院長インタビュー

東広島市の医療を支える東広島医療センターの取り組み

東広島市の医療を支える東広島医療センターの取り組み
勇木 清 先生

東広島医療センター 院長

勇木 清 先生

この記事の最終更新は2017年11月13日です。

独立行政法人 国立病院機構 東広島医療センターは1939年に開設した傷痍軍人療養所を前身とする歴史ある病院です。人口が増加傾向にあるとされる広島県中央地域の中核病院として、24の診療科と急性期の病床を401床(一般病床385床のうち周産期病床50床、感染病床4床があり、これに加え結核病床16床)擁しています。また、二次救急輪番に参入しているだけでなく、政策医療であるがん、循環器病、呼吸器疾患、内分泌・代謝性疾患の専門医療施設としても位置づけられています。2001年には畑賀病院との統合を経て、新たに国立療養所広島病院となったのち、2004年には独立行政法人に移行しました。病院名を「独立行政法人 国立病院機構 東広島医療センター」と改称し、地域に根付いた医療の提供を続ける同院の取り組みについて、院長である勇木清先生にお話を伺いました。

当院は地域中核の急性期病院として、二次救急を担っています。2016年の年間救急車受け入れ台数は約2,700台、救急車応需率は 85%、救急患者総数は約9,000名と、19万都市とされる東広島市と周辺地域のみなさまの安全を守るために日々診療を行っています。

当院では、救急車をほとんど断っておりません。循環器科・心臓外科・神経内科・脳外科などで行う急性期の治療でも、さまざまなケースに対応できるよう努めています。必要な場合は地域の大学病院と密な連携をとりながら、救急患者さんの治療を行います。

当院には、東広島市による常設のヘリポートが設備されています。当院はドクターヘリのひとつのランデブーポイント(場外離着陸場)としての役割を果たしています。広い地域をカバーする広島中央医療圏では、ドクターヘリは必要とされる導線のひとつです。

当院は地域医療連携病院として、地域の他病院や開業医の先生方とも密な連携をとり、急性期病・回復期リハビリテーション病院・診療所及び介護保険事業所なども含めた、診断と治療、リハビリテーション、再発予防に至る医療の連携体制に寄与しています。

地域連携クリティカルパスの導入

地域連携クリティカルパスとは、急性期病院から回復期病院を経て、早期に自宅に戻るまでの診療計画を作成し、治療を受けるシステムです。すべての医療機関で共有することで適正かつ効率的な医療を提供できます。現在、大腿部頸部骨折脳卒中、各種がん等の地域連携クリティカルパスを運用しています。

今後もさらに使用率を上げて地域医療の役割分担や流れをよりスムーズかつ適切に行っていきたいと思います。

医師事務作業補助者の役割

当院では、医師事務作業補助者が医師の補助をしています。医師事務作業補助者は、診断書の下書きの作成や、退院サマリーの下書きの作成、書類の整理、入力業務、学会からの要望の事務作業の補助などを担当しています。医師がしなければならなかった事務作業を代わりに行ってくれるので、医師業務の効率化を期待できます。

2006年から地域がん診療連携拠点病院として指定され、地域におけるがん診療の拠点病院として、ほかの医療機関と共に連携しながら、良質ながん医療の提供に努めています。その活動の一環として、『がんフォーラム』を年に一度開催し、ゲストに著名な専門家をお招きするなど、地域の方々への啓発も行っています。

当院は、2012年3月より地域の災害拠点病院としての指定を受けています。災害拠点病院とは大規模かつ広域的な災害発生時に備え、各地域の初期救急の中心になる病院として都道府県が指定している医療機関を指します。医薬品の備蓄、非常用電源や貯水槽などのライフラインの確保、耐震化構造を有する施設であることを要します。各機関と連携して医療救護活動を実施する病院として認定され、災害派遣医療チーム(DMAT)を設立し、医療圏内のみならず県外への医療支援も行っています。

DMATとは、災害時医療や被災地内の病院支援を行える専門的な訓練を受けた医師・看護師・業務調整員(救急救命士、薬剤師、コメディカルなど)で構成され、地域の救急医療体制だけでは対応が難しい大規模災害や事故などの現場に急行する医療チームのことです。当院は、2チームを備え、広島県からDMAT指定病院として認定されています。実際に、東日本大震災や熊本地震などへの派遣実績も有します。

トンネル事故のあった日の悲しみと感動

2016年3月17日の早朝、山陽自動車道にてトンネル火災事故が発生しました。当院は災害拠点病院として、県からの要請で早急に災害体制に入り、司令本部を置き、救急医療にあたりました。その日は、外来に700~800名の患者さんが来院されていましたが、手術も外来もすべて中止してトンネル事故の負傷者の受け入れに終始しました。しかし、患者さんからまったく苦情が出なかったのです。当院の手術は1、2か月待っていただくこともあり、ようやく手術が行えるという患者さんもいらっしゃいました。そういった方からもお怒りの言葉はなく、地域の住民の方たちの協力にとても救われ、感動した瞬間でした。

当院の呼吸器系の診療には昔から力を入れており、また呼吸器外科手術には優秀なスタッフがおります。 手術は各科とも高い水準で行っており、2016年の年間手術件数は3,000件ちょうどでした。麻酔医不足で手術待ちが多くなっていますが、他病院とも連携しながら治療にあたっています。

当院の各診療科は垣根を超えた連携が特徴であり、臓器別のチームワークが大変よいと感じています。特に内科と外科の連携がとれており、さまざまな症例に対応できるようになっています。

当院の結核病棟は、一般病棟にユニット化された16床の運営でありながらも、結核の療養施設であったという背景から、「結核で困ったら東広島医療センターへ」と地域のみなさまに認識いただけています。2012年には第87回日本結核病学会総会を、広島の平和公園の国際会議場という大きな会場にて当院主催で行いました。

周産期医療対策については、2012年に地域周産期母子医療センターの認定を受け、ハイリスク分娩への対応を行っています。2016年の分娩数は約500件であり、これからも需要が増えていくと予想しています。当院の産婦人科は多忙ながらも、強い使命感を持ってスタッフ一丸となり医療に携わっています。

医師としての力を磨き続けるのはもちろんのこと、バランスのよい人間力をつけていってほしいと思います。

また、これからは科学技術の進歩により、医療の流れも大きく変わっていくことでしょう。画像診断なども含めて、デジタルデータに関しては、人工知能に任せることになる時代もそう遠くはないかもしれません。そこで大切になるのはやはり「人間力」ではないかと思います。

当院の初期研修について

当院の医師たちは、雰囲気がよく和気あいあいとしています。上級医の医師がきちんと一人ひとりに直接指導し、丁寧な対応を心がけています。

また、アドバンス研修など広島大学からの医学部実習生の受け入れや、各種リクルート会への参加、春・秋の医学生病院見学会などを通して当院を知っていただく機会も設けています。

当院は地域に愛され、大切に思われる病院になっていきたいと思っています。各地域の医療ニーズは多様でありますが、地域の病院が個々に医療の質を保ちながら独自性を持ち、お互いに連携を強めていくことが大切です。地域住民のみなさまが安心して過ごしていけるよう、医療を完結できる力を持つ病院のひとつであるべく、努めていきたいと思います。

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