【院長インタビュー】

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福島県いわき市の地域医療の中核を担う福島労災病院
独立行政法人労働者健康安全機構 福島労災病院は、開設当初は常磐炭鉱における労働者の労災医療や職業性疾病などの予防・診断・治療のためにつくられた病院です。現在は、労働者のみならず、地域住民のさまざ...
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福島県いわき市の地域医療の中核を担う福島労災病院

公開日 2018 年 01 月 18 日 | 更新日 2018 年 08 月 29 日

福島県いわき市の地域医療の中核を担う福島労災病院
渡辺 毅 先生

独立行政法人 労働者健康安全機構 福島労災病院 院長

渡辺 毅 先生

独立行政法人 労働者健康安全機構 福島労災病院は、開設当初は常磐炭鉱における労働者の労災医療や職業性疾病などの予防・診断・治療のためにつくられた病院です。現在は、労働者のみならず、地域住民のさまざまな急性疾患や地域の高齢化によって増加した生活習慣病・がんの診療に力を入れています。

福島県いわき市の地域医療の中核病院として、救急医療・急性期医療・地域医療支援などの役割を担う同院の院長である渡辺毅先生にお話を伺いました。

地域の医療ニーズに応えられる医療体制の整備

 

当院は、福島県いわき市に位置します。2015年の国勢調査によると、いわき市の人口は約35万人であり、福島県で最も人口の多い都市です。高齢化率も28.10%と、全国平均の26.30%を超えています。このような地域で当院は、「受ける人が主役の医療の実践」を理念に、最善をめざした医療および看護の提供に励んでまいりました。

当院は、1955年に常磐炭鉱における労働災害の発生に対処することを目的として開設されました。常磐炭鉱の廃坑にともない病院の性格も徐々に変化し、現在は18診療科、病床数406床の総合的な病院として、労災医療、職業性疾病の早期発見・予防、リハビリテーションだけでなく、社会の高齢化によって増加した生活習慣病・がんの診療にも力を入れています。

2015年度の外来患者数は、延べ122,133名であり、1日あたり約502名の患者さんがいらっしゃいました。時間外にいらっしゃる患者さんは延べ3,799名、救急車で搬送された患者さんは1,600名を越え、いわき市の地域医療連携の中核病院として救急医療、急性期医療を主な役割としています。そのために、院内の診療体制の整備にも徐々にではありますが、取り組んでいます。

たとえば、従来からの診療機能に加えて、2014年から泌尿器科、2015年からは腎臓内科、糖尿病内科を再開し、透析医療も開始しました。2016年からはリウマチ膠原病内科も再開しました。さらに、地域の病院・診療所・施設からのご紹介や救急医療の要請に対応できる効率のよい診療体制を築くために、トリアージ機能をもつ総合内科(総合診療科)を設置しました。原因不明、または合併症をお持ちの内科疾患の患者さんは、まず総合内科にて診療し、必要に応じて各専門診療科と連携して診療いたします。

地域医療支援病院として地域全体で患者さんを見守る仕組みをめざす

当院は、労働災害医療を主体とする病院から、地域住民を対象とする市民病院的医療機関へ変化し、さらに地域医療連携の中核病院としての機能を整備してきました。これまでの取り組みの結果、2004年2月にはいわき市で初めて「地域医療支援病院」の認定を受けました。2015年度の連携医療施設は175医療機関(医師数239名)、紹介件数は6,485件、紹介率は90.2%、逆紹介率は77.9%と、連携医の先生方から多くのご紹介を戴いて、連携した医療を展開しております。当院は、今後構築が予測される地域包括ケアシステムにおける急性期病院として、地域の医療ニーズに応えられるよう、日々努力して参ります。

地域がん診療連携拠点病院として地域のがん医療の中心的役割を担う

がんの治療は、手術だけではなく、抗がん剤や放射線による治療など多岐にわたります。当院では、患者さんの年齢や体力、社会的環境などを十分に検討し、よりよい治療法をアドバイスし、患者さんが自ら治療法を選択するためのサポートをさせていただきます。当院は、2003年8月にいわき市で初めて「地域がん診療連携拠点病院」の指定を受け、専門的ながん診療の実施やがん診療全般に携わる医師など医療スタッフに対する研修を実施しています。

また、入院して行う治療だけではなく、働きながらなど、通院して治療を受けることもできる「治療と就労の両立支援」を重要なプロジェクトとして実施しています。2009年12月からは「緩和ケア病棟」27床を開設し、痛み・吐き気・息苦しさ、こころの苦痛・不安など、がんにともなうつらい症状を軽減させる緩和治療を行っています。これからも、がんとともに生きる患者さんとご家族の気持ちを尊重し、身体的・精神的な症状の緩和に努めています。

当院は、今後もいわき地区におけるがん医療の中心的な役割を担っていけるよう、チーム医療での活動を通して専門性の高い医療の提供をめざします。

消化器疾患に対する統合的診療を目的とした消化器病センター

当院では、「消化器病センター」を設置し、消化器がんなどの消化器疾患について、診断から治療まで一貫して行える体制を構築し、迅速かつ効率的に、そして患者さんの視点に立った統合的診療(思いやりの医療)の実践をめざしています。消化器内科担当医と外科担当医(消化器領域)が合同カンファランスを定期的に開催し、科学的根拠を持った治療方針を決定し情報共有に基づく円滑で柔軟性のあるチーム医療を実践しています。

