院長インタビュー

地域に根差したトータルケアの提供─学ぶ心を大事にする札幌しらかば台病院

地域に根差したトータルケアの提供─学ぶ心を大事にする札幌しらかば台病院
遠藤 高夫 先生

札幌しらかば台病院 名誉院長、札幌医科大学 臨床 教授

遠藤 高夫 先生

目次
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北海道札幌市豊平区に位置する社会医療法人 康和会 札幌しらかば台病院は地域に根差した医療提供に尽力しています。同法人が運営している施設で連携し、急性期から慢性期、在宅医療までのトータルケアを提供することができます。また、同院は社会貢献活動に熱心に取り組み、町内会との連携やへき地医療などさまざまなことに尽力しています。同院や同法人の理念のひとつである「学ぶ心」について、名誉院長の遠藤高夫先生にお話を伺いました。

札幌しらかば台病院外観(札幌しらかば台病院よりご提供)

札幌しらかば台病院は一般病床60床、医療療養病床100床、障害者等入院施設一般病床102床を設置し、急性期から慢性期や在宅復帰まで一貫した医療提供をすることができます。(2018年10月現在)

また、法人関連施設では訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所、在宅介護予防センターの設置、通所リハビリテーション(デイケア)を実施し、医療から介護へのシームレスな展開をしています。そのほかにもサービス付き高齢者向け住宅「しらかばの杜」を新たに開設しました。

 

内観(札幌しらかば台病院よりご提供)

 

急性期医療では、内視鏡を用いた検査や治療を提供しています。特に内視鏡での検査や治療は力を入れており、患者さんの体に負担の少ない経鼻内視鏡やNBI内視鏡、バルーン小腸内視鏡などさまざまな内視鏡を導入しています。消化器内科では、これらの内視鏡を使用して内視鏡止血術や閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)に対する内視鏡的減黄術を実施しています。また、胃瘻栄養(いろうえいよう)をいち早く開始し、胃瘻の作成や管理の経験やノウハウがあります。胃瘻とは、口で食事をすることができなくなった方や、食事の際に誤嚥(ごえん)することが多く誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)のリスクがある方の胃に栄養を直接入れるための経路のことです。

口腔ケアをしっかりと行うことで誤嚥性肺炎の予防につながります。以下では当院で実施している誤嚥性肺炎の予防についてご紹介いたします。

 

内視鏡検査の様子(札幌しらかば台病院よりご提供)

嚥下機能が低下している患者さんは口から食事をした際に、飲み込むことができない場合や誤嚥してしまうことがあります。誤嚥性肺炎とは、口腔内(こうくうない)の細菌が誤嚥をきっかけに気道に入ることで発症する肺炎です。

当院では嚥下機能の低下がみられる患者さんに対して言語聴覚士が中心になってリハビリテーションにあたっています。患者さんには口で食事をしてほしいと思い、可能な限り予防やリハビリテーションを行います。言語聴覚士が嚥下機能の評価をして、栄養サポートチームや消化器内科と連携を取ります。言語聴覚士の評価に基づいて患者さんが口から食事ができる食事を調理し、提供してます。消化器内科は、嚥下機能の低下で口からの食事が難しい患者さんに対し、胃瘻を作成することがあります。

厚生労働省が発表した2017年人口動態統計月報年系の概況では性別ごとにみた死因順位に悪性新生物(がん)や心疾患、脳血管疾患、老衰に次いで肺炎が死因のひとつとして発表されています。誤嚥性肺炎の予防を行い、患者さんが口から食事をする期間が少しでも長くなるように尽力しています。

 

嚥下機能訓練の様子(札幌しらかば台病院よりご提供)

神経内科では、パーキンソン病多系統萎縮症などの神経変性疾患、筋萎縮性側索硬化症(以下:ALS)などの運動ニューロン障害がみられる病気の入院治療や呼吸管理を行っています。たとえば、ALSは手足やのど、舌や呼吸に必要な筋肉が徐々に動かなくなっていきます。呼吸に必要な筋肉が衰えていくと、自発呼吸が難しくなり、命の危険もあります。そのため、進行したALSの患者さんには呼吸管理を実施することも少なくありません。

