院長インタビュー

セーフティネットの役割を持ち、地域へ急性期医療の提供に尽力する敦賀医療センター

セーフティネットの役割を持ち、地域へ急性期医療の提供に尽力する敦賀医療センター
半田 裕二 先生

医療法人 保仁会 泉ヶ丘病院 顧問

半田 裕二 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年09月26日です。

敦賀医療センターは福井県敦賀市に位置し、地域医療や政策医療のひとつである重症心身障害児(者)への治療を提供しています。また、地域の救急患者さんの受け入れも行っており、さまざまな分野で地域医療へ貢献するために尽力しています。同院の取り組みについて、独立行政法人国立病院機構 敦賀医療センター 院長 半田裕二先生にお話を伺いました。

当院の前身は1898年3月に開院した敦賀連隊区司令部(つるがれんたいくしれいぶ)敦賀衛戌病院(つるがえいじゅびょういん)です。古くから地域で医療の提供を行ってきました。2015年には、現在の名称である「敦賀医療センター」に改称しました。病院名を改称する際に、ここ敦賀の地で医療を提供していくのだからという意味を込めて、病院名に「敦賀」を入れ、新たなスタートを切りました。

以下では当院でも特に尽力している部門についてご紹介します。

重症心身障害児の入院診療(敦賀医療センターよりご提供)

当院では重症心身障害児(者)の診療を行っています。重症心身障害児とは、重度の知的障害と重度の肢体不自由を重複した状態の子どものことを指します。重症心身障害の診療は国の政策医療のひとつでもあります。

政策医療は、「政策医療」という大きい分野の中から、さらに3つの種類に分類されます。1つ目は災害医療や国際医療協力を行う「危険管理・国際貢献」、2つ目は、がんなどの「高度先駆的医療、難病疾患などに対する医療」、3つ目は「歴史的・社会的な要請・ほかの設立主体では困難な医療」です。重症心身障害に対する診療は、この3つ目の歴史的・社会的な要請があり、他の設立主体では困難な医療に位置付けられます。この政策医療は国立病院機構が積極的に対応し、提供していくものだと考えています。

当院では、小児の一般診療と重症心身障害児(者)の外来を設置し、地域の子どもたちの健康を守るために尽力しています。たとえば、重症心身障害児のアフタースクールやショートステイなどがあります。

現在は重症心身の患者さんでも自宅で過ごすことが増えてきています。ご自身の家で過ごせるというのはとてもよいことだと思います。ただし、ご自宅で治療を行うということですから、病状の急変など、在宅では対応できない場合には当院のように重症心身障害児(者)の治療を提供している医療機関のサポートが必要不可欠と考えています。当院がサポートを行うことで、患者さんやそのご家族が安心して生活できるよう、今後も尽力していきます。

呼吸器リハ研修の様子(敦賀医療センターよりご提供)

地域の一次救急、二次救急の受け入れを中心に小児科救急の輪番病院として担当しています。輪番病院とは、地域の医療機関で救急患者さんの受け入れを行う曜日や時間帯を決めて担当の日には優先的に救急患者さんを受け入れる救急体制を取っている病院のことです。

特にお子さんが急な発熱や嘔吐を引き起こしたとき、ご家族はとても心配になると思います。夜間でも小児の救急受け入れをすることで地域の子どもたちの健康とご家族の安心を守ることに尽力しています。

一次、二次救急は外傷などの整形外科分野での治療を必要とすることが多くあります。その点、当院は救急患者さんを多く受け入れているため、整形外科での診療が充実しています。当科では、患者さんやご家族への説明、対話を大切にし、ご意向を尊重して今後の治療方針を決めています。また、リウマチやスポーツ損傷、小児整形外科などの診療の場も設けていますので、お気軽にご相談いただきたいと思います。

そのほか、重症心身障害児(者)の外傷も受け入れています。重症心身障害児(者)は骨が弱く、筋力も低下しているため軽い転倒で骨折する場合もあります。また、それらの治療後のリハビリテーションをしているときに骨折してしまう危険性もあります。これまでの重症心身障害児(者)に対する経験を生かし、地域の救急医療や重症心身障害児(者)の健康な体を守るために、今後も整形外科を充実させていきたいと思います。

多職種によりがんカンファレンス(敦賀医療センターよりご提供)

2007年1月に地域がん診療連携拠点病院に指定されました。地域がん診療連携拠点病院に指定されたことを受けて、地域のがん診療に今まで以上に力を入れています。治療だけでなく、治療後のリハビリテーションや就労支援も行っています。

がん治療では、腹腔鏡を用いて患者さんの体に負担の少ない治療を提供しています。患者さんの体に負担の少ない治療を提供することで、早期の社会復帰も期待できます。

血液内科では高齢者を中心に、血液がんや感染症の治療を行っています。血液がんは3つの病気に大別されます。1つ目は骨髄の中の未熟な造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)ががんになってしまう白血病です。2つ目は白血球の1つであるリンパ球ががんになってしまう悪性リンパ腫、そして3つ目が、体を守る抗体をつくる形質細胞ががんになってしまう多発性骨髄腫です。

これらの血液がんに対する治療として化学療法を積極的に実施しています。

がん治療にともなう体力や筋力の低下がみられることがあります。病状が悪く満足に運動ができないことや入院治療で筋力が衰えることが原因だと考えられます。リハビリテーションでは、患者さんとともに目標を決め、二人三脚で取り組みます。

治療後、就労を考えている患者さんはたくさんいらっしゃいますので、社会復帰を目指して、体力づくり、筋力回復のためにリハビリテーションを実施しています。近年、リハビリテーションの充実を図るためにリハビリテーションスタッフを増員し、リハビリテーション科の拡張をしました。治療だけではなく、治療後まで患者さんに寄り添う姿勢で今後も取り組んでいきます。

最近ではがん患者さんの就労支援のために、地域のハローワークと連携を取っています。治療のために仕事を退職し、治療後にまた就労するためには、さまざまなフォローが必要になります。がん患者さんの中にはまだ体が本調子に戻らず就労のサポートが必要な場合や、ご自分の希望する職種や勤務体制の企業を探すには一人では難しい場合も多々あると思います。そのため、地域のハローワークと連携し、就労を希望するがん患者さんをサポートしていきたいと思います。

当院では災害発生に備えた訓練を1年に一度実施しています。敦賀市には原子力発電所があり、大規模な地震が発生し、原発事故にまで発展した際には入院している重症心身障害児(者)の皆さんを連れて避難しなくてはなりません。

東日本大震災にて発生した原発事故を受けて、災害訓練を充実する必要があると強く思いました。そのため当院スタッフだけでなく国立病院機構のDMAT(災害派遣医療チーム)が合同で訓練しています。大規模な災害が発生した場合にスタッフはどのように動けばよいのか、患者さんへの対応などを確認しています。

また、敦賀市に原子力発電所があることをふまえ、被ばく医療の提供ができるように体制を整えています。訓練や被ばく医療などの事前準備をしていなければ、いざ災害が発生した際に困惑してしまいます。そのため日ごろから訓練し、スタッフに意識づけることもひとつの目的としています。

地域の急性期医療から、次の医療まで提供できる病院を目指しています。政策医療の一環であるがん診療や重症心身障害児(者)の治療やサポートなど、当院だからこそ行っていかなくてはならない分野も多くあります。地域医療を提供し、国立病院機構として政策医療も提供してまいりますので、困ったことが起きたら気軽に来院してほしいと思います。

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