2015年の診療実績は、内視鏡検査は7,427件実施し、超音波、CT・MRIなどの画像検査、血管造影、核医学検査も多数実施しています。治療に関しては、胃がん305例、大腸がん219例、肝臓がん186例、すい臓がん118例、そのほかの悪性腫瘍も含めて合計1,055例といわき市では最も多い手術実績を誇っています。また、薬物療法や内視鏡治療などを駆使し、患者さん一人ひとりの病態を考慮した可能な限り低侵襲でQOLに配慮した治療を行っています。

循環器疾患に対する24時間体制による迅速な対応と再発防止への取り組み

当院の循環器科は、いわき市のみならず浜通り地区の循環器疾患の患者さんに対しても、外来診療・入院診療・救急診療・産業保健を通して近隣の医療機関と連携を密にして対応しております。主な対象疾患は、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)・うっ血性心不全・不整脈などです。常勤医6名(2017年11月時点)が常時24時間緊急オンコール体制で急性心筋梗塞などの救急医療に積極的に対応しています。

高齢化の進むいわき市では、様々な合併症(認知症、呼吸器疾患、腎疾患、運動器障害など)をともなったご高齢の循環器疾患患者さんの診療依頼が増えています。当科ではさまざまな職種によるチーム医療で患者さんを中心とした医療を実践します。その一環として、当院は2017年に「心大血管疾患リハビリテーション(Ⅰ)施設」の認定を受け、心大血管リハビリテーションが可能となりました。急性心筋梗塞、狭心症、開心術後、大血管疾患、慢性心不全、末梢動脈閉塞などの患者さんが対象になり、リハビリテーションによってQOL(生活の質)・予後の改善の効果が期待できます。急性期治療を終えた患者さんの社会復帰をサポートし、疾病の再発を予防することで、健康寿命の延長にも貢献したいと思っています。

患者さんが安心して退院できるようサポートする地域包括ケア病棟

手術や検査などが終了した後、すぐに在宅復帰するには不安が残る患者さんに対して、退院準備をしっかり整え、安心してお帰りいただけるようサポートすることを目的として、2016年10月に地域包括ケア病棟を開設しました。当院の医師や看護師、病棟専従のリハビリスタッフなどが、患者さんの在宅復帰に向けて治療・支援を行います。また、医療ソーシャルワーカーまたは担当看護師が患者さんの退院後のケアについてサポートします。当院は、地域の療養型病棟をもつ病院、クリニック、介護施設などと連携を密にし、地域全体で患者さんを支える仕組みづくり(地域包括ケアシステム)の支援をしていきます。

被災地住民に対する啓発・支援活動に努力する

当院は、地域に根差した病院として、地域住民にご理解をいただくために、市民公開講座を定期的に開催しています。年1回のオープンハウスでは病院の全施設を公開し、病院業務に親しみをもっていただくためのイベントや県立磐城高校のオーケストラの演奏会も開催しています。さらに、将来医療職をめざす高校生・中学生のための医療体験として病院見学も定期的に行っています。

オープンハウスにける内視鏡体験
オープンハウスにける調剤体験
 

原発事故被災地の病院として、被災後はホールボディカウンターによる被曝量測定や被爆に関する健康相談も実施しました。現在は、 福島第一原発の廃炉作業に従事する労働者の健康管理・医療支援も出張して行っています。

今後も地域住民に対する啓発活動や健診と連携した地域での保健活動に協力する心算です。

研修医・専攻医・職員の学習活動、育児や親睦活動を支援する

当院は、研修医・専攻医の研修環境の整備に努力しています。産科、小児科、精神科など当院に設置されていない診療科の研修は福島県立医科大学などのほかの医療機関に派遣し、全国の労災病院との連携も可能です。認定看護師・薬剤師などの資格取得に必要な研修や講習も全面的に支援しています。また、職員の育児を支援するため院内保育園も完備しています。

さらに野球部の活動、年2回の定例院長杯ゴルフコンペ、ボーリング大会など職員の親睦のための催しも積極的に行っています。特に、野球部は、昨年(2017年)の東北北海道労災病院野球大会で優勝しました。

新病院を中心とした新しい魅力的な地域づくりをめざす

2018年現在、当院では新築移転を検討しております。移転先の土地について、当院といわき市、いわき明星大学とが協議を進め、いわき明星大学の隣接地であるいわき市中央台に移転することで、2017年5月30日に基本合意しました。現在地から車で15分のところにある、いわき市のなかでも住宅団地が多く立ち並び、人口の集中する地域にあたります。

新病院は、総合診療・救急医療・災害医療機能の強化、脳血管障害や急性冠症候群の診療など、現在のいわき市において医療需要が強いにもかかわらず十分に供給できていない医療機能を現在の病院よりも充実させたいと考えています。また、2011年に起こった東日本大震災の教訓から、新病院には一定期間自立可能なインフラ整備を行う予定です。飲料水や透析用浄化水を含む、病院機能を保つために必要な水の自給、電力の確保が行える新病院を設計し、さらには二酸化炭素の排出が少ない、環境にも配慮した病院をめざします。

また、いわき明星大学看護学部・薬学部・医療技術系学部(2018年開設予定)の学生の実習病院として当院が活用されることによって、いわき市全体の医療従事者の育成にも貢献したいと考えています。

地域のみなさまへのメッセージ

当院は、永年にわたる労働災害医療の実績をいかし、これからも働く方々・市民の健康維持と早期社会復帰に取り組みます。そして、高齢化社会を反映したさまざまな疾患の治療のため、地域医療連携の中核病院として、ただ病気を診るのでなく、当院の理念である「受ける人が主役の医療の実践」に努めてまいります。