神経内科に所属している医師はALSの患者さんの治療や呼吸管理に尽力しており、神経難病の治療を提供することで幅広い疾患の患者さんを支えていきたいと思います。

 

しらかばの杜外観(札幌しらかば台病院よりご提供)

サービス付き高齢者向け住宅「しらかばの杜」は、訪問看護や通所介護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援、介護予防センターを併設した施設です。当院との距離も近く、入居者の病状が変化した際には、バックアップできる体制を整えています。医療や看護、介護を提供していますので安心して入居できると思います。

しらかばの杜には大浴場が設置してあります。入居者の中には立ち上がることが難しい方や寝たきりの方もいます。そういった方々も温泉が楽しめるようにストレッチャーに寝たままや椅子に座ったままでも入浴ができるように工夫してあります。また、中庭北側が豊平区の調整緑地となっていますが、地域の皆さまの憩いの場になればと思い遊歩道の整備を行いました。お花見やバーベキューなどを楽しんでいただけていると思います。また、春には桜が咲き、夏にはハヤブサが営巣するなど、自然を感じることができます。

 

さまざまな状態の入居者に対応した入浴器具(札幌しらかば台病院よりご提供)

 

東月寒白樺クラブでの出張健康講座(札幌しらかば台病院よりご提供)

社会医療法人康和会は、地域に根差した医療提供、社会貢献をすることをひとつの使命だと考えています。法人設立20周年を迎えた2017年には、同法人の加藤康夫理事と東月寒地区町内会連合会の有田京史会長と記念対談を行いました。記念会談の中で当院が実施した地域の皆さまに向けた健康講話をとても評価してくださり、有田会長から、「もっと広く町内会へ呼びかけていただきたい」と要請を受けました。この言葉をきっかけに当院と町内会の連携が始まりました。

 

とよひらまちづくりパートナー登録証手交式の様子(札幌しらかば台病院よりご提供)

また、2018年5月にとよひらまちづくりパートナー制度に登録されました。この制度は、地域のまちづくり活動への意欲的な参加、協力をしている企業や学校、スポーツチームなどの多くの団体が登録されています。たとえば、環境美化や地域交流、健康増進など地域とともにさまざまな活動に参加・協力しています。

 

地域健康フェアの様子(札幌しらかば台病院よりご提供)

冬には地域の子どもたちと一緒にエスキモーの家として知られている「イグルー」を作っています。イグルーとは、踏み固めた雪を長方形に整えてレンガのように積み上げて作るスノーハウスです。秋田県などで見られるかまくらのようなもので、中に人が入って食事もできます。

 

2018年2月に行ったイグルー作りの様子(札幌しらかば台病院よりご提供)

地域に求められる医療の提供だけでなく、多くの活動を通して地域との密接な交流をしています。

 

2017年7月に開催された東月寒童夢セーフティフェスタの様子(札幌しらかば台病院よりご提供)

地域との交流のひとつに東月寒童夢セーフティフェスタでの出展をしています。東月寒童夢セーフティフェスタでは警察署や消防署、陸上自衛隊第18普通科連隊が協力し、炊事車やパトカー、福祉車両が札幌ドーム南ゲートおよび駐車場に展示されます。主に地域の子どもたちに向けて災害を想定した救護活動やシートベルト衝撃体験などのさまざまな体験をすることができます。2018年7月に開催されたときには、当院スタッフは車椅子の体験や血圧の測り方などを子どもたちと体験していました。

さまざまな取り組みを通じて地域の皆さまと交流することで地域とよりよい関係を作ることができるのだと思います。

平日は就労や就学で受診するタイミングを逃している方々のために土曜日の外来診療を行っています。外来診療だけでなく、胃カメラやCT、ピロリ菌検査も実施しています。ピロリ菌は胃がんの原因のひとつとも言われており、早期発見、除菌が望まれています。そのため、土曜日でも診療を行うことで、病気の早期発見や治療につなげていければよいと思います。

