院長インタビュー

地域に寄り添い、患者さんと共に歩む名古屋第二赤十字病院

地域に寄り添い、患者さんと共に歩む名古屋第二赤十字病院
佐藤 公治 先生

名古屋第二赤十字病院 院長、名古屋大学 臨床教授

佐藤 公治 先生

目次
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名古屋第二赤十字病院は名古屋市東部に位置し、病床数812床、職員数1,874名(2020年4月時点)の総合病院です。地元では“八事日赤(やごとにっせき)”と呼び親しまれる同院は、地域の皆さんに寄り添った医療を提供することを目的に、総合病院としてさらなる発展を続けています。同院で行われている取り組みについて、院長の佐藤(さとう) 公治(こうじ)先生にお話を伺いました。

名古屋第二赤十字病院 外観
名古屋第二赤十字病院 外観

当院は、1914年に日本赤十字社結核撲滅準則に基づき、愛知支部の結核療養所として開設され、1950年に名古屋第二赤十字病院と改称して以来、総合病院として発展を続け、2014年には創立100周年を迎えました。救急医療および高度な医療、そして地域医療連携などにおける、地域の基幹病院として担ってきた歴史と伝統を守りつつ、赤十字病院としての国内外における災害救護・医療救援などにも引き続き積極的に取り組んでいきたいと考えています。

救急医療では、愛知県から救命救急センターの指定を受け、24時間体制で1次~3次まで全ての救急に対応しています。

年間の救急車搬送件数は年々増加し、2018年1月から2018年12月の1年間では12,449件を受け入れています。なお、2018年12月31日までに運営を開始した全国289か所ある救命救急センターの中でも受け入れ数が12,000件を超えるのは当院を含め2施設*でした。

また、3次救急医療では緊急性が高い重症患者さんに対する医療を提供しているため、集中治療室での治療が必要になります。迅速に高度な医療を提供できるように職員の配置や医療設備の充実を図り、地域の救急医療を守ってまいります。

*2018年12月31日までに運営を開始した全国289か所の救命救急センターを対象にした、厚生労働省が発表している『平成30年救命救急センターの評価結果(実数)』より

2018年3月にJCI(Joint Commission International)による認証を取得しました。

JCIとは、患者安全と医療の質向上について、厳格な基準を持つ国際的な医療施設評価機構のことを指します。東海3県で、当院が初めての認証を得ることができました。JCIによる認証は3年毎の更新制度があり、常に改善が求められます。実際、JCI認証の取得にあたって求められた“院内に継続した改善活動が行われる仕組みを有しているか”という基準は、印象的でした。常に課題に対する改善策を考え、また改善活動につなげる仕組みがあることにより、医療の安全性や質を高めていくことにつながると実感しています。

当院は、集中治療部(ICU、PICU、CCU)、脳卒中センター(SCU)、新生児集中治療室(NICU)、母体・胎児集中治療室(MFICU)、腎臓病総合医療センターなどの専門診療部門を有し、より専門的な医療の提供を行っています。

高度急性期医療を提供している循環器内科では、患者さんの状態をしっかりと見極め、一人ひとりに合った医療が提供できるように対応しています。急性心筋梗塞や不安定狭心症、重症不整脈、急性心不全などの病気をもつ患者さんに対するカテーテル治療に加え、バイパス手術が適応となるケースにおいても、しっかりと対応可能な体制を整えています。

整形外科では、救急外傷や関節疾患、肩こりや腰痛などの脊椎・脊髄疾患に対する外科的治療を中心に診療しています。

特に、脊椎・脊髄疾患の診療に力を入れている脊椎脊髄センターでは、患者さんの体への負担が少ないとされるMISt(最小侵襲脊椎安定術)*を得意としています。

2009年4月、MISt手技の安全な普及を目的として、日本MISt研究会が結成されました。私も、日本MISt研究会の結成には発起人の1人として関わり、症例検討会や手術見学セミナーの幹事として活動を続けています。低侵襲手術の確立をした創生期から脊椎・脊髄治療をセンターとして、さらなる発展を目指すとともに、低侵襲手術の提供によって高齢化社会における健康寿命の延伸に寄与してまいります。

また、最新の治療や技術向上を追求しながらも、地域を大切にすることを心がけています。全国から見学者も多くいらっしゃいますが、医療者向けの八事整形医療連携会や市民向けのロコモ予防講座など、地域として広がりのある活動を以前から活発に行っており、正しい知識の普及と啓発に努めています。

*MISt(最小侵襲脊椎安定術):腰椎変性すべり症や腰部脊柱管狭窄症などの腰椎変性疾患や、転移性脊椎腫瘍などに対して用いる手技の総称。

なお、当院の(やなぎ つとむ名誉院長は、脊椎・脊髄疾患及び認知症の研究に貢献した功労者として、2018年に行われた日本医師会設立71周年記念式典で日本医師会最高優功賞*を受賞しました。柳名誉院長の主な功績は、脳神経内科の中でも脊椎脊髄分野にあります。昭和50年度 厚生省特定疾患・後縦靱帯骨化症調査研究班に参加するなど、脊椎靱帯骨化症や変形性頚椎症などに対する研究において大きく貢献しました。

