社会医療法人 嵐陽会 三之町病院は、1956年に当時の新潟県三条市三ノ町において三之町診療所として開設されました。1967年に現在の名称に変わり、2009年には救急医療の実績が評価されて社会医療法人となりました。
地域の二次救急を支える医療機関として、三之町病院はどのような取り組みを行っているのでしょうか。理事長と病院長を兼任される森 宏先生にお話を伺いました。
三之町病院は、新潟県県央地域で急性期医療を中心に提供している病院です。高齢化が進む地域のニーズに対応するため、県央地域で唯一の回復期リハビリテーション病棟も有しています。
病床数210床と12の診療科を構え、地域の医療機関と連携しながら若い世代からご高齢の方々まで幅広い患者さんの受け入れを行っています(2018年4月時点)。
当院は、長きにわたり脳神経外科を中心とした救急医療に力を入れてまいりました。その実績が評価されて2009年には社会医療法人となり、2018年現在も積極的に救急搬送を受け入れています。速やかな救急搬送を行うため、当院では地域での「顔の見える関係」を大切にし、救急隊とも密に連携を取っています。具体的には、年に3回の症例検討会を行っています。症例検討会では搬送時や搬送後の対応に問題はなかったか、搬送後の患者さんの状態など、お互いの情報を共有しています。情報共有を行うことで、自身の対応を振り返ることができ、次の救急搬送時に改善することが可能となります。病院、救急隊の双方が高め合うことで、地域のみなさんに安心して生活していただけると考えています。
地域の救急医療を守っているという自負を持ち、今後も速やかな搬送、処置を行っていきます。
当院では、「信頼される医療を提供し、地域の人たちのために貢献する」を理念に掲げ、診療にあたっています。なかでも特徴的な診療について、いくつかご説明します。
当院では脳神経外科に注力しており、脳卒中や頭部外傷を中心に、患者さんに安全で負担の少ない治療を提供しています。脳卒中は早期治療が重要です。発症してからなるべく早く治療することで、後遺症も残りにくくなります。そのため、放射線科やリハビリテーション科などの他科との連携や、先ほど述べたような救急隊と連携することで、迅速な治療を行っています。
また、脳卒中治療では、急性期治療を終えたあとのリハビリテーションも重要です。当院は県央地域で唯一の回復期リハビリテーション病棟を有しており、急性期から回復期まで一貫した治療を提供しています。
2007年に回復期リハビリテーション病棟を設置し、2018年4月現在、20名ほどのリハビリ専従スタッフで患者さんの支援にあたっています。特に当院では言語聴覚士が多く、患者さんの嚥下機能の評価、指導などに注力しています。
そのほか、脳卒中後の患者さんに対して、自動車の運転評価も実施しています。総合的な判断のもと、必要な場合には自動車学校におつなぎしています。少しでも事故の抑止力となるよう取り組んでいます。
痙縮とは、脳卒中後に上肢や下肢のつっぱりが強くなる後遺症のことをいいます。手指が開きにくい、肘が曲がるなどの症状がみられ、生活に大きな影響を与えます。
当院では、手足や四肢の緊張をゆるめる「ボツリヌス治療」を行っており、患者さんの負担を少しでも軽くできるよう尽力しています。2018年6月には、痙縮に関する市民公開講座を行いました。まずは「痙縮」を知っていただき、その後少しでも多くの方が痙縮の治療を通して安心した生活を取り戻せるよう取り組んでいます。
脳神経疾患や救急医療のほかに特発性正常圧水頭症の診療にも注力しています。
特発性正常圧水頭症とは、脳脊髄液(髄液)が脳内の脳室やくも膜下腔に溜まり、周りの脳を圧迫してしまう病気です。歩行障害や認知障害、排尿障害など、さまざまな症状を引き起こします。
当院では、溜まった髄液を少量取り除いて経過を観察するタップテストを行い、症状の改善が見られれば手術を行います。
特発性正常圧水頭症は手術で症状が改善する見込みがあるため、「治る認知症」ともいわれています。治療を行えば改善する可能性があり、正しい診断と治療が重要となります。
特発性正常圧水頭症は脳卒中などの急性期疾患と違い、担当した医師が気付かなければ、治療に結びつきません。そのため、「県央地区認知症担当医ネットワーク」の一員として、地域で認知症治療を提供する先生方と症例検討を行うなど、連携を取りながら診療を行っています。
スタッフが安心して働けるよう、当院ではスタッフのための院内附属保育所を併設しています。さらには2011年10月に、新潟県より、当院保育施設(2010年4月開設)が「子育て支援の一環として進められている事業所内託児所の2011年度モデル事業」の対象として選定されました。1人でも多くのスタッフが、長く安心して活躍できるよう支援していきたいと考えています。
当院では、インドネシアやフィリピン、ベトナムなどから来日した看護師も活躍しています。日本で海外の看護師候補生の養成を始めた2010年当初、看護師国家試験に合格した3名のうち2名は当院で学んだ研修生でした。
現在でも、海外からの看護師候補生を継続的に受け入れている実績があるため、当院を選んで学びに来てくれる方も増えてきました。他院で資格を取った方が移ってきてくれたり、一度帰国した方が再び戻ってきてくれることもあります。国籍は異なっていても、「患者さんを救う」という同じ志を持ったスタッフが働いてくれていることは、当院にとって誇りであると考えています。
当院にはさまざまな症例の患者さんが運ばれてきます。脳神経外科が強みではありますが、それだけではなく総合的な力を付けたい医師の育成や、総合診療の実践の場になると考えています。
急性期のみの病院では、治療した患者さんがその後どのように過ごされているかわからない場合が多くあります。その点、当院では回復期まで診ることができますので、急性期の治療を終えた患者さんがどのように回復されたか、退院後の社会的な支援など、一貫して学べる病院であるといえます。
さらに、地域に根付いた病院でもあるため、私自身、脳神経外科の医師ですが、この病院で働くようになり、総合診療の力が身についたとも感じています。
急性期から回復期まで、さらには地域医療を学べる病院として、若い先生方には新しい知識やフレッシュなエネルギーを持って、ぜひ当院へお越しいただけたら嬉しいです。
社会医療法人 嵐陽会 三之町病院 理事長
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現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。