また、地域の皆さまや地域企業に向けた健康講座も開始しています。地域の皆さまとの距離を縮めることができますし、親しみを持ってもらうよい機会だと思っています。また、各講座には質問コーナーも設けていますので、ご自身が気になっている症状についてや、講座のなかでもっと知りたいと思ったことなど質問してもらっています。

当院ではへき地医療のひとつとして医師派遣事業を実施しています。2017年度にはむかわ町穂別地区、羅臼町に医師を派遣し、診療を行いました。2018年度からは、夕張診療所への医師派遣を始めています。当院から近い町でも104キロ離れており、中でも羅臼町は当院から450キロ離れた地になります。北海道の広大さを実感するとともに、へき地への医師派遣の重要性を感じています。派遣先の地域の方々に、快く迎え入れていただくことも多く、皆さまとの関わりを大事にし、医療提供に尽力いたします。

社会医療法人 康和会の基本理念は3つあります。1つは心のこもった医療、2つ目は学ぶ心、3つ目が社会への貢献です。学ぶ心は私や加藤理事長の恩師にあたる故和田武雄先生がおっしゃっていた言葉のひとつです。和田先生は内科の医師たちに「内科の医師は患者さんを全体的に診るが、病気の本体を洞察したうえで診察をしましょう」と説いていました。その言葉に薫陶を受けた加藤理事長は、「学ぶ心」を康和会の理念のひとつとしました。

日々の診療から得られる知識や経験だけでなく、自ら研究していろいろなことを学んでいってほしいと思います。康和会では、スタッフ一同が学ぶ心を忘れないように、年に1回研究発表会を実施しています。研究発表会では、院内から20題ほど提出し、より優れた研究内容を発表したスタッフを表彰します。

この研究をもとに、自身が在籍している学会で発表をするスタッフもいます。学会活動にも積極的に取り組んでいるスタッフは多く、英語論文を発表し医師としてのキャリアにもつなげています。

 

定期開催されているCPCの様子(札幌しらかば台病院よりご提供)

また、院内だけでなく近隣の先生方とともに行う臨床病理検討会(以下:CPC)を定期的に開催し、病気についての理解を深めるために実施します。臨床病理検討会とは、病理解剖症例をもとに治療方法を振り返る勉強会です。当院には一般社団法人 日本病理学会に認定された病理専門医が所属しています。病理専門医の病理診断をもとに各科のカンファレンスやCPCでの活発な検討会をしています。

 

第14回拡大内視鏡研究会、当番世話人挨拶─遠藤先生(札幌しらかば台病院よりご提供)

2017年9月16日に「第14回拡大内視鏡研究会 原理から見た拡大所見」を北海道で開催しました。拡大内視鏡研究会は昭和大学の工藤進英教授が2003年に第1回を東京国際フォーラムで開催したことから始まります。

第14回では当番世話人を私が、代表世話人に工藤教授や青森県立中央病院の吉田茂昭先生が務めてくださいました。内視鏡研究を牽引する研究会のひとつを北海道の地で開催できたことがとてもうれしく、また光栄に思います。

北海道での開催はスタッフ一同の「学ぶ心」があったからこそ実現できたのだと思います。

 

第14回拡大内視鏡研究会会場に設置されていた看板(札幌しらかば台病院よりご提供)

医師はさまざまな資格を取ることができます。特に、学会から認定を受けている医療機関での研修は実りの多いものがあります。自分の思い描く医師になるためには、必要な資格を取ることが難しくても、まずはチャレンジしてみてください。学ぶ心を忘れずに、医師としての知識、手技を磨いていってください。

急性期から慢性期、介護まで一貫した地域完結型の医療を提供し、地域に根差した病院を目指しています。医師や看護師などの医療従事者からソーシャルワーカーなど多くの職種のスタッフも在籍していますので、なにか困ったことがあったら気兼ねなくご相談ください。地域の皆さまの困っていることの解決の糸口を見つけるお手伝いをいたします。

医療提供にくわえて、社会貢献にも今まで以上に尽力して参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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  • 札幌しらかば台病院 名誉院長、札幌医科大学 臨床 教授

    遠藤 高夫 先生

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