福島県いわき市の地域医療の中核を担う福島労災病院

独立行政法人 労働者健康安全機構 福島労災病院は、開設当初は常磐炭鉱における労働者の労災医療や職業性疾病などの予防・診断・治療のためにつくられた病院です。現在は、労働者のみならず、地域住民のさまざまな急性疾患やがんの診療などにも力を入れています。

福島県いわき市の地域医療の中核的な病院として、救急医療・急性期医療・地域医療支援などの役割を担う同院の院長である齋藤 清(さいとう きよし)先生にお話を伺いました。

当院は、1955年に常磐炭鉱における労働災害の発生に対処することを目的として開設されました。常磐炭鉱の廃坑に伴い病院の性格も徐々に変化し、現在は21診療科、病床数399床の総合的な病院として、労災医療だけでなく、職業性疾病の早期発見・予防、リハビリテーション、がん診療や救急医療などにも力を入れています。

当院のある福島県いわき市は、人口は約32万人である一方（2024年3月時点）、福島県の中でも医師が少ないとされている地域です。このような地域で当院は、地域の救急医療を支えるために、いわき市の二次救急（入院や手術を必要とする患者への救急医療）の中核的な役割を担っています。

現在は、病院の老朽化に伴い新病院の建替計画も進んでおり、地域の中核的な病院としてさらに機能などの整備をしていく予定です。

治療から緩和ケアまで、総合的ながん治療を実現

がんの治療は、手術だけではなく、化学療法や放射線治療など多岐にわたります。当院でのがん治療では、患者さんの年齢や体力、社会的環境などを十分に検討して、よりよい治療法をアドバイスし、患者さんが自ら治療法を選択するためのサポートを行っています。

また、入院して行う治療だけではなく、働きながらなど、通院して治療を受けることができる“治療と就労の両立支援”に取り組んでいるほか、がんに伴う痛み・吐き気・息苦しさ・心の苦痛などを和らげる緩和治療まで行っており、総合的ながん治療を実現しています。当院では、今後もがんとともに生きる患者さんとご家族の気持ちを尊重し、身体的・精神的な症状の緩和に努めてまいります。

患者視点に立った思いやりの医療を提供する消化器病センター

当院の“消化器病センター”では、消化器がんなどをはじめとした消化器疾患について、診断から治療まで一貫して行える体制を構築し、迅速かつ効率的に、そして患者さんの視点に立った思いやりの医療の実践を目指しています。消化器内科の医師と外科の医師（消化器領域）が合同カンファランスを定期的に開催することで、科学的根拠を持った治療方針を決定して円滑で柔軟性のあるチーム医療に取り組んでいます。

また、薬物療法や内視鏡治療などを駆使し、患者さん一人ひとりの病態に合わせて可能な限り低侵襲(ていしんしゅう)でQOL（生活の質）に配慮した治療を行っていることも当センターの強みの1つです。

低侵襲な治療に取り組む脳神経外科

2021年4月に開設した脳神経外科には日本脳神経外科学会認定の脳神経外科専門医が在籍しており、脳卒中や脳腫瘍(のうしゅよう)、顔面けいれんなどの脳神経疾患全般の治療を行っています。当科では低侵襲な治療に努めており、内視鏡手術やカテーテルを用いた脳神経血管内科治療だけでなく、3D外視鏡を使ったより体への負担を軽減した精細度の高い開頭手術にも積極的に取り組んでいます。

また、近隣の医療機関とも連携を取り、救急を含めた患者さんの受け入れや転院に対応しています。特に、福島県立医科大学の脳神経外科とは連携を密にしており、医科大学での治療が望ましい患者さんについては速やかな紹介が可能となっています。

当院は、福島県知事より“地域医療支援病院”の承認を受けており、地域の医療機関との連携体制強化を図ってまいりました。地域医療支援病院として、地域医療連携室を通じて病診登録医制度を積極的に推進することで、患者さんに医療を切れ目なく提供することを目指しています。

また、“専門・認定看護師同行訪問看護”のシステムを開設しました。訪問看護師の方々が日々のケアでお困りの際は、当院に所属する日本看護協会認定のがん看護専門看護師や皮膚・排泄ケア認定看護師が同行訪問し、ケアの方法をご提案することなどが可能です。

今後もこういった取り組みによって、地域医療体制の中核を担う病院として機能していきたいと考えています。

若手医師の皆さんへ

若手医師の皆さんには、まず患者さんに優しい医師になってほしいと願っています。

また、脳神経外科医の立場からコメントをすると、“チャレンジする気持ち”を忘れないで頑張ってほしいです。チャレンジ精神をもって日々の業務に取り組み、患者さんのため、地域のために貢献できる医師を目指していただきたいと思っています。

地域の皆さんへ

『心通い合う良質で信頼される医療・看護を実践し、勤労者や地域の皆様の健康を支えます』という当院の理念に基づき、スタッフ一同が信頼される病院を目指して日々業務に取り組んでいます。これからも、チーム医療を軸とした質の高い医療の提供だけでなく、地域の医療機関などともさらに連携を密にして患者さんに寄り添った医療を提供できるよう努めてまいります。

また、当院は急性期病院ではありますが、地域に愛される病院として未病の方も含めて地域の方々が集える場所でありたいと考えています。何かお困りのことがあれば、ぜひ気軽にご相談ください。

*病床数や診療科、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年3月時点のものとなります。