長期間病気を抱えながら入院と自宅(在宅)での療養の往復になりがちです。自宅療養では人工呼吸器などを使う場合もあるので、自宅療養が長期になると、介護をしている家族が疲れてしまいます。この介護をしている家族を休ませるための制度がレスパイト入院(介護休暇入院)です。患者さんに2週間ほど入院いただき、その間にADL(日常生活)維持のリハビリテーションを行います。

緩和ケア病棟は末期がんの患者さんが多いのですが、一度入るとそのまま自宅には戻れないというイメージが強いと思います。しかしがんの末期の方でも自宅に戻りたいという方は多くいらっしゃいます。そこでリハビリテーションで自宅での生活支援を行い、自宅に帰っていただくことができる患者さんには退院していただき、また必要になったら入院していただく、これを繰り返すということも行っています。最近では、最後は自宅でという方も多く、その希望も叶えられるようにしています。

在宅療養に移られた患者さんのなかには、糖尿病などの持病があったり、食が細かったりして、栄養管理をしっかりとしなければならない方もいます。そこで当院では管理栄養士がご自宅にうかがって、献立や料理の作り方を指導しています。これは全国的にも珍しい取り組みと言えるでしょう。

鶴巻温泉病院の特徴の一つにチーム医療があります。リハビリスタッフだけでなく、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養師、ケアマネージャー等が参加します。看護師は脳卒中リハビリテーション看護認定看護師や、認知症看護認定看護師、摂食・嚥下看護認定看護師等が在籍し、チームのリーダーとして働きます。

鶴巻温泉病院では、ご紹介したように医療やケア、リハビリなどを複数の専門家が携わるチーム医療を行っています。このチーム医療では、患者さんのQOLの維持・向上が目標です。QOLはよく「生活の質」と訳されますが、私は「人生の満足度」と訳すべきだと思っています。医療者・スタッフだけでなく、患者さんご本人、ご家族もチーム医療の一員です。全員が参加して、患者さんの満足度が上がるようにこれからも頑張りたいと思っています。

鶴巻温泉病院公認のゆるキャラ「鶴のまきちゃん」とリハスタッフの笑顔

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  • 医療法人社団 三喜会 理事長、鶴巻温泉病院 院長

    鈴木 龍太 先生

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