*日本医師会最高優功賞:長きにわたり医学・医療の発展に貢献してきた功労者を顕彰する賞。

脳神経系の診療も伝統があり、また常に先進性を意識している分野です。24時間、脳神経外科と脳神経内科の両者が院内に常駐し、MRIとCTの緊急撮影が可能で、脳梗塞の緊急血栓溶解療法の体制確立をしています。脳神経内科と脳神経外科が共同運用する脳卒中センターでは、救急搬送されてくる脳卒中の患者さんを多く受け入れています。

当センターは24時間対応可能な脳卒中ケアユニット(SCU)に16床を有します(2020年10月時点)。特徴としては、脳神経内科や脳神経外科を中心とした多職種(複数診療科にわたる医師・看護師・技師などのスタッフ)がチームを組み、脳卒中急性期の患者さんに対し専門的な診療を行っていることが挙げられます。また、多職種が連携しチーム医療を実践していることで、治療後のリハビリテーションや転院調整なども円滑といえます。

診察の様子
診察の様子

当センターは、合併症をもつ妊婦さん(いわゆる、ハイリスク妊娠)などの受け入れを積極的に行っています。

当院の加藤(かとう) 紀子(のりこ)総合周産期母子医療センター長は、長年にわたり地域の周産期医療を支えるとともに、地域の周産期施設と協同して妊産婦さんの診療を行う“やごと周産期ネットワーク”の構築などに尽力してきました。

地域の周産期医療への長年の貢献が評価され、2018年9月、加藤センター長は平成30年度産科医療功労者厚生労働大臣表彰を受賞いたしました。

日本産婦人科医会が行う妊産婦死亡報告事業によると、2010年~2016年に集積した事例の解析結果として、妊産婦死亡の原因疾患の第2位は脳出血・脳梗塞(脳卒中)であると報告されています。脳卒中を合併した妊産婦さんには、産婦人科だけではなく、脳神経外科や脳神経内科など、複数の診療科の医師をはじめとした多職種で構成されるチームによって、より安全かつ高度な医療を提供する必要があります。

こういった患者さんを救うために、当院では2017年4月総合周産期母子医療センター長でもある加藤紀子医師の下、東海地区ではじめて周産期脳卒中センターを開設しました。

救急医療・周産期医療・チーム医療は日ごろから得意とする診療領域です。その強みを生かし、産婦人科のみならず他科と連携を図りながら、脳卒中を合併した妊産婦さんの治療に24時間365日貢献し続けています。

このように当院は、高度で複雑な、緊急を要する治療をこの地域で担う役割があると考えています。

2016年1月、当院の新たな歴史と伝統となる性暴力救援センター日赤なごや“なごみ”を開設しました。当センターは、24時間、医療を基本として精神科医、弁護士、警察など全ての対応ができるワンストップセンターであり、性暴力被害者を1人でも多く救済することが目的です。

性暴力被害は、潜在的な被害者が多く社会問題の1つといえます。当センターでは、そういった潜在的な被害者が相談しやすい環境を整えており、相談件数は開設以来増加しています。

この取り組みは病院の事業でありながら、外部の支援員や弁護士、行政、警察など多くの方に支えられており、病院と地域が一体化した画期的な事業であるといえます。

当院では、地域の先生方との医療連携を重視し、1990年から登録医制度を実施しています。2017年11月より、登録医の方々が当院へ患者さんをご紹介いただく際の予約手続きをネット上で済ませられるよう、インターネット事前診療予約システムのサービスを開始しました。シームレスな診療予約システムを構築していくことで、患者さんにもスムーズに診療をお受けいただくことができるのではないかと考えています。また、病診連携登録医の先生向けに一部の診療科で行っていた、診療部長への直通電話をほぼ全科に広げました。その多くは診療第一部長が対応にあたるよう設定されています。当院のような基幹病院と、地域の先生方とのコミュニケーションがより円滑となるように図っています。

先生

八事日赤病院のブランドイメージを確立させ、地域の皆さんの期待と信頼に応えていかなくてはならないと感じています。今一度、患者さんの立場に立った医療という基本に立ち返って、より地域に根差した病院となれるように、職員一同で努力を重ねていきます。

患者さんにとっては、どのような機能を持つ病院にかかればよいのか、ご自身の症状から判断することは難しいと思います。当院では、受診された方が適切な医療を受けられるよう、さまざまな面でサポートする体制を整えています。

患者さん一人ひとりと向き合い、「八事日赤病院を受診してよかった」と思っていただけるように、患者さんの心を動かすような医療の提供に努めてまいります。

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  • 名古屋第二赤十字病院 院長、名古屋大学 臨床教授

    佐藤 公治 先生

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