北海道釧路市にある独立行政法人 労働者健康安全機構 釧路労災病院は、地域がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院としての役割を担っています。患者さんが釧路のみならず、根室、阿寒、知床などの広い範囲からいらっしゃる、地域の中核病院です。今回は、同院のがん医療への取り組みや、診療科などについて、院長である野々村 克也先生にお話を伺いました。
当院は1960年に、勤労者医療の中核的役割を担う労災病院として開院しました。2009年には、厚生労働省より地域がん診療連携拠点病院に指定され、2012年には、北海道から地域医療支援病院に承認されました。
当院の周辺には炭鉱があり、開院当時は石炭の採掘事業が活発で、ケガを負う方も少なくありませんでした。ほかにも、林業や水産業などの労働災害に対応するため、そして地域の方々の診療に対応するために当院は開院しました。その頃当院にいらした患者さんは、勤労者の方の割合が多かったのですが、昨今は地域の高齢者の方の割合のほうが多くなっており、高齢者の方々に必要とされる、がん医療などにも注力しています。
当院にある勤労者医療総合センターの治療就労両立支援部では、「病気になっても働き続けたい」という勤労者の方々に向けた、相談窓口を開設しています。勤労者の方一人ひとりに、これまで以上に寄り添って対応できるよう、メディカルソーシャルワーカーの増員をするなど、力を入れて取り組んでいます。
当院は厚生労働省より地域がん診療連携拠点病院に指定されており、検査から治療、そして緩和ケアまでを提供しています。特に、消化器がんに関しては、診療を行う以外にも、臨床試験などに参加し、治療開発に協力しています。また、乳がんに関しては乳腺外科を備えており、乳がん看護認定看護師*などの、乳がんの知識が豊富なスタッフによるチーム医療で、治療にあたっています。
当院のがんの治療法は、手術や放射線治療のほかにも、がん薬物療法専門医*が在籍しているため、薬物療法が可能です。たとえば、がん細胞の増殖や転移を引き起こす特定の分子だけを狙い撃ちし、機能を抑えることができる分子標的薬や、がんによってブレーキがかかった免疫機能を活発化させ、がん細胞へ攻撃できるようにする免疫チェックポイント阻害薬などを使用した治療にも対応しています。
当院が提供している緩和ケアとは、がんによる痛みや吐き気などの身体的負担だけでなく、気分の落ち込みなどの精神的負担などを軽減させることを目的としたケアのことで、診断時から治療、そして患者さんの最期まで提供されます。当院は、患者さんが自分らしい生活を送れるように、緩和ケアチームで尽力しています。
ほかにも、がん患者さんの不安の軽減や、治療への活力を盛んにすることを目的として、がん患者さんやご家族が集まり、悩みを話したり情報交換を行ったりする、がんサロンの「ひなたぼっこ」を毎月開催するなど、がんの患者さんやご家族に寄り添ったがん医療を提供しています。
乳がん看護認定看護師…日本看護協会より認定された看護師
がん薬物療法専門…特定非営利活動法人 日本臨床腫瘍学会より認定された専門医
当院は勤労者の方々や、地域の方々に必要とされている医療を提供しています。本項では、そのなかの4つの部門をご説明いたします。
消化器病センターは、内科と外科の消化器部門が統合したセンターで、消化器系の病気の診療を行っています。当センターには、消化器病専門医*が数名在籍しています。また、消化器内視鏡専門医*も在籍しているため、患者さんに可能な限り負担がかからないような内視鏡検査を心掛けています。
脳神経外科は、脳・脊髄外科センターと末梢神経外科センターによって構成されています。脳卒中、手足のしびれ、腰痛など、高齢者の方々に多い病気などに対応しています。脳神経外科専門医*が数名在籍しています。
神経内科は、脳、脊髄、骨格筋、末梢神経の病気を、内科的に診療しています。パーキンソン病や、小脳変性疾患などの治療が難しいとされている病気も、脳神経外科と連携を取りながら診療を行っています。神経内科専門医*が在籍しています。
形成外科は、全身の表面部分の病気や、けがなどに対応しています。やけどや傷、顔面骨折、乳がんによって切除した乳房再建、母斑のレーザー治療などの診療を行っています。
消化器病専門医…日本消化器病学会から認定された専門医
消化器内視鏡専門医…日本消化器内視鏡学会から認定された専門医
脳神経外科専門医…日本脳神経外科学会から認定された専門医
神経内科専門医…日本神経学会から認定された専門医
入院設備がない診療所などにかかっている患者さんに、入院の必要性が生じたときは、当院に入院していただき、当院の医師と診療所の主治医の2人主治医制による診療を行ったり、当院の医療機器をほかの医療機関の先生と共同利用するなどの取り組みを行い、地域医療支援病院として機能しています。
当院は、医療機関の方々と円滑で密な連携を図るために、地域医療連携総合センターを設立しています。
当院の全ての科は、大学病院とつながりがあります。消化器疾患に関する内科的な治療、外科的な治療にも積極的にあたっていますし、内視鏡も頻繁に使用しています。症例数や経験を積むといった点では、特に満足していただけると考えていますので、ぜひ、当院で研修していただければ、と考えています。
患者さんが今後生活するにあたって、何がベストなのか。患者さんが現在どのような生活をされていて、今後どういった人生設計を考えられているのか。治すことだけを目的とした治療だけではなく、患者さんのライフプランまでを考慮をした医療を提供させていただきます。そして、患者さんには心置きなくご相談いただければと思っています。
労災病院は、勤労者の方に向けた病院というイメージで、敷居が高いと思われている方もいらっしゃると思いますが、勤労者ではない高齢者の患者さんにも寄り添った医療を提供しております。何かあればお気軽にお越しください。当院は地域の方々のために、職員一同、尽力してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
釧路労災病院 院長、北海道大学 名誉教授
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。